「仲介手数料はしっかりと支払いなさい!」
これは、お世話になった大阪の不動産会社社長の言葉です。
この会社は、自社では手数料をお客様からいただく仲介業はしておらず、分譲地を開発して新築一戸建てを建てる建売業や、収益物件として多くの不動産を購入しし、賃貸業を行い、適当なタイミングで物件を処分するということをされていました。
つまり、仕事の場面で、仲介手数料は支払う側にだけ立つという会社でした。
この社長に気に入られて、分譲マンションの30戸ほどの売却を任せていただきました。
これだけの数の物件を任せてもらうのですから、当然に仲介手数料の値引きを要求されるだろうと覚悟をしており、担当者と仲介手数料の額の話に及んだ時のことです。
「仲介手数料はしっかりと支払いなさい!そういった費用はケチるもんじゃない!」
そう言われたのです。
当時の私は、「ラッキー!」という程度にしか思っていませんでしたが、今になってこの社長の言葉の意味がよく判るようになりました。
それは、こういうことです。
最近では、仲介手数料を半額にするとか、物件によっては手数料無料なんてことをしている仲介業者がいます。
消費者としては嬉しいですよね。
例えば3000万円の不動産の規定の仲介手数料は、96万円と消費税、ざっと100万円ほどになります。
それを半額にしてもらえれば50万円の費用軽減、無料となれば100万円の費用軽減になるのです。
それはそれは大きな金額です。
もし、仲介手数料を半額にするとすれば、売上を維持するには倍の売上をしないといけません。
無料にすれば、どこからか収益を上げなければならないのです。
となると、値引きをした仲介業者は、どういう行動に出るか?
買主さんから仲介手数料がもらえないなら、売主さんから貰わないと経営が維持できない。
つまり、売主さんから仲介手数料が出る物件しか、手数料を値引いた買主さんには紹介できないし、しないのです。
買主さんにとって、より良いと思われる物件があったとしても、売主さんから手数料が出ない物件は紹介せず、見劣りがする物件でも手数料が出る物件だけを紹介することになってしまいます。
売主さんの場合でも同様です。
売主さんから手数料をきちんといただけないと、買主さんからいただくほかありません。
となると、その売主さんの売却情報は、自社に直接問い合わせをされたお客さんだけにしか紹介しなくなってしまうのです。(他の業者のお客さんに紹介すると、その業者に買主さんの手数料が支払われ、自社では売主さんからの分しか入らないからなのです)
最近では、売主さんにも買主さんにも手数料を値引きしないにも係わらず、自社の利益を追求するあまり、自社で売却依頼を受けた物件を自社の買主さんにしか紹介しないという業者(特に大手仲介業者)が目立ちます。(物件情報を隠して他の仲介業者に流さない、つまり広く買主を探すという売主さんの利益を無視する行為)
ある元大手仲介業者の営業マンの話です。
売主さんから売却依頼を受けていた物件に、他社のお客さんから売り出し価格と同じ金額(値段交渉無し)で購入申し込みが入り、ほぼ同時に、自社のお客さんから400万円の値引き交渉が入ったときに、会社の方針で、他業者のお客様には適当な理由をつけて断り、400万円を売主さんに値引きさせて、自社の買主さんと契約をさせて、心が痛んだ、ということです。
正規の手数料を支払っても、お客さんの利益よりも会社の利益を優先するような会社があるのですから、手数料の値引きをすれば、残念ながら、そういう方向へ向かってしまうのも頷けてしまうのです。
表面的には、手数料の値引きや無料ということで、その会社を選び、得をしたと思っていても、知らないところで、大きく損をしているのかもしれませんよ?
手数料をしっかりと支払い、しっかりと(お客さんのことを優先した)仕事をしてもらう、そうすることが、結局は得をする(損をしない)ということに繋がるように思います。
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