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米国仮出願の拡大先願の地位 (第4回)
~Secret Prior Art~
In re Giacomini, et al.,
河野特許事務所 2010年10月19日 執筆者:弁理士 河野 英仁
5.結論
CAFCは、Tran仮出願日が後願排除効発生日であり、新規性なしと判断した審判部の決定を支持する判決をなした。
6.コメント
米国特許法第112条(e)の後願排除効発生日は原出願の種別によって相違する。以下に簡単に後願排除効発生日をまとめておく。
(2)後願排除効発生日
仮出願ではクレームを記載する必要がなく、また出願を急ぐ余り明細書の完成度が低くなりがちであり、米国特許法第112条パラグラフ1に規定する記載要件を具備していない可能性が高い。本事件において原告はTran仮出願が米国特許法第112条パラグラフ1に規定する記載要件を具備しているか否か争わなかった。この点争っていれば結論が変わっていた可能性がある。
本事件では、仮出願日が後願排除効発生日となる点明確化された。ただし、仮出願が有効と認められるためには、明細書が、米国特許法第112条に規定する記載要件を具備している必要がある。
(1)米国特許法第112条パラグラフ1との関係
原出願種別
後願排除効発生日
米国仮出願
米国仮出願日
米国外第1国出願
米国国内出願日
英語国際特許出願
国際出願日
英語以外の国際特許出願
なし
英語以外の国際特許出願に基づくバイパス継続出願
継続出願の出願日
(3)同一発明者・出願人の除外規定
日本国特許法第29条の2も拡大先願の地位について規定しているが、先願が同一発明者である場合及び出願人が同一である場合、適用が除外される(同条括弧書き及び但し書き)。
国名 | 拡大先願地位の適用除外 |
日本 | 同一発明者・同一出願人 |
米国 | なし |
欧州 | なし |
中国 | なし |
この点、諸外国には適用除外規定がない点注意すべきである。米国(米国特許法第102条(e))、欧州(EPC54条(3)*9)及び中国(専利法第22条第2項*10)においては同一発明者・出願人(譲渡人)であっても、新規性なしと判断される。
(第5回へ続く)
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