子どもが生まれたとき - 保険設計・保険見直し全般 - 専門家プロファイル

田中 香津奈
かづなFP社労士事務所/株式会社フェリーチェプラン 代表取締役
東京都
CFP・社会保険労務士

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対象:保険設計・保険見直し

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子どもが生まれたとき

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かづな先生の新保険ゼミ 07.保険見直しのポイント

子どもが生まれると、必要保障額は一気に上昇しますので、しっかりとした死亡保障が必要となります。死亡保障の適切な金額は、家族構成、共働きか専業主婦(主夫)なのか、子どもの進路、現在の収入・資産状況などによって異なりますが、まずは貯蓄がどのくらいあるか確認するところからはじめましょう。家族の経済的担い手である大黒柱が亡くなったとき、貯蓄で不足する金額を保険でまかなうことができます。

一番多額の死亡保障が必要なのは、専業主婦(主夫)で子どもが幼く、持ち家でない、かつ、万一のことがあっても実家に帰らないケースです。住居費を含めた配偶者および子どもが独立するまでの生活費と教育費について、貯蓄で不足する金額を保障額に見込まなければならないからです。このような場合、生命保険の最も活用するケースとなり、優先順位は残された家族の生活費と子どもの教育費の確保です。

必要保障額については、「死亡保障はいくら必要?」にておよその目安は算出でき、必要保障額の中で算出する“生活費“は、最低限一番下の子ども(以下、末子)が独立するまでの期間、もしくは、大黒柱が働く予定である年齢まで用意する必要があります。今回は、末子が独立するまでの生活費は1ヵ月いくら必要なのかにスポットをあてて試算してみましょう。子どもが生まれたら、3,000万円~5,000万円という高額な生命保険の加入を考えがちですが、生活費は本来、毎月の給与から捻出していますので、1ヵ月単位の金額を基準にして考えます。さっそく、4つのステップで残された家族が必要な生活費を算出してみましょう。

STEP1:1ヵ月に必要な生活費の計算

現在の生活水準をもとに、残された家族が1ヵ月どのくらいの生活費を必要とするかを見積もります。残された配偶者の状況や考え方によりますが、まずは、「現在の住まいが持ち家か?賃貸か?」、「万一の場合、実家に帰るか?帰らないか?」を確認することがポイントです。どちらも後者の場合は、家賃分を含んだ生活費になり、ひとつでも前者である場合は、家賃分を差し引いた生活費となります。

STEP2:収入見込額の計算

遺族年金などの公的保障、残された配偶者の収入を見積もります。

STEP3:生命保険で用意する金額

STEP1と2の結果から不足する額が算出でき、不足額が生命保険の保険金額となります。

STEP4:生命保険はいつまで必要か?

必要な保険期間は、最低限一番下の子ども(以下、末子)が独立するまでの期間が目安となります。末子の独立年齢は18歳、20歳、22歳、と各家庭の教育方針によって異なりますが、大学卒業時の22歳が多いです。





不足する生活費を用意する場合の生命保険は、限られた期間の保障を手厚くできる「定期保険」が適しています。ただし、一定期間、一定の金額必要というわけではなく、子どもの成長とともに、必要保障額は減少するため、「定期保険」で大黒柱が亡くなった時に、保険金を一括してもらうのではなく、定期保険の1つで、毎月一定額の保険金を分割してもらう「収入保障保険」が最適です。



この場合、子どもが独立した後の死亡保障は用意できていませんので、配偶者のために、お葬式代くらいは保険で用意しておきたいとか、相続対策など、生命保険にしかないメリットを活用したいという場合には、何歳で亡くなっても死亡時に死亡保険金が支払われる「終身保険」に同時に加入しておくべきです。保険金額については、保険金の非課税枠である500万円を基準金額にするとよいでしょう。



加入目的によって、選択する商品が異なりますので、代表的な商品を確認しておきます。
貯蓄性を活かした資産形成が目的であれば、定額の「終身保険」を検討しましょう。なぜなら、保険料の払い込みが一定期間で終了するタイプ(有期払込)で加入すると、保険料払込満了時に一生涯の死亡保障にかえて、解約して一時金を受け取ったり、保険会社によっては年金受け取りを選択することができる特徴を上手に活用するためです。定額の「終身保険」は、一般勘定(主に長期の債券)で保険料を運用します。契約時の予定利率で運用するので、保険金額・解約返戻金ともに契約時に確定しています。保険料払込期間中の解約返戻率を80~90%に設定していて、払込期間が終了すると解約返戻率は100%を超えるケースが多いです。
一生涯の死亡保障を割安な保険料で加入することが目的であれば、「変額終身保険」を検討しましょう。「変額終身保険」は、特別勘定(国内外の株式および公社債)で保険料を運用するので、運用実績にもとづいて保険金額が変動する保険です。しかし、死亡保険金については、あらかじめ決められた基本保険金額が保証されていて、途中解約さえしなければ運用による損失をかぶる可能性はありません。しかも、最低保証額の予定利率は会社によって3.5%と、定額の「終身保険」に比べて高く設定されていますので、同じ条件で保険料を比較すると割安な保険料でお得ということと、特別勘定の選択次第で、インフレリスクへの対応も可能です。

