廃棄物処理政策に関して検討されている論点(3)-3 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

尾上 雅典
行政書士エース環境法務事務所 
大阪府
行政書士

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対象:企業法務

村田 英幸
村田 英幸
(弁護士)
尾上 雅典
(行政書士)

閲覧数順 2024年04月17日更新

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廃棄物処理政策に関して検討されている論点(3)-3

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法令改正 2010年 廃棄物処理法改正

最終処分場維持管理積立金のあり方




 (第1回目)廃棄物処理施設設置許可制度の整備及び最終処分場対策の整備
 (第2回目)安定型最終処分場への規制が強化される可能性
 の続きです。


 中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「廃棄物処理施設設置許可制度の整備及び最終処分場対策の整備」に関して、以下の3点が問題提起されました。
・安定型最終処分場への住民不安に配慮し、異物を付着・混入させないよう、より充実した環境保全措置が必要ではないか
・最終処分場の設置者が不在となった場合、どうやって管理を継続していくのかを含め、最終処分場の維持管理体制の強化が必要ではないか
・公共関与をしてでも、廃棄物最終処分場の施設整備を進めることが必要ではないか



 今回のコラムでは、「最終処分場維持管理積立金のあり方」について解説します。


最終処分場維持管理積立金とは




 最終処分場維持管理積立金とは、処分場の設置者に対し、最終処分場の埋立終了後も維持管理を継続させるため、あらかじめ積み立てることを義務づけられた積立金のことです。

 積立の方法としては
1.最終処分場の設置者は、埋立期間中、毎年度、都道府県知事が通知する額の金銭を、独立行政法人環境再生保全に積立
2.最終処分場の設置者は、埋立終了後、毎年度、維持管理費用を独立行政法人環境再生保全機構から取り戻す。
 という流れになっています。

 
 平成17年度の法改正により、すべての最終処分場に対し、維持管理積立金の積立義務が定められました。

 前回のコラムで解説した安定型最終処分場も、現在では維持管理積立金を積み立てる義務があるのです。

 平成19年現在の維持管理積立金の合計は350億円を超えており、積立件数では1,000件を超えています。


 このまま積立が順調に増えていけば良いのですが、実務ではそれ以外に重大な問題が発生しています。

 冒頭でご説明したとおり、積立金を取り戻すのは、「最終処分場の設置者」となっています。

 しかし、最近は企業の破産や倒産が増えており、最終処分場を閉鎖する前に、最終処分場の設置者が不在となるケースがあります。

 たとえ、新たな埋立は無かったとしても、それまでに埋められた廃棄物の状況を監視したり、排水が汚染されていないかなどをチェックする必要があります。

 最終処分場の設置者が不在となった場合でも、周辺の生活環境を保全していくためには、誰かが最終処分場の管理を継続しなければなりません。

 このようなケースでは、都道府県が管理を代行することが多くなっています。

 通常なら、監視やチェックに必要な経費は、「最終処分場維持管理積立金」から取り戻すことができるのですが、肝心の「最終処分場設置者」が不在となった場合は、積立金を取り戻すことができなくなります。


 設置者不在となった最終処分場の管理を代行している都道府県などにも、維持管理積立金を取り戻す権利を認めるべきなのではないか
 という観点で、専門委員会でこの問題の検討がなされています。


 誰かが最終処分場の管理をしなければならない以上、そのための経費を積み立てた維持管理積立金を、その代行者に取り戻させるのは理にかなっています。 

 次の廃棄物処理法改正に盛り込まれる可能性が高い項目だと考えております。

 
 運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
 著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」