米国特許判例紹介:米国における共同侵害成立要件(第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:米国における共同侵害成立要件(第2回)

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米国特許判例紹介:米国における共同侵害成立要件(第2回)

~成立要件は厳格化へ~

河野特許事務所 2011年4月8日 執筆者:弁理士 河野 英仁

   Akamai Technologies, Inc., et al.,
                     Plaintiff Appellant,
             v.
      Limelight Networks, Inc.,
                 Defendant-Cross Appellant.

2.背景

(1)特許発明の内容

 Akamai(以下、原告という)はU.S. Patent No. 6,108,703 (以下、703特許という)、U.S. Patent No. 7,103,645 (以下、645特許という)及びU.S. Patent No. 6,553,413 (以下、413特許という)の3つの特許を所有している。

 

 情報は一般的にWebサイトからインターネットを介して送信される。WebサイトはHTML[1]を用いて記述された文書の集合である。ユーザのブラウザはURLにより特定されるWebページの取得を要求し、読み込んだWebページを表示する。

 

 Webページを読み込む処理は、状況によっては速度が低下、または、信頼性が低下する場合がある。例えば、単一のコンテンツサーバが同一Webページに対し多くの同時的要求を受信した場合、インターネットの輻輳問題が発生する。

 

 その他、ユーザのコンピュータがアクセスするコンテンツサーバから離れている場合、配信速度の低下を招くことになる。従来、コンテンツの遅延問題を解決する手法として、ミラーリングが知られている。これは複数のサーバコンピュータに同一のWebサイトを分散配置しておくものである。

 

 しかしながら、ミラーリングは、複数のホスティング設備に伴い必要とされるコスト、及び、ミラーサイトを同期するのに要する追加の諸経費が発生するという問題があった。また、同期が許可されるWebサイトのコピー数制限を含む拡張性問題もあった。

 

 原告は、コンテンツを配信する際の上述した問題に対応すべく、多量のWebコンテンツを配信することが可能であり、また輻輳問題を解決し得る技術に関する発明を行い、3つの特許を取得した。これら3つは明細書を同じくし、コンテンツプロバイダに、Webコンテンツの個々の部分の記憶及び配信を外注することを可能とするシステムを開示している。

 

参考図1 703特許の図2

 

 参考図1は703特許の図2である。Webページは参考図1に示すようにHTMLで記述された基本文書28と、画像、動画、音楽及びリンク等の埋め込みオブジェクト30, 30, 30・・・により構成される。3つの特許はコンテンツプロバイダのコンピュータからWebサイトの基本文書28を配信する。その一方で、Webサイトの各埋め込みオブジェクト30は、埋め込みオブジェクト30毎にContent Delivery Network[2](以下、CDNという)上に記憶し、配信するものである。

 

 すなわち、動画等の埋め込みオブジェクト30は基本文書28に比較してファイルサイズが大きくネットワークに大きな負荷をかけることから、予め戦略的に様々な地域のコンピュータに埋め込みオブジェクト30を分散配置しておく。

 

参考図2 703特許の図3

 

 参考図2は703特許の図3である。埋め込みオブジェクト30はCDN35のホスティングサーバ36に記憶される。そして、ユーザコンピュータの位置に応じた最適な配布ポイントを指示することで、ホスティングサーバ36から大容量の埋め込みオブジェクト30の配信を最適化せんとするものである。

 

 ミラーリングにより、全Webサイトコンテンツの同一のコピーを複数個所に記憶する代わりに、本発明では埋め込みオブジェクト30のみをCDN35に複製し、CDN35から埋め込みオブジェクト30を提供する。このために、埋め込みオブジェクト30のURLを変更する必要がある。CDNにおける埋め込みオブジェクト30に対するリンク(URL)の変更処理を「タグ付け(tagging)」という。コンテンツプロバイダが予め、埋め込みオブジェクト30にタグ付けを行うことで、CDN35のホスティングサーバ36から埋め込みオブジェクトが提供される。

 


[1] HTML(HyperText Markup LanguageWeb):ページを記述するためのマークアップ言語。文書の論理構造や表示の仕方などを記述することができる。W3Cによって標準化が行われており、大半のWebブラウザは標準でHTML文書の解釈・表示が行える。IT用語辞典(http://e-words.jp/)

[2] CDN:ファイルサイズの大きいデジタルコンテンツをネットワーク経由で配信するために最適化されたネットワークのこと。CDNを構築・運用し、企業などに有料で利用させるサービスをコンテンツデリバリサービス(CDS)という。狭義にはデジタルコンテンツの大量配信に対応したネットワークを指し、広義にはファイルの配布ポイント管理から課金・認証システムまで、デジタルコンテンツの配布や販売に必要な機能をひととおり揃えたシステムを指す。音楽や動画といったデジタルコンテンツは、従来インターネット上で流通してきたHTMLファイルなどと比べてサイズが大きく、ネットワーク越しで配信を行うとネットワークに多大な負荷がかかってしまう。このとき、ネットワーク上のさまざまな場所にデジタルコンテンツの配布ポイントを用意し、ユーザのネットワーク位置に応じた最適な配布ポイントを指示することで、大容量のコンテンツをスムーズにユーザに配信できるようになる。前掲IT用語辞典

(第3回へ続く)

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