KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(6)第5回 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(6)第5回

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   米国特許判例紹介:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(6)
      〜公知要素の組み合わせとMPFクレーム〜(第5回) 
   河野特許事務所 2010年1月19日 執筆者:弁理士  河野 英仁

                Fresenius USA, Inc., et al.,
              Plaintiffs- Appellants,
                 v.
               Baxter International., Inc., et al.,
               Defendants-Cross Appellants.


4.CAFCの判断 
争点1:改善のために類似の装置を適用することが当業者のスキルを凌駕するものでない場合自明である
 CAFCは構成要件(a)に対応する事項が先行技術に開示されていると判断した上で、血液透析装置にタッチスクリーンを組み合わせてクレーム1に係る発明を想到することは自明であると結論づけた。

 問題となっている構成要件(a)は以下のとおりである。
(a)血液透析器に対し透析液を供給する透析液送出システムと、  該透析液送出システムは、少なくとも下記の(i)-(iv)からなる群から選択される少なくとも一つのユニットを含み、
  (i)透析液準備ユニット
  (ii)透析液循環ユニット
  (iii)限外ろ過液除去ユニット及び
  (iv)透析液監視ユニット

 マーカッシュ形式で記載されている場合、群内の(i)〜(iv)の一つが先行技術に開示されているのであれば、(i)〜(vi)の全てが開示されていると判断される*9。すなわち、先行技術が透析液送出システムの(ii)透析液循環ユニット、または(i)(iii)(iv)のいずれか一つを含んでいれば、先行技術が構成要件(a)を開示していることになる。

 循環ユニットに関し、B社の証人Kelly氏は全ての血液透析装置は、透析液を通じて何らかの方法により透析液を循環させなければならない点を認めた。またF社鑑定人Ragsdale氏は「先行技術のシステムは透析装置用透析液室を有する回路を通じて、透析液を循環させるための透析液ポンプを備える」と証言した。CAFCは以上の証言から、先行技術が(ii)透析液循環ユニットを含む血液透析装置を開示していることは明らかであると判断した。

 続いて、CAFCは血液透析装置にタッチスクリーンを一体化してクレーム1を完成することが自明か否かを判断した。

 F社は医療機器にタッチスクリーンインターフェースを使用する先行技術を提示した。この先行技術中には、タッチスクリーンが一体化された麻酔送出システムが開示されていた。また当該先行技術には、「血液透析」が急速に進歩している医学エリアの一つであるとして述べられており、このような複雑な技術を実施するためには進化したユーザインターフェースの利益を享受することができると記載されていた。

 その他、F社鑑定人Phares医師は、「タッチスクリーンをある種のコンピュータ制御装置」に一体化することは出願時において容易であったと証言した。

 CAFCはKSR最高裁判決の判示事項
「ある技術がある装置を改善するために使用されていたならば、当業者は、それは同じやり方で類似の装置を改善しようと認識するであろう、そしてその現実の適用が当業者のスキルを凌駕するものでない限り、当該技術を使用することは自明である。」
を示した上で、当該先行技術は黙示的にタッチスクリーンを公知の血液透析装置に組み合わせることを提案していると述べた。以上のとおり、出願時の当業者が容易にタッチスクリーンを一体化できることが示されたことから、TSMテストのもと非自明と判断した地裁の判断を覆した。
                                   (第6回へ続く)

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