FPが主催するセミナーで不動産投資にカモられる

マンション投資に陥る20～30代サラリーマン

不動産投資は本来、資金的に余裕がある人が行うべきものです。

万一、投資先で損失が出たとしても、手元資金でその損失を補うくらいの投資家が行っています。

ところが、20代～30代前半の若手サラリーマンが何故かこの不動産投資に陥っています。

ここ１，２年では私のところに不動産投資に関する相談に来られる方のうち、約半数はこの世代が該当しています。

この世代は、いわゆるゆとり世代やさとり世代と言われる人たちで、ゆとり教育のなかで競争することがある意味、「悪」とされ、物事に対する競争や達成の意識が低いと言われています。

また、コミュニケーション能力も低いと言われており、そのツール自体はSNSが多く、友達間ではLINEやチャットなどで会話し、口頭で何らかの意思疎通を図るのは苦手とも言われています。

よく電話での応対ができないといわれるのも、こうした背景があるからです。

そのような世代ですが、合理的思考、効率的な思考を強く持っています。

したがって、１つの事象に対して大きな意義や意味が自身にあれば、その能力をフルに活動させるのです。

また、将来に対しての期待感がないので、今、現在が安定していればいいという考え方も多く見受けらます。

こうした背景から、ちょっとした隙間に不動産投資の話が入り込むのでしょう。

誰しも老後に年金はもらえるはずがない、しかしどうしたらいいのかわからない、お金を貯める方がいいのはわかっているが、その方法がわからない、そんな心境を持つ世代なのでしょう。

例えば、お金の貯め方にしても、銀行の定期預金から勤務先の財形貯蓄や今やよく耳にするiDeCoなど、その手段はさまざまです。

しかしながら、どこに行って何をお願いしたらいいのかがわからないのです。

FPが主催するセミナーで不動産投資にカモられる

そんな中、不動産投資の話を耳にします。

先輩から聞かされた、お金の貯め方がわからないからFPのセミナーに行ったなど、そうしたところから不動産投資は意外と簡単にできる、しかも将来、年金や保険代わりになるという話を聞かされるのです。

そこで聞く話は、儲かる確率が高いと感じたり、将来のお金の不安が払拭される、言われた通りにやっていれば絶対に損はしないなど、うまく信用させてしまうのです。

この際、ゆとり世代やさとり世代は自身の物事に対する分析能力があると思い込んでいます。

こんな事例をお話しましょう。

Fさんは30代前半でだれもが知っている有名上場企業に勤務しています。

私のところに相談に来たわけは、投資マンションを2戸保有していて、自分ではそれなりに毎月儲かっているのだが、何となく不安に思い相談に来たとのこと。

投資マンションを買ったきっかけは？と聞くとお金のことでFPのセミナーに参加して、そこで不動産投資の話を聞き、サラリーマンなら投資マンションがリスクも少なく、将来の年金代わりになる、小額の自己資金でも充分にできるとの触れ込みで話に乗ったと話されました。

早速、投資マンションの詳細を聞き始めましたが、Fさんは話をする中で自分なりに計算して購入したので絶対に間違えはない、損はしていないはずだと繰り返し話されました。

しかし、残念ながらそうは行きませんでした。

それぞれの家賃から毎月のローン返済をマイナスし、管理費や修繕積立金といった固定費を差し引き、更に固定資産税を引いて行くと、毎月に均せば戸当り月3万円の赤字でした。

私が試算をして結果の話を聞くと、そんなことはない、間違ってもマイナスにはならないと言いますので、再度、順序立てて計算をしました。

結果は同じで、Fさんはかなりショックを受けてしまいました。

Fさんの計算では、税金の支払いは別勘定で行っていたので、その数字が頭にあったようです。

その後、「今後はどうすればいいのでしょうか？」と尋ねられました。

当然、今すぐ売却をすれば、ローン残高の方が市況値を上回るので持ち出し金が必要、しかしその資金はありません。

また、継続して保有するにしても、毎月6万円近く、年換算で70万円の赤字です。

仮に5年保有しても累計350万円の赤字となり、Fさんは深くうなだれてしまったのです。

最終的には当面、塩漬け、ボーナスを数年間、貯めて持ち出し金を作るとのことでした。

ちなみにFさんは年収が500万円代半ばですので、所得税の還付金もそれほど期待できる金額ではありませんでした。

Fさんは自信を持って不動産投資をしていると思っていましたが、実際には大赤字で投資とは言えませんでした。

これには、不動産業者の巧みな話術やこの世代の思考を操るモノがあると言えるでしょう。

もちろん、投資案件のシミュレーションはありませんし、マンション投資のメリットしか話をしません。

それでもなぜ、不動産投資をやってしまうのでしょうか。

彼ら世代の思考の中では、問題点がどこにあるかわからない、また、数字を並べて分析するということができない、もしくはわからないなど、与えられた情報や数字に疑いを待たず、相手の話を鵜呑みにしてしまう傾向が強いと感じます。

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