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河野 英仁
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米国仮出願の拡大先願の地位(第5回)

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米国仮出願の拡大先願の地位(第5回)
~Secret Prior Art~

In re Giacomini, et al.

 河野特許事務所 2010年10月22日 執筆者:弁理士  河野 英仁

(4) 非自明性判断
 さらに、米国においては非自明性判断時に拡大先願地位を有する先願が一定条件下で利用される点に注意すべきである。すなわち、米国特許法第103条(c)*11の規定により、102条(e)にいう先行技術は同一発明者・譲渡人でない限り非自明性を判断する上で考慮される。

 国名 拡大先願の進歩性判断
   日本  なし
   米国  あり(ただし、同一発明者・同一譲渡人の場合、除外)
   欧州  なし
   中国  なし

これに対し、日本(日本国特許法第29条第2項)、欧州(EPC第56条*12)及び中国(専利法第22条第3項*13)においては、拡大先願地位を有する先願はあくまで新規性の判断に利用されるだけであり、進歩性(創造性)の判断には利用されない。すなわち、欧州では第54条(3)にいう拡大先願地位を有する先願を、進歩性の判断対象から排除している。また中国においても、創造性の判断対象とする先行技術はあくまで専利法第22条第5項にいう「現有技術(公知・公用技術)」に限られ、拡大先願地位を有する先願(中国では抵触出願という)は創造性判断に用いられることはない。

判決 2010年7月7日

                                                         以上

【関連事項】
判決の全文は最高裁判所のホームページから閲覧することができる[PDFファイル]。
http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/09-1400.pdf

【注釈】
*1 米国特許法第102条(e)
[A] person shall be entitled to a patent unless . . . the invention was described in . . . (2) a patent granted on an application for patent by another filed in the United States before the invention by the applicant for patent . . . .(下線は筆者において付した)
*2 737出願のクレーム1は以下のとおり。
1. A method comprising:
populating a cache with a resource only when at least i requests for said resource have been received;
wherein i is an integer and is at least occasionally greater than one.
*3 仮出願とはクレームを作成することなくUSPTOへ提出する特許出願をいう(米国特許法第119条(e)(1))。
 仮出願の日から1年以内にクレームを作成した上でUSPTOへ本出願する必要がある。出願日を確保するためにとりあえず仮出願しておき、1年以内に内容を整えた上で本出願を行うことが多い。ただし、仮出願明細書は米国特許法第112条第1パラグラフに規定する記載要件を具備する必要がある。
米国特許法第112条パラグラフ1
第112 条 明細書
明細書は,その発明の属する技術分野又はその発明と非常に近い関係にある技術分野において知識を有する者がその発明を製造し,使用することができるような完全,明瞭,簡潔かつ正確な用語によって,発明並びにその発明を製造し,使用する手法及び方法を記載した説明を含んでいなければならず,また,発明者が考える発明実施のベストモードを記載していなければならない。
*4 Ex parte Giacomini, No. 2009-0139 (B.P.A.I. Apr. 15, 2009)
*5 In re Hilmer, 359 F.2d 859 (CCPA 1966)

                                    (第6回へ続く)

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