質問の回答-60年間大地震による倒壊の心配がない住宅- - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

須永豪・サバイバルデザイン 
長野県
建築家

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対象:住宅設計・構造

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質問の回答-60年間大地震による倒壊の心配がない住宅-

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建築的
質問へのこたえ
【Q 60年間、大地震による倒壊の心配がない戸建住宅】
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allaboutのprofile宛に来た質問に、こたえようと書いたら2000字を越えていました。
システム上800文字以内で回答しなくてはいけないのだと、後になって知りました。(ガーン・・・。)
というわけで、勿体ないのでコラムとして掲載しておきます。
その質問はコチラをご覧ください→http://profile.ne.jp/ask/qa_detail.php/42624
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建築家はそれぞれに興味のある方向性が異なるもの、建築家仲間や同業者を見ていてつくづく思います。率直で具体的な疑問を試しに会ってみて直接ぶつけてみると、相性・価値観の近い建築家・業者が見つかるように思います。今回のご意見はとても真っ当で嬉しいと感じましたので出てまいりました、須永豪と申します。皆プロですから建築家それぞれに見解があるとは思いますので、ここではあくまで私の持論として受け取ってください。

木造在来工法は、柱が重さを支え、つっかえ棒の筋交がヨコ揺れに踏ん張ります。
ですのでそれらの骨組みが腐るまでが構造体の寿命です。
腐らせないために、シロアリ・湿気・雨漏り・結露などの対策をみなさん色々講じます。
そのため「日頃のメンテナンスで寿命が決まる」と言われます。
良いところは、腐った箇所は部分的に取り替えが可能なことです。日本は木造の歴史が深いので大抵の大工さんが皆高い技術をもっています。

ツーバイフォーは、9mm程度の合板と細い枠材と釘とでパネル化されることで、加重やヨコ揺れに耐える硬さとなっています。
パネルがパネルでなくなるとき、つまり「釘が錆びるまで」が躯体の寿命です。
ただし一度大きな地震に遭うと釘・釘穴は緩みますから、そのまま2度目の大地震(や大きな余震)に遭えばガッチリ耐えてくれることは期待できません。
もちろんシロアリ・湿気・雨漏り・結露などで腐ってもいけませんので、メンテナンスも大切です。
長所は「経済性」。(の、はずなのですが・・・)

鉄筋コンクリートは頑強そうに見えます。じっさいしばらくの間はとても頑強です。
文字通り鉄筋とコンクリートが一体となって力を発揮します。
経年(酸性の雨・大気)とともにコンクリートが中性化し、鉄筋が錆びると力を失い寿命となります。
青山の同潤会アパートはよく頑張っていましたが(寿命はもう完全に越えていたようです)、あれで築76年でした。かつては100年もつと言われた鉄筋コンクリートですが、最近は50年ももたないという話しも耳にします。まだ歴史の浅い建材なので不明な点もあります。長所は「ガッチリ感」でしょうか。(私も鉄筋コンクリートに暮らしています。まだ賃貸住まいなので"しばらくは頑丈"なマンションをいつも選んでます)

・・・という大雑把な基本がまずあります。

(ここから先は私の取り組みを書きます。どう書いても宣伝のようになってしまうもので、不快に思われましたらごめんなさい)
私の場合はそれらの長所・短所を勘案し軸組工法をアレンジした工法を作りました。柱が多少腐ろうとも、釘がみな錆びようとも、地震に耐え命と暮らしを守ることが住宅(シェルター)の役割だという、ガッチリな木造です。コンクリートの替わりに木をつかった巨大な木箱とでも言えば、雰囲気を感じ取ってもらえますでしょうか。
経年により不足してくる耐力を補うために、20年後くらいに追加で釘を打てるようにしてあったり、
地震の衝撃力を和らげるよう、基礎コンクリートの下には減震フォームを敷き込む(50万円程度)など、数十年後の劣化を見据えた工夫をしています。「終の住処」として建物の寿命を考えています。
(詳しくはこちらのHPを見てください→http://sunaga.org)

とはいえ、なにごともメンテナンスは寿命を延ばす鍵ですので、私もメンテナンス・フリーとは言いません。しないのと比べたら、した方がズッとイイのは本当です。

コストについてですが例として、2300万円の住宅に占める構造材の割合は、
多くの在来木造では100万円弱くらいですが、この工法では約500万円分が構造材です。
でも在来工法と比べて高価にならないように、在来工法のムダ(多種にわたる雑材とそれを切り貼りするつまらない労力・コスト)をカットする工夫をしています。漆喰を塗るなど空間を好みで自由にお化粧もできます。その分だけは多少高くなりますので、欲しがった分だけ高くなる、明朗会計な工法でもあります。

短所も申し上げておきますと、
本当の寿命がどれだけあるのか、当分のあいだ実際には確認ができないことです。技術者としてはこの目で確認したいところですが、見届けたいような、見届けられないで自分が尽きる方が幸せなような。
(建主さんへはいつも「あなたがたがこの世を去るまで、の最低60年を目掛けて、私はこの家を設計します」と伝えています)

さいごに、
死ぬまで住めるとなると、地震以外にも考慮すべきことが沢山あります。
多岐にわたりますので、ここでは省きますが、健康に暮らせるか、お金は世の中がどう変化しても返済できのるか、親のことは、子どものことは、いざとなったら売れる建物か、などなど。
家を建てるというのはあらたまって人生を考えるいい機会ですので、ぜひたくさん考えて、得るものが多い時期になることをお祈り申し上げます。


※この工法は特許を取得せず、主要な建築専門誌 数誌にて公表しました。
世に広く役立ってほしいと願い、HPを通じて技術を公開しています。
ちょうど進行中の現場がありますので、ご希望があれば構造の見学をしていただくことも可能です。建築関係の方も歓迎いたします。

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(長野県 / 建築家)
須永豪・サバイバルデザイン 

人間らしい「サバイバル」ってなんだろう?

安心して寄り掛かれるおおきな木のような存在感と、ジャングルジムのような自由さと、楽器のような豊かな響きがある空間。そういうものを、木でつくりたい。

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