教育費の確保としては、日々の家計のやりくりだけではなかなか追いつくことができない金額を必要なときに確実に貯めることができる「学資保険」を活用しましょう。「学資保険」とは、子どもの進学時に合わせて祝金や満期保険金が受け取れる教育費の準備を目的とした保険で、原則「保険料払込免除特約」が付加されています。保険料払込免除特約とは、契約者である親が死亡または高度障害状態になった場合には、その後の保険料の支払いが免除され、満期保険金は予定通り受け取ることができるものです。つまり、親の生死に関係なく、子どもの教育費を確保することができるということになります。当然この機能は預貯金にはありませんので、最大の特徴ともいえます。
また、保険と名前がついていますが、保障機能よりも貯蓄機能のほうがメインであるため、実際は預貯金とほとんど変わりません。預貯金の場合は流動性が高いために、ついつい他の目的に浪費しがちです。その点、「学資保険」は保険期間の途中で解約をしてしまうと、元本割れするデメリットがありますが、逆にそのことが功を奏し、教育費を強制的に確実に貯めることができるということでもあります。
確かに、「学資保険」は、確実に教育費を準備する代表的な商品の1つですが、低い予定利率の時代において、親の死亡保障も確保しつつ、子どもの教育費にも活用できる「低解約返戻金型終身保険」もしくは「低解約返戻金型定期保険」も学資保険の代替方法として主流になっています。いずれも親が亡くなったときのための「低解約返戻金型終身保険」もしくは「低解約返戻金型定期保険」を“短期払”で加入することによって、親が万一亡くなった時に支払われる死亡保険金を教育費の保障もしくは将来の解約返戻金による教育費の準備のいずれかを目的とした保険です。商品の種類としては多くありませんが、保険料払込期間など細かい設定がとても重要になってきます。安心して教育費を準備するのに、どの種類の保険が適切なのか、それぞれの特徴を理解して、上手に選択しましょう。

夫の医療保障に関しては、入院日数が年々短縮化している現状を踏まえ、通常の病気・ケガの入院・手術に対する保障は公的医療保険をベースにし、基本的な保障内容の1つである“入院給付金”の保障日額を最低限に抑えたうえで、がんをはじめ、白内障になった場合の“先進医療特約”の給付狙いをメインテーマにすると合理的な「医療保険」の加入となります。
また、一生のうちがんと診断されるのは、男性は約2人に1人の確率といわれています。「医療保険」でもがんへの保障はありますが、入退院を繰り返したり、入院が長期化すると保障対象にならない場合もありますので、「がん保険」も並行して検討しましょう。この場合、日本を代表する優秀な病院や医師を無料で紹介してくれるサービス狙いでの保険加入もコストパフォーマンスを上げる方法になります。

妻の医療保障に関しても夫の医療保障と同じ考え方ですが、「女性向けの医療保険」に加入することによって、原則、女性特有の病気には保障が上乗せされますので、通常の「医療保険」の入院日額を増額するより、保険料を抑えられるというメリットがあります。また、一生のうちがんと診断されるのは、女性は約2.5人に1人の確率といわれています。「医療保険」でもがんへの保障はありますが、入退院を繰り返したり、入院が長期化すると保障対象にならない場合もありますので、「がん保険」も並行して検討しましょう。
ただし、残された家族の生活費と子どもの教育費の確保を優先するあまり、妻の死亡保障がゼロになってしまうケースにおいては、掛け捨ての保険である「がん保険」の代替案として、三大疾病であるがん・急性心筋梗塞・脳卒中により所定の状態になったとき、生前に一時金が受け取れる「特定疾病終身保険」をおすすめします。1カ月あたりの保険料は高めになるものの、約3人に2人が三大疾病で亡くなる時代で、三大疾病にならなければ、通常の「終身保険」として活用できるということ、また、いざお金が必要になったときに解約しても支払保険料の8~9割が戻ってくるという保険は、死亡保障とお金がかかる医療保障を補うには合理的な保険加入といえます。

また、貯蓄が苦手な場合は、老後保障に、「個人年金保険」や「終身保険」といった資産形成の機能をもつ保険を上手に活用しましょう。特に、共働きの場合、それぞれの所得から税金(所得税)を収めることになります。税金額を計算するとき、税率を掛けて算出するのですが、得た所得の全部(総所得額)にいきなり税率を掛けで税金額を決めるわけではありません。総所得から、いろいろなものを差し引いてくれます。この差し引く分を「控除」といい、所得控除と税額控除に分けられます。所得控除は、所得から差し引く控除のことで、控除が多い分、課税される所得が減り、税金額も安くなります。その中の1つに生命保険料控除があります。生命保険料控除には「一般の生命保険料控除」、「介護医療保険料控除」、「個人年金保険料控除」の3種類があり、所得税だけでなく住民税も軽減されます。個人年金保険料控除は年間の保険料が8万円を超えると控除率が一律になるため、月々7千円前後の保険料に抑え、個人年金保険料控除狙いでの加入を検討しましょう。
「個人年金保険」のような貯蓄性のある保険は、中途解約すると不利になるのが一般的で、必要なときにすぐに換金できません。ですが、月々の保険料というかたちで、毎月口座から自動的に引き落とされ、途中で現金化したくなった場合でも“今、解約したら損”という縛りをつけることが継続の原動力になります。つまり、「個人年金保険」は強制貯蓄の有効策にもなりうるのです。

ここがポイント!

子どもが生まれたときの経済的リスクは、死亡保障と教育費の確保であるその他です。この時期は何かとお金がかかりますから、ムダ・ムラ・ムリのない保障を確保できるよう、優先順位をつけてバランスよくまかなうことが理想です。また、貯蓄が苦手な方は、老後保障に資産形成の機能をもつ保険を上手に活用しましょう。

(2015.8.31公開)  

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