インド特許法の基礎(第5回)(3):特許出願 - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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インド特許法の基礎(第5回)(3):特許出願

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インド特許法の基礎(第5回)(3)

~特許出願~

2013年10月8日

河野特許事務所 

弁理士 安田 恵

 

(5)完全明細書及び仮明細書

 インドの特許出願において明細書に求められる記載要件自体は、実体的に日本特許出願の記載要件と大きく異なる所は無く、若干の形式的相違があるのみである。以下、条文が求める要件を確認しつつ、明細書の記載要件を説明する。

 

<完全明細書及び仮明細書に共通して求められる記載事項>

 明細書に求められる記載要件の概要を説明する。明細書には発明を記載し、発明の主題を十分に表した発明の名称を頭書しなければならない(第10条(1))。明細書には図面を添付することができる(第10条(2))。図面は規則15(4)~(7)に従って作成しなければならない。仮明細書にはクレームを記載する必要は無く、発明の内容が開示されていれば足りる。ただし、後に提出する完全明細書に含まれるクレームと、仮明細書に開示されている事項との対応関係が明確になるよう、クレームの発明特定事項に該当する内容は少なくとも仮明細書に記載する必要がある。

 

<完全明細書に求められる記載事項>

 完全明細書には、発明,作用又は用途及びその実施方法を十分かつ詳細に記載しなければならない(第10条(4)(a))。言い換えると,発明及び実施方法を十分かつ明瞭に記載すること,すなわち明細書の記載が、当業者が発明を実施することが可能な程度に十分であることが必要である(第64条(h))。また、完全明細書には、発明を実施する最善の方法を開示しなければならない(第10条(4)(b))。言い換えると,特許出願人が知っており,かつ保護を請求することができた最善の発明の実施方法を開示することが必要である(第64条(h))。そして、完全明細書は、保護を請求する発明の範囲を明確にするクレームをもって完結しなければならない(第10条(4)(c))。また、完全明細書には要約を添付しなければならない(第10条(4)(d))。要約は規則13(7)に従って記載する。

 

 完全明細書の具体的な記載項目は以下の通りである(様式2)。

・項目1:発明の名称

・項目2:出願人の名称,国籍,住所

・項目3:詳細な説明の前文(完全明細書と仮明細書の種別を示す)。

・項目4:詳細な説明

・項目5:クレーム

・項目6:日付及び署名

・項目7:発明の要約

 特に詳細な説明(項目4)には、発明の技術分野及び用途、先行技術及び解決しようとする課題、発明の目的、発明の概要、発明の詳細な説明を記載する(様式2)。

 クレームの一般的記載要件としては、①クレームは明確かつ完結であること(第10条(5),第64条(i))、②クレームは明細書に開示された事項を適正に基礎としていること(第10条(5),第64条(i))、③クレームは単一の発明概念を構成するように連結した一群の発明に係るものであること(第10条(5))が求められる。

 

(6)発明者である旨の宣言書

 特許法(第10条(6))が求める「発明者である旨の宣言書」の理解を容易にするために、具体的な記載内容の見本を以下に示す。完全明細書に開示された発明の真の発明者である旨の宣言書の内容は定型化されているため、特段の難点は無く、書誌的事項を誤り無く、記入して特許庁に提出すれば足りる。また、この宣言書には署名が必要であるが、発明者又は出願人自身の署名は不要であり、インドの現地代理人の署名で足りる(第128条)。

 

FORM 5

THE PATENTS ACT, 1970

[39 of 1970]

&

THE PATENTS RULES, 2003

DECLARATION AS TO INVENTORSHIP

[See Section 10(6) and Rule 13 (6) ]

 

We, 出願人の名称、国籍及び住所

 

Hereby declare that the true and first inventor(s) of the invention disclosed in the complete specification filed in pursuance of our application numbered…………dated………is/are:

 

発明者の名前、国籍、住所

We the applicant(s) in the convention country hereby declare that our right to apply for a patent in India is by way of assignment from the true and first inventor(s).

 

 

 

(7)特許出願の効果及び関連手続

<完全明細書を添付した特許出願>

 完全明細書を添付した特許出願を行った場合、完全明細書の提出日が優先日としてクレームに付与される(第11条)。特許出願の内容は、優先日から18ヶ月経過後、公開される(規則24)。また審査請求(第11B条)によって、特許出願の実体的審査の対象となる(第12条)。

 

<仮明細書を添付した特許出願>

 仮明細書を添付した特許出願を行った場合、特許出願の日から12ヶ月以内に完全明細書を提出しなければならない(第9条(1))。12ヶ月の期間が経過した場合、当該特許出願は放棄されたものとみなされる(第9条(1))。また、仮明細書を添付した2つ以上の特許出願があり、各特許出願の発明が単一の発明を構成している場合、各特許出願の発明を包含する完全明細書を添付した一の特許出願を行うこともできる(第9条(2))。

 

 完全明細書に記載の発明が、仮明細書中に開示された事項を適正に基礎とする場合、仮明細書の提出日が優先日としてクレームに付与される(第11条(2))。完全明細書に記載の発明が、仮明細書中に開示された事項を適正に基礎としていない場合、完全明細書の提出日が優先日としてクレームに付与される(第11条(6))。その他の効果は、完全明細書を添付した特許出願と同様である。

 

3.その他の出願

 条約出願、PCT国内段階出願については、出願権の証明書類、優先権書類等の提出書類に関して通常の特許出願と異なる点がある。この点については次回、説明する。

 

以上

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