京都:二条城二の丸御殿 2 - 生涯学習 - 専門家プロファイル

中舎 重之
建築家

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閲覧数順 2016年12月10日更新

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京都:二条城二の丸御殿 2

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      将軍上洛の折りの公式の対面所として用いられた大広間は、   

 前方に一段高い上段の間があり、正面に広い床の間と、その脇に  

 違い棚、向かって右脇に大きな帳台構えが配されています。     

 此の帳台構え(ちょうだいかまえ)は寝殿造りの系統をひき、   

 武者隠しとも云われる所です。これらの全てが、此処に座る人を   

 権威ずけるために配置されています。   

  大広間の金箔の障壁画は、雄大にして、雄渾です。老松の巨木   

 が内法長押を越えて、軸部の枠組みに拘束されず、天井に届かん   

 とする如く壁面全体を覆っています。狩野探幽の力作です。   

 伺候する大名を威圧すると云うより、唖然とさせたでしょう。     

  この大広間の奥にある黒書院、更に奥の白書院の座敷構えや、   

 空間の序列的構成は、いずれも大広間と同じですが、白書院は   

 休息の場にふさわしく壁画を落ち着いた水墨画としています。   

 障壁画や多くの襖絵などは、狩野探幽・尚信らの力作で、豪華な   

 桃山様式があり、美の探求者には、堪えられない場所なのです。

 

    庭に眼を向けましょう。此処は、謁見の場の庭という性格上   

 御殿の黒書院、大広間から眺める事を前提に作られています。   

 大広間から西向きに眺めると、庭の遥か前方に本丸の天守閣をも  

 遠望できたと思われます。洵に壮大で壮観な眺めと想像されます。      

  私達は庭に下りて、庭を歩くことで雰囲気を楽しみます。   

 千代田城(現在の皇居)の西の丸庭園は、歩く事を前提にして   

 設計されています。此の二条城の庭は、一段と高くなる座敷の所   

 から眺望するのが良いようです。

 

    最初に気づく事があります。庭に配列されている石が、皆一様   

 に背を伸ばして居るのです。腰が据わらず安定感を欠いています。  

 ただ嵩が高く、躯が巨きいと云うだけです。     

 これは、小堀遠州等の作庭では見られない光景です。庭の石の   

 佳さは、石の根の九分が深く埋められて、一分が地上に頭を出す   

 所が好ましいのです。いわば低姿勢の石にこそ無限のおもむきが   

 あります。許されるだけ低く構えて、それでも雄大さを失わない   

 姿にこそ石組みの醍醐味であり、静かなる偉風であります。   

 此処こそ、石を扱う原理・原則が存在します。

 

    然るに、二条城の庭には、この原理・原則が忘れ去ったかの   

 様です。 京の人々は言うでしょう。これこそが、江戸での武家の  

 大名屋敷の庭であり、京の公家文化とは違うのだと。   

 江戸の造園師の程度と腕の低さを示すものだと言うでしょう。     

 しかし、二条城の庭に限って云えば、此で良いのだと思います。    

 何故なら、二条城は京の公家達は別として、地方出の諸大名を驚   

 かし、威圧するのが目的の第一だからです。   

 此の場所で、禅や茶道を学ぶわけではありません。

 

    将軍が、三百の大・小名に謁見する政庁であり、外交の場です。   

 威風堂々たるものが有れば良いのです。   

 石の蒿があれぐらい無ければ、五尺(150cm)の高さの広縁   

 から眺めた時に、洵に貧弱になり、座敷からならば石の存在すら   

 見えないと思います。

 

    兎にも角にも、二条城は江戸幕府の京での出先官憲として、  

 朝廷への折衝と外交の場として、大いなる重きを成したのです。   

 三ツ葉葵の御紋を、京の空高く、輝やかしたのです。


    以上です。   1963年7月  記する。
 

                   2014年7月    再記する。

                                        中舎重之










 









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