インドにおける改訂特許審査基準の解説(第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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インドにおける改訂特許審査基準の解説(第1回)

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インドにおける改訂特許審査基準の解説(第1回)

~コンピュータソフトウェア・ビジネス関連発明に対する改訂審査基準~

河野特許事務所 2011年5月24日 執筆者:弁理士  河野 英仁

1.概要

 インド特許庁[1]は2011年3月22日改訂特許審査基準[2]を公表した。本改訂特許審査基準策定に先立ち、インド特許庁は第3者から広く意見を募集するために、2009年及び2010年の2度にわたり審査基準(案)を公表した。本改訂特許審査基準は、各国から寄せられた意見を元に修正を加えて完成したものである。

 

 本稿では、改訂特許審査基準の内、コンピュータソフトウェア・ビジネス関連発明の審査基準に焦点を絞って解説する。

 

2.保護適格性に関する規定

 インド特許法第3条(k)は以下のとおり規定している。

 

第3条

次に掲げるものは,本法の趣旨に該当する発明とはしない。

・・・(略)・・・

(k) 数学的若しくはビジネス方法,又はコンピュータ・プログラムそれ自体若しくはアルゴリズム[3]

 

 インド特許法は、欧州と同様に発明の定義規定が存在せず、保護適格性を有さない発明を列挙する規定となっている。この点、発明の定義規定を設けている日本国特許法[4]と相違する。

 

 

3.改訂特許審査基準の内容

 改訂特許審査基準の08.03.05.10章に保護適格性に関する規定(a~g)が存在する。

 

(1)原則(規定a)

 インド特許法第3条の規定により、数学的・ビジネス方法、若しくは、コンピュータプログラムそれ自体、または、アルゴリズムは発明ではなく特許性がない。

 

(2)審査の手順

審査官は以下に述べる規定b-gの順に審査を行う。概要は参考図1に示すとおりである。

参考図1 ソフトウェア・ビジネス関連発明の審査手順を示すフローチャート

 

   以下、各規定の詳細を説明する。

 

(i)規定b 「数学的方法」は保護適格性を有さない。

 「数学的方法」は精神的技能(mental skill)の行為であると考えられている。 計算法、方程式の定式化、平方根、立方根の発見など直接的に数学的方法にかかわる他のすべての方法が、保護適格性を有さない。

 

 コンピュータ技術の進化に伴い、これら数学的方法は、異なるアプリケーションのためのアルゴリズムとコンピュータ・プログラムを書くために使用される。

 

 実務においては、クレームは、「数学的方法」そのものというよりも、むしろ技術開発に関するものとして、カモフラージュされることが多い。クレームがいかなる形態であったとしても、実質上「数学的方法」に関連する場合、保護適格性を有さないとみなされる

 

(ii)規定c 「ビジネス方法」はいかなる形態でも特許されない

 いかなる形態で記載されていたとしても、「ビジネス方法」は保護適格性を有さない。IT技術の進化に伴い、ビジネス活動はe-コマース、B to B、B to Cビジネスを通じて急激に発展してきた。

 

 「ビジネス方法」に関するクレームは、直接ビジネス方法として記載するのではなく、インターネット、ネットワーク、衛星、通信等の既に利用可能な技術特徴を利用して記載される。

 

 しかしながら、特許法第3条(k)にいうビジネス方法の排除は、全てのビジネス方法について適用されるため、クレームに技術的な記載があったとしても、実質的にビジネス方法に関連するクレームは、保護適格性を有さない

 

(iii)規定d 「一連の規則(rule)・手続(procedure)等に係るアルゴリズム」は保護適格性を有さない

 一連の規則・手続若しくは一連の処置、または、定義された指令の有限のリストとして表現された方法を含むいかなる形態でのアルゴリズムも、課題を解決するか否かにかかわらず、また、論理的、算数またはコンピュータによる方法、再帰的なものを使用するかにかかわらず、保護適格性を有さない。

 

(iv)規定e 「コンピュータプログラムそれ自体」は保護適格性を有さない

 コンピュータ・プログラムが法定主題である特許出願は、まず上述した規定b, c, dの観点から審査される。出願の法定主題がこれら規定b, c, dに属さない場合、当該法定主題は、それがコンピュータ・プログラムそれ自体であるか否かの観点により審査される。

 

(v)規定f 保護適格性を有する法定主題がクレームの本質的要素を構成していない場合、保護適格性を有さない。

 クレームされた法定主題が、単なるコンピュータ・プログラムにすぎない場合、コンピュータ・プログラムそれ自体とみなされ、特許性が認められない。

 

 また「コンピュータ・プログラム製品」と記載されたクレームは、コンピュータでの読み取りが可能な媒体に記憶されたコンピュータ・プログラムそれ自体であり、それ自体は特許されない。

 

 これらのクレームがコンピュータ・プログラムではない法定主題(例えば装置)を含んでいる場合、そのような法定主題が明細書に十分開示されているか、及び、法定主題が発明の本質的要素を構成しているか否かを判断する。

 

(vi)規定g 他の特許要件の審査

 上述のa-fの規定により保護適格性を否定できない場合、新規性及び進歩性等の他の特許要件を審査する。

 


[1] インド特許庁HP

http://www.ipindia.nic.in/

[2] 改訂特許審査基準(Manual of Patent Office Practice and Procedure)は以下のURLからダウンロードできる。

http://www.ipindia.nic.in/ipr/patent/manual/main%20link.htm

[3] インド特許法第3条(k)

The following are not inventions within the meaning of this Act, -

・・・(略)・・・

A mathematical or business method or a computer programme per se or algorithms are not patentable.

[4] 日本国特許法では第2条第1項に発明の定義規定が存在する。

この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

(第2回へ続く)

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