初対面を制す - 経営戦略・事業ビジョン - 専門家プロファイル

青松 敬明
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寺崎 芳紀
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(経営コンサルタント)
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閲覧数順 2024年04月19日更新

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 結局のところ、ビジネスの交渉も詰まるところは、心理戦だと思っている。
 ひょっとすると、交渉というものは全て同じで、ビジネスであろうが恋愛であろうが、交渉事は心理戦ではないだろうか。
 
 人間という動物は、最初の一瞬で、相手を勝手に判断しているものである。
 動物である以上、初めて人、初めての場所、初めての事には基本的に警戒感を持つことは避けられない。
 
 初めて会った相手は、その瞬間に、こちらの服装や、顔つきや、モノの言い方で、その人の今までの経験に基づいて、こちらを判断している。
 多分、無意識に同じ事をこちらも行っている。
 恐ろしいことに、その判断はものの数秒で行われている。 
 そして、その数秒での判断は、簡単に覆ることはない。
 「こんなモノの言い方をするヤツだ」と判断されると、しばらくの間は「こんなモノの言い方をするヤツ」と思われ続けてしまうのである。

 そう考えると、初対面で相手に良いインパクトを与えることができるだけで、相手は良いイメージをしばらくは持ってくれることになる。
 もちろん、名刺交換をして、名前を名乗ったくらいでは「普通」のインパクトを与える程度で、「良」いインパクトまで与えることは難しい。
 
 この私なんて元来内気な性格なので、かつては本当に名刺を渡して名前を名乗るくらいしかできなかった。
 あるとき、先輩が名刺に自分の写真を貼付けているのを見て、試しに真似をしてみた。
 すると、名刺を受け取った人の印象が明らかに変わったのである。
 「写真があるとあとで分かり易いですね」とか、「ちょっと写真を撮られたときより太りましたね」とか、何か一言が入るようになったのである。
 そうなると、さすがに内気なこの私でも、「単なる先輩の真似なんですが、、、」とか「ちょっと最近食べ過ぎでして、、、」とか、何か一言言うようになったのである。
 
 実は、人間が相手を判断するときに最も重要な事は、「会話が弾む」がどうかではないだろうか。
 会話が弾めば、あとの印象は、たいてい「良い人」という印象になるはずである。
 
 そう考えたこの私は、本来なら会話そのものを弾ませれば良いものの、持ち前の性格からなかなかそうもいかず、苦肉の策として名刺に凝ることにした。
 名刺を見ただけで、この私が「どこの誰で」、「どんなことをしていて」、極端な話、「趣味」まで分かるようにしてみた。
 すると当然ながら、相手にとって、ちょっとでも気になる部分があれば、何か質問されたり、次の会話に繋がるようになった。
 よく考えてみれば、相手も初対面なので、会話の持っていき方はお互いに分からないだけに、会話のきっかけをつくることができたのである。

 当時比較的大きな会社にいたこの私の名刺を細工するわけにもいかず、別の個人名刺を自腹で作ったものであった。
 今になって思うと、この私が比較的大きな会社にいようと、個人経営者であろうと、そんなことは個人としての相手には大した問題ではなく、目の前にいるこの私がどんな人物であるかが重要だったわけである。
 この私が、たまたまこの会社にいるっていうだけの話でしかないわけである。
 大会社であるとか、ちょっと名の通った会社であるとかであれば、会社の看板で勝負できるところもあるかもしれないが、逆に、会社が小さければ小さいほど、個人をアピールした方がその後のやり取りはスムーズになるに違いない。

 会うときは、名刺という小物の助けを得ることができるが、初めて電話する相手に対しても、なんらかの形で最初を制するように日夜考えている。


 もっとも、初対面で制して心理的に上手をとっても、その後はやはり能力がものを言うので、一度は取った心理的上手を失わないよう常に能力は磨いておかないといけない。
 この私の場合、恋愛では、初対面を制せないばかりか、その後の交渉でも後手を踏んでしまっている。。。


*「初対面を制す」より転記しました。