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インド特許法の基礎(第1回) (2)
~特許付与までの基本的な手続きの流れと期限について~
河野特許事務所 2013年6月20日 執筆者:弁理士 安田 恵
5.外国出願に関する情報の通知(第8条)
出願人は,外国出願(インド以外の国にされた特許出願)の明細事項を記載した陳述書と,インドにおける特許付与日まで外国出願の更新された明細事項を書面で随時長官に通知し続ける旨の誓約書を提出しなければならない(第8条(1))。図3は第8条及び規則12に規定された期間を示した流れ図である。
(1)まず,出願人はインド国内段階出願の日から6ヶ月以内(規則12(1A))に陳述書及び誓約書を長官に提出しなければならない(第8条(1))。陳述書は様式3により作成する(規則12(1))。外国出願の明細事項としては,出願国,出願日,出願番号,出願の状態,公開日,登録日等の情報が挙げられる(様式3)。多くの場合,インド国内段階出願と同時に陳述書及び誓約書が提出されている。
(2)またインド国内段階出願後に他の外国へ国内移行を行った場合,その外国への出願後6ヶ月以内に,外国出願の明細事項を長官に通知する必要がある(第8条(1),規則12(2),様式3)。
(3)さらに,実務上,審査報告書において外国出願情報の詳細,例えば拒絶理由通知書等の提出が求められる(第8条(2))。出願人は審査報告書の通知があった日から6ヶ月以内に外国出願情報の詳細及びその翻訳文を提出しなければならない(規則12(3))。
(4)図3に示す陳述書等の提出期限は規則に定められたものを形式的に表したものであり,実務上は上記期間以外にも適時,外国出願の情報を長官に通知する必要がある(第8条(1))。
出願人は誓約書においてインドにおける特許付与日まで(”up to the date of grant of patent in India”),外国出願の明細事項を書面で随時(”from time to time”)長官に通知する旨を誓約している(第8条(1))。誓約違反は異議申立理由(第25条(1)(h)),取消理由(第64条(1)(m))であり,侵害訴訟における無効抗弁理由(第107条(1))でもある。審査過程で第8条違反の瑕疵を包含したまま特許が登録になった場合,後にその瑕疵を治癒させることはできない。侵害訴訟の場では当然のことながら第8条違反の有無が精査され,特許権に対する攻撃の対象になる。
論理的には,外国出願の審査が進行する都度,全ての情報を随時長官に通知すれば第8条(1)の誓約を遵守したことになる。しかしながら,全ての情報を特許付与時まで随時通知するとなると,出願人の事務手続き負担が過大になり,実務上は現実的では無い。第8条の要請に合致し,かつ事務負担を抑えた運用が望まれる。
次回は,8条(1),(2)の実務的な運用について説明する。
以上
プロフィール
弁理士 安田 恵 (河野特許事務所)
2000年 大阪市立大学理学部物理学科卒業
2003年 京都大学大学院理学研究科物理学専攻卒業
2003年 河野特許事務所入所
2006年 弁理士登録
2009年 特定侵害訴訟代理人登録
2009年~ 日本弁理士会特許委員会委員
2011年 日本弁理士会特許委員会副委員長
2012年~ 日本商標協会会員
2013年~ インド現地特許事務所勤務・研修
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