米国判例紹介:Bilski最高裁判決(第2回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国判例紹介:Bilski最高裁判決(第2回)

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米国特許判例紹介:Bilski最高裁判決

      〜ビジネス方法発明の特許性〜(第2回) 
   
河野特許事務所 2010年7月1日 執筆者:弁理士  河野 英仁

                Bernard L. Biskli, et al.,
              Petitioners,

                 v.
               David J. Kappos,

 

(1)発明の内容

 申立人の出願(出願番号08/833,892)に係る発明は、エネルギー市場にお

ける商品の購買者と販売者が、如何にして価格変動のリスクに対する保護、

すなわち分散リスクを回避できるかについて保護を求めるものである。争点

となったクレームは1及び4である。クレーム1*5の内容は以下のとおりである。

 

  1. 定価にて商品提供者により販売される商品の消費リスクコストを管理す

る方法であって以下のステップを含む

(a)  前記商品提供者と前記商品の消費者との間の一連の取引を開始するス

テップであり、前記消費者は、過去の平均に基づき定率で前記商品を購入

し、前記定率は前記消費者のリスクポジション(risk position)に関連し、;

(b)前記消費者に対し対抗リスクポジションを有する前記商品のために市場

参加者を特定するステップ;and

(c)前記市場参加者による一連の取引が前記消費者の一連の取引に係る

リスクポジションの平衡を保たせるように、第2定率で前記商品提供者と前記

市場参加者との間の一連の取引を開始するステップ.

 

 クレーム1は如何にしてリスクをヘッジするかの一連のステップを記述して

いる。クレーム4はクレーム1のコンセプトに対し数学的公式を加えたもので

ある。

 

 残りのクレームはエネルギー提供者及び購買者に、市場のエネルギー需

要における変動から生じるリスクを最小限とする点等を記載している。例え

ばクレーム2*6は、以下の如く記載している。

 

2.クレーム1の方法であって、前記商品はエネルギーであり、前記市場参加

者は電力流通業者である。

 

 これらのクレームはクレーム4の公式において使用する入力値を決定する

ために普遍の統計的アプローチを提案している。例えば、クレーム7は、販

売者が「過去の天候パターンに基づき、または、各取引から」どれだけ利益

を得ることができるかを決定するための公知のランダム分析技術を提案し

ている。

 

(2)USPTOの判断

 特許庁審査官は申立人の出願を、米国特許法第101条の規定に基づき拒

絶した。理由は以下のとおりである。

 

 当該発明は特定の装置を使用しておらず、また抽象的なアイデアを操作し

ているに過ぎず、実用的な適用に対するいかなる構成も記載することなく純

粋な数学的問題を解決するものであり、技術上の物(article)ではない*7

 

 これに対し審判部も、当該出願は物理的な物を変換するものではなく、心

理的なステップだけをクレームしており、単なる抽象的なアイデアにすぎない

として、米国特許法第101条に規定する法定主題でないと判断した*8

 

(3)CAFC大法廷の判断

 CAFC大法廷はUSPTOの判断を支持する判決をなした。CAFCは発明が

米国特許法第101条における「方法(process)」であるか否かを決定するため

に過去の判例により既に確立されていた基準を否定した。

 

 この基準は、発明が「有用、具体的かつ有形の結果(Useful, Concrete

and Tangible Result)」を有するのであれば特許性有りとするものであり、SS

事件等において確立されていた*9

 

 CAFC大法廷はクレームされた方法が米国特許法第101条のもと特許性が

あるか否かは以下のいずれかの条件を満たさなければならないと判示した*10

 

(I)クレームされた方法が特別な機械または装置に関係していること、

または

(II)特別な物(article)を異なる状態または物体へ変換していること

 

 これは機械・変換テストと呼ばれ、CAFCは当該基準が、唯一の基準であ

ると判示し、申立人の出願は特許性がないと判断した。申立人はこれを不

服として最高裁へ上告した。 

(第3回へ続く)

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