飲み屋で耳にした会話だ。
2人はある企業の社長と常務のようだった。
社長
「ああ、いい人材が欲しい。金は惜しいが給料に糸目をつけず外から引っ張ってくるか」
常務
「でも、昨年採った○○君がいるじゃあありませんか?」
「それにプロパーのみんなも頑張ってますよ。もう少し我慢したほうがいいのでは・・・・」
社長
「国や地方公共団体からもう仕事は来ない。今までは何とか回してもらえていたが今度という今度は本当に無理なんだ。外から自力で取ってこいと何度言ったことか」
「ああ、国や県から仕事をもらえた時代の社員たちには何を言っても無駄。あいつらには伝わんねぇ」
常務
「・・・・」
「社長、話題を変えましょう。最近ゴルフがスランプでして」
「いっそクラブ一式を新しくし、心機一転頑張ろうと思ってるんですが、どれがいいですかねぇ?」
社長
「おいおい、スコアが伸びないのはクラブのせいじゃないだろう。練習だよ、練習」
「それにタダ練習すればいいってもんじゃあない。工夫も必要だ」
「仕事と同じ。執着と努力と工夫だぞ。新しいクラブを買うなど君には早い、早い」
私は社長の言葉に「危うさ」を感じた。
そして「象徴的な会話だ」と思った。
なぜなら多くの企業は「人材が足りない、人材が追いつかない、新しい人材を採れ」と言うが、私にはそれがあまりに安易に聞こえるからだ。
それを聞くたびに「本当に既存人材を使いこなそうとしたのか?それが面倒だから新しい人材を求めている節はないか?やっかいなことから逃げているだけではないか?」と思うからだ。
確かにこの社長を含め、大半の企業は今いる人材を有効に活用しようとしているだろう。
しかし
・現行人材を使いこなそうと「本当に執着した」だろうか?
・現行人材を使いこなそうと「本当に努力した」だろうか?
・現行人材を使いこなそうと「本当に工夫した」だろうか?
これらを真摯に問わず、安易に新しい人材を求めたがる企業は多い。
新しいゴルフクラブが欲しくなっている常務と同じように。
ビールのジョッキが空き、もう一杯注文しようかと思ったところ、隣から常務の声が聞こえた。
「いやぁー、今日は社長に痛いところをつかれたなぁ。まあ、お説ごもっとも。ワッハッハァー」
2人は勘定を済まし店を出て行った。
(中沢努「思考のための習作」から抜粋)
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