- 森岡 篤
- 有限会社パルティータ 代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
日本では、100年前はおろか、20〜30年前と同じ街並み、同じ風景が、どれだけあるでしょうか。
敗戦後の復興と共に、アメリカから新しい文化が次々と入り込みました。
それは、意外なほどスムーズに受け入れられ、定着しました。見方を変えれば、それまでの文化を手放してきたとも言えます。
やがて高度成長期を迎え、国土をことごとく開発し、街も建物も破壊と再生:スクラップアンドビルドを繰り返すことになります。
気がつくと、短期間で経済的に豊かとなった日本人は、街も家も車も服もバッグも酒も、新しいもの大好きという、世界に比類のない、新しもの好きになっていました。
さて、日本人の新しもの好きは、戦後始まったことなのでしょうか。
いいえ、どうやらそうではありません。日本人は、昔から新しいものが好きで、新しいものに憧れていたのです。
例えば、古い伝説で、付喪神(つくもがみ)というのがあります。
これは、古くなった道具、日用品は、魂が宿り、妖怪となって、人の心を惑わすというのです。
このため、毎年新年には、古い道具類を路地に捨て、煤払い(すすはらい)が行われました。
古来より自然界のあらゆるものに精霊が宿ると考え、モノを大切にしてきたのですが、付喪神が現れ始めたころは大量消費的な時代となり、古い道具が不要になってきた、という背景があるようです。