情報開示義務は発明者でない上司にまで及ぶ(第3回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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情報開示義務は発明者でない上司にまで及ぶ(第3回)

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情報開示義務は発明者でない上司にまで及ぶ

~代表者の開示義務違反により権利行使不能とされた案件~ (第3回)

Avid Identification Systems, Inc.,
Plaintiff Appellant,
v.
The Crystal Import Corp.,
et al., Defendants.

河野特許事務所 2010年7月26日 執筆者:弁理士  河野 英仁

4.CAFCの判断
(1)不正行為の原則
 規則1.56は、特許出願及び審査に関わる全ての者に、出願の審査においてPTOに対し、率直及び誠実義務を課すものである。

規則1.56(a)*5は以下のとおり規定している。
「・・・特許出願の提出又は手続の遂行に関与する各個人は,特許商標庁に対する折衝において率直及び誠実の義務を負い,その義務は,当該人に知られている,本条において定義される特許性にとって重要な全ての情報を開示する義務を含む。・・・ 出願に関連して,特許商標庁に対する詐欺行為が実行された若しくは企てられた,又は悪意若しくは故意の違法行為によって開示義務違反が行われた場合は,その出願には特許は付与されないものとする。」

 不正行為があったことを主張する当事者は明確かつ説得力ある以下の3証拠を提出しなければならない*6

第1:重要な先行技術
第2:先行技術に係る特許出願及びその重要性に対し責任を負うべき認識
第3:欺く意図を持ってPTOに対し先行技術を開示することの出願人の失敗


 本事件において、原告は、見本市は重要であった点(第1(争点1))と、代表者はこの情報を開示する誠実義務があった点(第2(争点2))とが争われた。原告は、代表者がPTOを欺く意図を持って特許を取得すべく当該情報を伏せていた点については争っていない(第3)。以下、争点1及び争点2について説明する。

(2)争点1:代表者の見本市におけるデモ行為は「重要」と位置づけられる。
 CAFCは、代表者の見本市におけるデモは、重要な先行技術であるとして原告の主張を退けた。審査官が特許として出願を登録するか否かを決定するにあたり、先行技術を重要であると考える実質的見込みがある場合、その情報は重要とされる*7

 原告は、代表者が見本市にて開示した関連製品は、326特許の全ての構成要件を開示していないため、重要でないと主張した。この見本市の情報は陪審員にも提示され、陪審員はこの情報を考慮した上で特許は有効と判断していた。以上の理由により原告はこの情報は、102条(b)に規定する先行技術に該当しないと主張している。

 しかしながら、CAFCはたとえ開示した情報が、特許を無効に導くものでないとしても、審査官が当該情報を、特許性を判断する上で重要と判断した場合、当該情報は「重要な先行技術(material prior art)」に該当*8すると述べた。

 見本市において開示した関連製品は、特許法第102条(b)の規定により326特許を無効とするものではないものの、審査における先行技術中で最も326特許に近い技術であり、特許性に大きな影響を与える。以上の理由により、CAFCは見本市における関連製品のデモは重要な先行技術であると判断した。

(3)争点2:代表者も実質的に関与した者として誠実義務を負う。
 CAFCは、代表者としての位置づけ、発明者の雇用状況等の証拠に鑑み、代表者を「実質的に関与」した者と推定し、誠実義務を負うとの判断をなした。

 規則1.56(c)に規定するとおり、代表者が、出願・審査手続きに実質的に関与(substantively involved )している場合に、PTOに対し誠実義務を負う。

 CAFCは、「実質的に関与」したとは、関与が、出願の内容に関連し、または、出願・手続を遂行する際の意思決定に関連し、その関与が全体として管理上・事務的なものではないことを意味すると判示した。

 本事件においては、「社長・創業者としての彼のポジションの性質」、「代表者が、暗号化チップのコンセプト実現を達成すべく発明者を雇用したこと」等が重視された。代表者はマーケティング・販売・研究開発など会社の全ての業務に関与していた。この研究開発を含む代表者の関与は、代表者が研究に関連する特許出願の準備に関与していたことを推定するものである。

 326特許は、行方不明のペットを容易に特定するという代表者の個人的ミッションと、会社を創業する目的との双方を満たすシステムに関するものであるから、この推定は合理的といえよう。

 その他、326特許の対応欧州出願がなされていたところ、発明者から欧州弁理士への対応欧州特許出願に関する通信を、代表者も受信していた。欧州特許出願も326特許の審査と同時期に進行していたことからも、代表者が出願手続きに関与していたことの推定を肯定することになる。以上の証拠に基づき、CAFCは代表者が326特許の出願・審査手続きに実質的に関与していたと判断した。

                                  (第4回へ続く)

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