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映画のはなし(10) タゴール・ソングス

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『非西欧圏で初めてノーベル文学賞を受賞したラビンドラナート・タゴール』

『タゴール・ソングという歌曲集がある』

『インドとバングラデシュの国歌を作ったのはタゴール』


 このドキュメンタリー映画「タゴール・ソングス  TAGORE SONGS」を見るまではどれも知りませんでした。

HP:http://tagore-songs.com/

Twitter:https://twitter.com/tagore_songs


 タゴール(1861~1941)はベンガル地方のコルカタ(旧カルカッタ)に生まれ、インドの大詩人と呼ばれています。

また文学者のみならず、音楽家、画家、教育者、思想家、社会活動家、農村改革者として、どの分野においても優れた業績を残しました。

彼の生きたベンガル地方とは現在はバングラデシュとインドの東部に位置する西ベンガル州にあたり、公用語はベンガル語を使用しています。

(インドの公用語はヒンディー語と英語に加えて州公用語として22の言語を定めています)

タゴール・ソングはタゴールが生涯に渡って作り続けた歌の総称で、その数は二千曲以上にも上ります。今で言うシンガーソングライターです。

 歌のテーマはベンガルの自然、祈り、愛、感情、民族、祭など多岐に渡っています。

ベンガルの人々にとってタゴール・ソングは身近な歌であり、その身近さは「聴く」よりも「歌う」のが特徴で、日本にはこのような存在のものはなかなか見当たりません。

映画の中で街角の人に「あなたのタゴール・ソングを聴かせていただけませんか?」と質問すると、自分のお気に入りのタゴール・ソングを歌ってくれるシーンがあり、それを見ると身近な存在ということが分かります。

「本当にすぐに歌ってくれるの?」と疑問を持たれる方もいらっしゃると思いますが、ベンガルの人々は他者を寛容に受け入れてくれる特性があり、外国人に対しても敷居が低くフレンドリーに接してくれるということが理由の一つだと佐々木美佳監督がインタビューで語っていました。


 タゴールは日本とも繋がりがあり、1916年以降5回来日しています。

映画の中では軽井沢で日本女子大学校(現 日本女子大)の学生と語り合う写真が登場します。

日本女子大学校といえばNHK連続ドラマ小説「あさが来た」で登場した日本の女子教育の先駆的な教育機関でありますが、先駆的だけではなく相当な世界標準を目指していたことが分かります。

(「あさが来た」と言えばあの『びっくりぽん!』です!)

ドラマ繋がりで言うと2021年大河ドラマ「青天を衝け」のモデルとなった渋沢栄一とタゴールは親交があり、来日時には必ず会っていたそうです。


 映画は「なぜタゴール・ソングはベンガルの人々に愛され、心の中に生き続けているのだろうか?」をもとに、人を縦糸に、各国各都市を横糸に紡ぐようにしてストーリーが進められています。

 タゴール・ソングの旋律は日本人からすると一聴して分かりやすいものではないかもしれません。

それは日常で何気なく聴いている音楽で使われている音階の違いによるもので、それは風土や歴史によって多少変化をしています。

このことは非常に興味深い点です。

 曲のテンポは Andante や Moderato のものが多く、穏やかに話す時の速さと曲の速さとが似ているのではないでしょうか。

歌詞自体は平易なものではありませんが、歌いやすく聴きやすいテンポも大衆に受け入れられている要因の一つであると思います。

音楽の大衆性の身近な例としては「六甲おろし」を作曲した古関裕而や「昴」を編曲した先日お亡くなりになられた服部克久。

市井の人に音楽で励ましたり癒したりしたのがタゴールと重なっているように思います。

映画の中では「オレたちはタゴールと一緒さ。」とラップをするバングラデシュのストリートラッパーを登場させたことは、タゴールの生きていた時代と現代とが自然な流れで繋がっていることが分かります。

表現方法が変わってもタゴールの精神の本質に変わることがないということが伝わってきて、このことも興味深いことです。

 もう一つ。タゴール・ソングの普遍性について。

インドのタゴール・ソングの教師が「人生はつらいことばかりだ。」と絶望的なことを語りますが、続けて「タゴールの物語や詩からどう生きればよいかを学んだ。」と語ります。

時代や国や地域を超越する「どう生きればよいか」という人生の命題をタゴール・ソングを歌うことによって昇華させているのではないでしょうか。

ベンガルの人々の心の中にはタゴールからの「生きることの肯定」をごく自然に生きずいているように思います。


 上田映劇(長野県)で開催された佐々木美佳監督の舞台挨拶の様子がまとめられてあります。

緊急事態宣言が解除されたこの時期に、大都市圏ではない小さな地方都市で、作品について監督から直接伺うこの企画は大変素晴らしいです。

http://www.uedaeigeki.com/news/4932/

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