介護サービスにおける是正措置と予防措置 - 経営戦略・事業ビジョン - 専門家プロファイル

福岡 浩
有限会社業務改善創研 代表取締役 業務改善コンサルタント
神奈川県
経営コンサルタント

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寺崎 芳紀
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閲覧数順 2024年04月19日更新

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介護サービスにおける是正措置と予防措置

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介護現場の方々からよく聞かれるのは、「記録や帳票類が多く事務仕事に忙殺されて、介護サービス利用者へのサービスが十分に提供できない」という声です。そもそも、自ら提供した介護サービスの状況や利用者の状態などをどのように可視化し、提供したサービスを形あるものに近づけるかという発想はないのでしょうか。

要介護高齢者を顧客とする介護サービスは、その提供時にいつも同じ内容のサービスが正しく実施されるとは限りません。勿論、常に計画通りのサービスを正しく提供できることを目指していても利用者の状態や都合などで変わることもあります。しかも管理者が気付かないところで、正しいサービス提供を逸脱することも起こり得るし、計画とは違ったサービスに変形する恐れもあります。

例えて言えば、ホテルのコーヒーショップで、お客がアメリカンコーヒーを注文したのに、ボーイはブレンドコーヒーを提供してしまったとすれば、アメリカンコーヒーとブレンドコーヒーの違いに気付くことは容易です。目で見てわかるか飲んでみればわかります。しかし、介護サービスはどうでしょうか。利用者が高齢者であることや認知症の方だとすれば、計画通りのサービスを提供されなくても分かりません。サービスを提供する側のモラルとしても介護事業者がその提供されるサービスごとに記録をするのは当然だと考えられます。また、定期的に提供しているサービスを評価することも必要で、介護保険制度で求めています。

これらのサービス提供の記録やその評価をしていなければ、顧客が望んでいないサービスが提供されたり、計画にないサービスが提供されても分かりません。その場合にその提供されたサービスは「不適合」となります。「適合」しているサービスとは、利用者と事業者の契約によって約束され、介護計画書によって合意されたサービス内容を言います。仮にサービス内容を変更するならば、利用者やその家族への説明と同意を得たことが記録として残されなければなりません。

不適合なサービスが提供されたことが判明した場合には、直ちにその原因を究明し再発防止のための「是正措置」を講じるということが、理屈としては多くの人々がわかっています。しかし、原因究明が不十分のために「是正措置」が徹底できません。例えば、昼食は麺類が食べたいと思っている訪問介護サービスの利用者に、残りご飯を使ったチャーハンを作ったヘルパーさんがいました。利用者はうどんが食べたかったので、チャーハンを少し食べて残しました。ヘルパーは残りご飯がもったいないと思い、気を利かせてチャーハンを作ってしまった。こんなことは介護現場では日常的によく聞かれる話です。この場合の原因がいくつか考えられますが、ヘルパーが利用者の麺類好きを知らなかったとか、チャーハンを作る前に利用者に十分に説明し確認しなかったか、前日の夕飯にチャーハンを食べていたことを知らなかったか、等々。

このヘルパーが事前にサービス提供指示書などを十分に読んで理解していなかったとすれば、このヘルパーを管理、指導すべきサービス提供責任者が訪問介護計画書とともにサービス提供指示書をよく説明する必要があります。これがもっとも簡単な「是正措置」となります。このような対応を他のヘルパーにも周知し同様の問題が起きないようにすることが「予防措置」となるのですが、意外にも徹底している訪問介護事業者は少ないようです。では、「是正措置」や「予防措置」が十分に実施されていない原因は何かと考えると、ヘルパーに必要な研修が定期的に行われていないことが挙げられます。研修をやりましたといっても年に1回とか2回程度ではやったという事実、実績のみを意味しているのであって、研修による効果やヘルパーのスキルアップが確認できるような結果は望めません。そもそも、研修の効果はせいぜい長くて3ヶ月くらいではないかと考えられます。

もう一つ、「是正措置」や「予防措置」が実施できない理由には、経営者がクレームや苦情、事故などを穏便に済ませたいという気持ちが強いからではないかと考えられます。「臭いもには蓋をする」式の考え方でクレームや苦情、事故に対処していれば、根本的な解決も望めないし、是正し予防する仕組みはできません。いわゆる「モグラたたき」状態が続くだけです。クレームや苦情、事故、間違ったサービスの提供などが完全になくなることはないでしょうが、少なくする努力とその仕組みづくりを目指さない限り、利用者満足も実現しないのではないでしょうか。

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