情報開示義務は発明者でない上司にまで及ぶ(第4回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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情報開示義務は発明者でない上司にまで及ぶ(第4回)

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情報開示義務は発明者でない上司にまで及ぶ

~代表者の開示義務違反により権利行使不能とされた案件~ (第4回)

Avid Identification Systems, Inc.,
Plaintiff Appellant,
v.
The Crystal Import Corp.,
et al., Defendants.

河野特許事務所 2010年7月26日 執筆者:弁理士  河野 英仁

5.結論
 CAFCは、代表者にも誠実義務があり、不正行為により特許権の行使を不能とした地裁の判断を維持する判決をなした。


6.コメント
 PTOに対し誠実義務が課せられる「実質的に関与した」者について初めて争われた事件であり、また、情報開示陳述書(Information Disclosure Statement)の提出は米国特許出願・審査実務において極めて重要であるため、本事件を紹介した。

 本事件においては、発明者ではないが、特許に係る製品の研究・開発・マーケティング・出願管理を統括して行うグループリーダ的なポジションにある従業者に対しても、情報開示義務が及ぶことが判示された。

 本判決について、Linn判事は反対意見を述べている。代表者は本システムのコンセプトのみを3人の発明者に伝えただけであり、具体的は暗号化処理についての技術内容については把握していなかった。また代表者は、特許弁護士との発明打ち合わせにも参加しておらず、明細書原稿もチェックしていない。さらには審査段階において通知されたオフィスアクションに関する書類も見ていない。Linn判事はこのような場合にまで、代表者が実質的に関与していたとするのは妥当でないと述べている。

 なお、本判決は、補佐的な地位にある者、例えば、秘書*9、発明者に連絡を取ったにすぎない者、小規模団体(Small Entity)陳述書*10にサインしたにすぎない者、販売部門側のスタッフにまで「実質的に関与した者」の範囲を広げるものではないと判示している。

 特許が有効と判断され、また特許権侵害が認定されたとしても、本事件の如く情報開示義務違反があった場合、一瞬にして役に立たない権利となってしまう。権利化の際には、特許出願に密接に関連する上司の行為にも注意を支払うべきであろう。逆に、特許権侵害として訴えられた場合、代表者・グループリーダ等の実質的に関与した者に情報開示義務違反が存在したと主張することも、今後有効な抗弁になるものと思われる。

判決 2010年4月27日
  (第5回へ続く)


                                 
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