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河野 英仁
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中国特許判例紹介:中国における均等論の解釈(第2回)

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中国特許判例紹介:中国における均等論の解釈(第2回)

~均等論の解釈と環境技術に対する差止の拒否~

河野特許事務所 2011年5月18日 執筆者:弁理士 河野 英仁

        深セン市斯瑞曼精細化工有限公司

                               一審原告、二審被上訴人

                    v.

        深セン市康泰藍水処理設備有限公司

         深セン市平湖自来水有限公司

                                  一審被告、二審上訴人

3.高級人民法院での争点

争点1:均等侵害が成立するか否か?

 中国での均等侵害成立要件は、司法解釈[2001]第21号第17条において、以下のとおり規定されている。

 

司法解釈[2001]第21号第17条

 専利法第56条第1項にいう「発明特許権又は実用新型特許権の技術的範囲は、その権利請求の内容を基準とし、説明書及び図面は権利請求の解釈に使うことができる」とは、権利の技術的範囲は、権利請求書の中に明記された必須技術特徴により確定される範囲を基準とすることを指し、それには当該必須技術特徴と均等の特徴により確定される範囲も含むものとする。

 均等な特徴とは、記載された技術的特徴と基本的に相同する手段により、基本的に相同する機能を実現し、基本的に相同する効果をもたらし、且つ当該領域の普通の技術者が創造的な労働を経なくても連想できる特徴を指す。

 

 イ号製品は、請求項1に記載の「気液分離器」12を文言上具備しない。かかる状況下、イ号製品は、請求項1と均等といえるか否かが問題となった。

 

争点2:被告Yは善意の使用者であり損害賠償責任を負わないか?

 専利法第70条は善意の実施者を保護すべく以下のとおり規定している。

 

 専利法第70条

 特許権者の許諾を得ずに製造、販売された特許権侵害製品であることを知らずに、それを生産経営の目的で使用し、販売の申し出又は販売した場合、その製品の合法的な由来を証明することができたときは、賠償責任を負わない。

 

 すなわち、被告Yが被告Xから購入したイ号製品が侵害品であることを知らなかったことを立証できた場合、損害賠償責任を免れ得る。訴訟実務上、この善意使用の抗弁は被告から頻繁に主張される。被告Yは公益保護の観点から、イ号製品の継続使用を認められており、損害賠償責任を負わないとすれば、何ら法的責任を負わないこととなる。被告Yが善意の使用者であるか否かが争点となった。

 

 

4.高級人民法院の判断

争点1:被告Xのイ号製品は均等論上侵害する。

 高級人民法院は均等侵害成立するとした中級人民法院の判断を支持した。しかしながら、両法院が均等侵害と認定したアプローチは全く異なる。以下、両法院が均等侵害であると判断したアプローチをそれぞれ解説する。

 

(1)イ号製品と請求項1に係る発明との対比

 争点となったのは、気液分離器12の存否である。比較を容易にすべく参考図2に請求項1の要部、参考図3にイ号製品の要部を示す。

参考図2 請求項1の要部      参考図3 イ号製品要部

 

 請求項1に係る発明が気液分離器12を備える点で、これを備えないイ号製品と相違する。

 

 請求項1に係る発明のベンチュリ管装入器8は気液分離器12に連接されており、ベンチュリ管装入器8から気体と液体の混合物が、気液分離器12に入る。気液分離器12は一般に重力または遠心力を利用し、気体と液体とを分離する器械である。

 

 気液分離器12から出るパイプラインは2路あり、1路は気体パイプラインであり上に向かい排気に用いられ、他の1路は液体パイプラインであり下に向かい反応器10に連接される。

 

 一方、イ号製品は、ベンチュリ管装入器8の後段に3通パイプラインを備える。3通パイプラインは参考図3の白抜長方形で示す水平パイプラインと、灰色長方形で示す第1細管と、黒色逆L字形状で示す第2細管とを備える。第1細管は下向きに伸び反応器10に連接する。第2細管は、一旦上に向かった後、再び下に向かい反応器10に連接する。被告Xによれば、第2細管は第1細管が詰まった場合のバックアップ路として機能すると述べた。

 

(2)中級人民法院の判断

 中級人民法院は、気液分離器12と、3通パイプラインは均等であると判断した。イ号製品の構造、連接関係及び化学反応の原理によれば、気体の密度が比較的小さい場合、気体は自然に上昇し、第2細管に入る。一方、液体密度が相対的に比較的大きければ、液体は第1細管に沿って下向きに反応器へ流れ込む。

 

 そうすると、気液分離のプロセスはすでに、3通パイプラインにおいて初歩の完成段階にあるといわなければならない。中級人民法院は、当該「3道パイプライン」は請求項1に係る発明の「気液分離器12」に対し、機能・作用面で相違するところはないと述べ、均等侵害が成立すると結論づけた。

 

(3)高級人民法院の判断

 高級人民法院も均等侵害を認めたが、そのアプローチは全く異なる。高級人民法院は3通パイプラインではなく、3通パイプラインの後に気液混合物が分離される反応器10に着目した。

 

 イ号製品と特許発明とを比較すれば、共に気液分離法を通じて、反応後の気液混合物中から、高純度の二酸化塩素を分離し、飲用水に対する消毒及び水質基準の達成を確保することを目的としている。

 

 イ号製品は原料を“ベンチュリ管装入器8”中で反応させた後、気液混合物を反応器10まで送り、反応器10内で、十分に反応していない原料に対し継続して反応を行い、二酸化塩素気体と残液とを分離し、二酸化塩素気体を得る。これに対し、請求項1に係る発明も原料をベンチュリ管装入器8中で反応させた後、気液混合物を気液分離器12にて分離し、二酸化塩素気体を得ることができる。

 

 確かに、イ号製品は単独の気液分離器12を設置することにより気液混合物の分離を行っていない。しかしながら、イ号製品の構造、連接関係及び工程原理に基づけば、イ号製品が反応器10中において実現する気液分離と、請求項1の単独の気液分離器12により分離を行う点とは、システムにおいて基本的に同一の手段であり、基本的に同一の機能を実現し、基本的に同様の効果を達成し、かつ、当業者が創造性労働なしに、特徴を連想することができる。

 

 以上のことから、高級人民法院は気液分離器12を具備しないイ号製品は、請求項1を均等論上侵害すると結論づけた。

(第3回へ続く)

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