- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
安定型最終処分場への規制が強化される可能性
(第1回目)廃棄物処理施設設置許可制度の整備及び最終処分場対策の整備
の続きです。
中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「廃棄物処理施設設置許可制度の整備及び最終処分場対策の整備」に関して、以下の3点が問題提起されました。
・安定型最終処分場への住民不安に配慮し、異物を付着・混入させないよう、より充実した環境保全措置が必要ではないか
・最終処分場の設置者が不在となった場合、どうやって管理を継続していくのかを含め、最終処分場の維持管理体制の強化が必要ではないか
・公共関与をしてでも、廃棄物最終処分場の施設整備を進めることが必要ではないか
今回のコラムでは、「安定型最終処分場への住民不安に配慮し、異物を付着・混入させないよう、より充実した環境保全措置が必要ではないか」について解説します。
(第1回目)「廃棄物処理施設設置許可制度の整備及び最終処分場対策の整備」 で解説したとおり、簡易な排水対策しか設けられていない安定型最終処分場に、本来は埋め立ててはいけない廃棄物が大量に混入し、それが住民不安の原因となっている問題があります。
安定型最終処分場は、がれきやガラスくずなどの、埋めても腐ったりしない廃棄物を最終処分するための場所です。
埋めても腐らない廃棄物
↓
地下水や土壌を汚染する可能性は低い
↓
排水処理設備は不要
↓
維持管理も比較的簡単なので、安価で設置できる
というのが顕著な特徴です。
最終処分場の中ではもっとも安価に設置できるため、各地で広く設置され、建設系廃棄物の埋立場所として重要な役割を担ってきました。
しかし、上記の論理が成り立つためには、「埋めても腐らない廃棄物」という前提条件を絶対に守る必要があります。
仮に、その前提条件が「埋めたら腐る廃棄物」になってしまうと
埋めたら腐る廃棄物
↓
腐敗によって、地下水や土壌を汚染してしまう
↓
しかし、排水処理設備がないため、汚染は拡大していくばかり
↓
周辺住民の生活環境が害される危険が増大
と、前提条件が一つ変わるだけで、埋立による結果は大きく変わってしまいます。
現在のところ、「埋めても腐らない廃棄物」=「安定型5品目」として
「廃プラスチック類」「金属くず」「ゴムくず」「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」「がれき類」の5種類が定められています。
しかしながら、食品の包装容器などの腐敗物が付着したプラスチックの場合は、そのまま埋立てると、土中で廃棄物の腐敗が進み、環境汚染の元凶となってしまいます。
安定型最終処分場では、廃棄物が搬入された時点で一度それを地面に展開し、異物が混入していないかどうかを検査するのが原則となっています。
しかし、日々大量に搬入される廃棄物を仔細にチェックし、人の目だけで、異物の混入を完全にシャットアウトするのは並大抵のことではありません。
腐敗物の混入を見逃す場合も十分に考えられます。
その結果、廃棄物を埋立てることによる環境汚染のリスクが現実化してしまいます。
安定型最終処分場の場合は、異物の混入をいかにシャットアウトするかが問題解決の可否を握っています。
上記の問題に対処するため、環境省が設置した「最終処分場に係る基準のあり方検討委員会」では、安定型最終処分場への規制案を、次のようにまとめました。
1.安定型5品目以外が付着・混入しないような対応
ア.展開検査をより実効あるものにするための構造基準や維持管理基準の強化、搬入管理の手法の見直し等
・展開検査場の設置義務づけ
・展開検査の実施方法の強化(記録義務付け等)
・排出事業者の負うべき義務(安定型産業廃棄物分別義務、安定型廃棄物専用保管場所の設置等)
イ.埋立禁止品目の追加
今後(平成21年度)、平成18年度調査結果で「埋立物の違反」及び「放流先又は浸透水の異常」が原因で自治体の指導を受けた処分場について更に実態を把握し、その結果、安定型5品目の中で有機物等の付着の可能性が高いものが判明した場合には、これを埋立禁止品目として指定することを検討する。
2. 浸透水によるチェック機能の強化
処分場の構造基準の強化
・集排水施設等の浸透水採取設備に係る付帯設備の設置及びその構造基準の明確化
・集水機能の確保(砂地等の地盤での遮水機能強化など)
この案がすべて実現したとしても、それだけで住民不安が解消するとは思えませんが、安定型最終処分場への風当たりがますます強くなるのは間違いなさそうです。
運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」