中国特許権侵害訴訟の傾向と分析(第11回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国特許権侵害訴訟の傾向と分析(第11回)

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中国特許権侵害訴訟の傾向と分析

〜中国企業に狙われる外国企業〜(第11回) 
河野特許事務所 2010年6月29日 河野 英仁


 米国においては米国特許法第283 条に差し止めに関する規定が設けられているが,差し止めを認めるか否かは裁判官が衡平法(equity)に基づき判断する。米国特許法第283 条は以下のとおり規定している。
 「第283 条差止命令
 本法に基づく事件についての管轄権を有する裁判所は,特許によって保障された権利の侵害を防止するため,衡平の原則に従って,裁判所が合理的であると認める条件に基づいて差止命令を出すことができる。(18)」
 そして具体的にどのような場合に,永久差し止めが認められるかは,2006 年米国最高裁がe-Bay 事件(19)において判示した。差し止めが認められるためには,原告が下記の4 要件を満たすことを立証する必要がある。
 (1)回復不可能な損害の存在
 (2) 損害賠償等の法による救済が不十分であること
 (3)両当事者に生ずる不利益のバランス
 (4)公共の利益が害されないこと
 華陽電業に対して人民法院が即時差し止めを認めなかったのは,主として上記(4)に対応する公益保護の観点に基づくものである。環境技術,または医薬品等については即時停止の制限が認められる可能性が高
いと思われる。今後どのような場合に中国において即時停止の制限が認められるか注目する必要があるといえよう。米国においては,e-Bay 最高裁判決で上記4要件が判示されたものの,ほとんどの事件においては永久差し止めが従前と同じく認められている。例えばAcumed 事件(20)においては,たとえイ号製品が医療用製品であっても,公共の利益を損なうとはいえず,永久差し止めが認められている。連邦巡回控訴裁判所は,
 「特許を付与することの本質的な考え方は,特許権侵害から競合他社を排除することにある」
 と述べていることからも,e-Bay 最高裁判決にかかわらず,侵害行為は差し止めに直結するとの認識を持
つべきである。
4. 発明特許侵害訴訟の分析(2) 華立集団有限公司対深圳三星科健移動通信技術有限公司事件(21)
(1)専利02101734.4 号の内容
 華立集団有限公司(以下,原告という)は専利02101734.4 号(以下,734 特許という)を所有している。
734 特許は異なる通信方式であるGSM とCDMA との双方を一台の携帯電話機にて使用することが可能な移動通信方法を権利化している。
 図10 は双方式携帯電話機の概要を示す説明図である。

図10 双方式携帯電話機の概要を示す説明図

 734 特許に係る携帯電話機は,連接器1,主通信モジュール2,補助通信モジュール3,SIM/UIM カード差し込み溝4,主CPU5,UIM/SIM 変換モジュール17 及び主印刷回路板6 等を含む。多くの国ではデジタル携帯電話機の無線通信方式としてGSM(GlobalSystem for Mobile Communications)が広く採用されている。これに対し所謂第3 世代と呼ばれる無線通信方式としてCDMA(Code Division Multiple Access)が知られている。GSM ネットワーク対応国においてはCDMA 方式を採用する携帯電話機が使用できず,逆にCDMA ネットワーク対応国においてはGSM 方式の携帯電話機が使用できないという問題がある。
 734 特許は係る問題を解決すべくなされたものである。図10 に示す如く携帯電話機には主通信モジュー
ル2(例えばGSM モジュール)とは異なる補助通信モジュール3(例えばCDMA モジュール)を挿入することができる。主印刷回路板6 に設けられる主CPU5 はハードウェア測定またはユーザのキーボード操作により,主通信モジュール2 または補助通信モジュール3 のいずれかの始動を決定する。
 補助通信モジュール3 の必要がない場合,ユーザは主通信モジュール2 単体で利用することができ,主
CPU5 は主通信モジュール2 を自動的に起動する。
 主通信モジュール2 及び補助通信モジュール3 の双方が存在する場合,主CPU5 は以下の処理を行う。ユーザの操作により,主通信モジュール2 が選択された場合,主CPU5 は直接主通信モジュール2 とデータ交換を行う。そして,ユーザの選択により,補助通信モジュール3 が選択された場合,主CPU5 は電源切り替えスイッチ,可聴周波数切り替えスイッチ,アンテナ切り替えスイッチ及び連接器を通じて,補助通信モジュール3 とデータ交換を行う。なお,SIM/UIMカード差し込み溝4,スピーカ,液晶表示器,マイクロフォン,電池板,アンテナ及びキーボードはGSM/CDMAの共有部分となる。
 これにより,ユーザの自由選択によりGSM またはCDMA のいずれかの方式に切り替えることができる。また,これに加えてユーザは自身の希望する通信方式にのみ加入すれば良く,費用を低減することが可能になる。
  

(第12回に続く)  

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