- 中沢 努
- パンセ・ソバージュ・アンド・カンパニー 代表
- 東京都
- コンサルタント・研修講師・講演講師
対象:人材育成
目の前に食べ過ぎで太ってしまった主婦がいるとする。
「あぁ、買った洋服が全部駄目になっちゃった。これなんか、何十万円もしたのよ。どうしよう・・・」と嘆き、ブーブー文句を言っていたとする。
これを見たあなたはどう思うだろうか?
「自分が食べすぎたんだから仕方ない」と思うだろう。
もしこの人が「あなたのせいよ。あんな美味しいレストランへ毎日連れて行かれたら、そりゃあ食べてしまうじゃないの」と自分の夫をなじったとしたら、あなたはどう思うだろうか?
「そうだとしても、食べ過ぎたのはあなただ。旦那さんを責めるのはお門違いだ」と思うだろう。
ましてやこの人が「美味しい料理を作ったあなたのせいよ」と料理人を責め立てたら、あなたはどう思うだろうか?
「勘違いも甚だしい。大丈夫か、この人?」と思うだろう。
必要以上のカロリーを摂取したり、生涯で必要な総栄養量を前倒しで摂取したら、そりゃあ人間は肥える。
その意味において、この主婦の肥満は自業自得である。他人に文句を言うのは筋違いである。
(もちろん、主婦を「亭主」に、洋服を「スーツ」に、と読み替えてもいい)
こういう人を見たら、呆れることはあっても賞賛することはないだろう。
でもこれを読んでいるあなたも、同じような「賞賛できない、呆れるようなこと」をしてしまっているかもしれない。
それは何か?
・・・バブルがはじけ、景気が回復しない時のあなたの精神態度である。
新聞には「政策がない」とか「いや財界もなっていない」だとか、はたまた「○○社の社長はこのご時世に○憶円の報酬だ」などと、おもしろおかしく書かれた記事が踊る。
メディアや識者の声に導かれ、多くの人がそこで発生する大衆感情に自身を同化させる。
そして、私たちは「政治」や「社会」や「強欲社長」にモヤモヤイライラの矛先を向けてみたりする。
確かに、政局にばかり走っている政治も悪かろう。
確かに、抜本的な改革ができない社会も悪かろう。
確かに、それはちょっと・・・と思わせる一部の経営者もあるだろう。
しかし、私たちも「バブルの恩恵」を味わったのではないか?
バブル景気というのは「未来の需要を先取りして今を楽しむ」という刹那的経済行為を指す。
すなわち、今後10年をかけ少しずつ栄養として摂取すればいいものを「美味いから」といって一気に飲み食いした結果肥えてしまうのと同じように、10年をかけてゆっくりと消費すべき需給を「儲かるから」といって無理くり需要を喚起し、宣伝し、儲け、社会全体として浮かれ、皆がそのおこぼれを味わってしまうのがバブル景気である。
目先の誘惑に負け、自己管理に失敗し、その結果肥えた他人に「自業自得だ」と言う人はいる。
しかし、バブルの蜜を吸った自分を顧みて「自業自得だ」と思う人はあまりいない。
もちろん苦言の矛先は「バブルの主人公」に向けられて然るべきだ。
しかし、私たちも「バブルのわき役かエキストラくらいのことをしたのだ」ということと「故に自業自得の部分を有しているのだ」ということはきちんと自覚せねばならない。
(中沢努「思考のための習作」から抜粋)
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