- 渡邉 松男
- 株式会社松岡建築設計事務所 代表取締役社長
- 建築家
対象:住宅設計・構造
ランチは、ローマのテルミニ駅で落ち合う。
その後、
とても大きなピザトーストをほお張りながら、
互いの景勝地での出来事を話す・・・・。
だけど、『ドーンッ、・・ドーン』と、
尋常ではない大きな音が、そんな会話に重なって聞こえてきた。
ほどなく、音のする方向に目をやると、
螺旋階段を一段、一段ゆっくりと降りる
オールバックの白髪が美しい老人は、
抱えられないほどの大きなスーツケースを引きずりながら降りていた。
身につけたコートは質素なラシャか?
実は、私、ほんの少し前からその音を幻聴的に自覚していたが、
まさか、この老人とは・・・・・・・。
シワだらけの手をした彼は、
ゆっくりと、そして、ゆっくりと降りていた。
新しいクリスマスをローマに住む息子家族と、
宝石のような一時を過ごしてきたのだろう・・・。
その状況をすぐには把握できない自分の目を疑い始めたころ、
『アッ!』と、その老人の手伝いをしようと、
スタンドチェアから腰を浮かした瞬間!
階段の下から、アフリカ系の若者が彼を目掛けて駆け昇り、
例の大きなスーツケースに手を掛けた。
それも、すべてを受け持つのではなく、
白髪の老人と、スーツケースの取手を共に握りしめ、
大きな、大きな螺旋階段を二人で降り始めた。
もちろん、その若者は私より若い・・・・.
その光景を見届けながら、『良かった・・・・。』と。
そして、
その美しい光景に『世界は大丈夫だな・・・。』と嬉しくなった。
あれから数日、改めて『スクワット』をトレーニングしないといけないな。