ローコスト住宅の考え方7 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

増井 真也
建築部門代表
建築家

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対象:住宅設計・構造

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ローコスト住宅の考え方7

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家作りのコツ
さて、27日のコラムの続きである。

職人さんの技術力の低下

今の建築業界にはまともな職人さんがいない。こういう言い方をすると起こられてしまうかもしれないが、とにかく何でもやるぞ!と挑戦してくれる職人さんを探すのは至難の業である。
この説明をするために、ちょっと私の事務所を造るときの話をしよう。私の事務所では大規模な木製建具を使っている。別段凝っているわけでもない、普通の木製框戸であるのだが、この木製扉、最近の建築業界では意外と流通していない。
独立したばかりの当時の私は、知人の建設会社社長の紹介で、とある木製建具屋さんと出会った。50歳くらいの職人上がりの社長であった。当然それなりの経験を積んでいる方であると信頼した。今後の付き合いを約束し、現場の進行に合わせいよいよ木製建具の話をする段になった。図面を見せ、打ち合わせを進めているのにどうも社長さんの反応がおかしい。リアクションがなさ過ぎるのである。それでも何とか相手の気分を諮りながら、説明を終えた。そして見積もりを依頼してみると驚く返事が返ってきたのである。なんとその社長「こんなものは作れない」というのだ。
普通の木製框戸、今のますいいリビングカンパニーでは水の収まりや防火性能などをクリアーすれば当たり前のように使っているものである。それを造れないというのだ。よくよく話を聞いてみると、造れないというのではなかった。
最近は、木製建具屋さんといえばメーカーの作る既製品の建具を問屋から取り寄せて、現場に納めるというのが通常の仕事。大工さんが作った枠の寸法を測り、その枠にぴったり収まるような建具をつくりガラスを入れ込んで枠に取り付けるというような仕事はなくなっている。ゆえにそういうものを造るような造作機械などの設備は無く、そういう腕を持つ職人さんもいないということであった。
更にいうと、社長の代になってからはこのような仕事をしたことが無いが、こういう木製建具は木の特性からどうしても取り付けた後に動くことが多く、クレームにつながる恐れがあるというのである。クレームにつながることはやりたくない、だから造れないというのだ。