皆様は「バレリーナ」と聞くと、やはり「細っそりと痩せた」イメージを思い浮かべられる方は多いのではないでしょうか?
そして、それはプロフェッショナルのバレエダンサーには、欠かす事のできない必須条件でもあります。☆彡
芸術や文化に対して、理解や意識の薄い "芸術後進国" の日本は、「バレエ」というと、お稽古事の延長である「趣味の範囲」の様なイメージに受け止めておられる方が大半ではないかと思いますが、
バレエに造詣の深いヨーロッパやロシアなどでは、「クラシックバレエ」は一般市民にも "高尚な芸術" として理解されており、職業としてキチンと成り立っているので、
バレエダンサー達に取っても、又観客に取っても、プロダンサーになるのというのは、厳しい審査を通過した、極々限られた「選ばれた人」しかなれないという意識が根にあります。《゚Д゚》☆彡
(特にロシアでのクラシックバレエダンサーとしての地位は、特別な才能とお役目を持った存在として、非常に一般市民から尊敬され愛されている存在です♡)
☆_(_☆_)_☆
その根が、バレエダンサー達自身の向上心=意識の高さに繋がり、それが彼等を応援し支えている観客の方々の意識を高め、
更にそれが又、観客の高い意識を生み、彼等がダンサー達を「本物の芸術家に育てている」事にもなっているという相互作用で、高い質を保つ伝統の芸術になっているとも言えるでしょう。☆彡☆彡☆彡
ですから舞台上で「美的感覚を損なうもの」として、バレエダンサーが太ると、役を降ろされてしまうなんて事はしばしばありますし、又「プロ」であれば、痩せている体型を維持する為の自己管理は、当然と言えば当然かもしれません。_(_^_)_
所で皆様、バレエダンサー達は何故「ガリ細」をキープする事に拘るのか、ご存知ですか?
それは「舞台」という空間で、照明を浴びて立つと、観客席からはダンサーの肉体がハレーションを起こして、太って見えてしまうからなのです。《゚Д゚》!!
ですので、ただ単に一般の方が「痩せている」という感覚基準では、バレエダンサーに取っては「舞台上で太って見える」というものになるので、舞台上で痩せて見える様に「ガリ細」が理想とされる訳なのです。
それと、もう一つは「軽やかに美しく動く(踊る)」為には、無駄なものは削ぎ落としていた方が、当然良いに決まっていますね?
バレエダンサーは、常に精神も肉体も、繊細で機敏でなくてはなりませんから・・・。
けれど、上質な美しいバレエダンサーの肉体は、無駄なものを削ぎ落としているのに、決して「貧相では無い」方が多いのは何故だと思われますか?
それは「痩せているけれど、筋肉は付くべき所にしっかり付いている」からです。(^^♪
・・・にも関わらず、本物の基礎を身に付けた質の良いダンサーは、決してゴツゴツした「筋肉質」には見えませんね?
それは何故かと申しますと、クラシックバレエは体の中心となる軸を持った上で、インナーマッスルを鍛えているのに付け加え、
足を付け根から180度開く事により、人間の持つ筋肉の中で、一番太い筋肉を持つ「体の裏側」で動きを支えるというメソッドになっている事と、
音楽に合わせ呼吸と共に、身体を究極まで柔軟に使うからで、
これが人間の体を、究極に一番長く細く見せるラインを生み出しているので、「痩せているけど、雰囲気がゴージャス」という、リッチな雰囲気を醸し出しているのだと思います。《゚Д゚》☆彡☆彡☆彡
それと共に、そのダンサーの精神的なものから来る生命力のオーラの大きさが加わると、「この世の者では無い」と思わせる様な「高尚な雰囲気」を兼ね備える訳ですね~!《゚Д゚》☆彡
それと、プロフェッショナルのバレエの世界というのは、見た目の優雅さからは想像もつかないほどの激しい動きであるダンスを長時間こなすので、肉体がタフで健康でなくてはとても持ちません。(; ̄O ̄)
その身体能力と精神力は、短距離走のランナーの様な「瞬発力」と、長距離走のランナーの様な「持久力」を、同時に兼ね備えていなくてはならないほどの、ハードなものでもあるからです。
(※これは、本格的なプロダンサーとしてのお話しです。趣味で始めようとお思いの方、心配なさらないで下さいね。(笑)
ちなみに私は現役を引退する少し前に、お医者様から「貴女の心臓はアスリートと同じなので、急にバレエを止めると逆に心臓に負担が来ますから、徐々に止めて行く様に」と、アドバイスを受けた事がありました)
(では、お話を元に戻して)
あと、バレリーナが痩せていなくてはならないもう一つの理由に、
舞台人であるバレエダンサーは、「肉感的」であってはならないという事があります。(^^;
何故なら舞台上ではダンサーの肉体がハレーションを起こすので、普段が「肉感的」なイメージの方が舞台に上がった時は、それが倍増して感じられて「下品な感じ」「いやらしい感じ」という、「美」とは感じられないものに舞台上では見えてしまうからなのです。(・□・;)
この美意識は、舞台人独特のものなのかもしれませんが、特に女性のバレリーナは「お姫様」や「妖精」など、品格が必要な役や、この世のものではない神秘的な役を演じたりする事が多い為、
女性的ではあっても、肉感的な性(セクシャリティ)を感じさせない、「中性的な清潔感」という様なものも、素材として持ち合わせていなくてはならないからです。
バレエも、時にとてもセクシャリティを要求される役がありますが、それを踊る方の素材である肉体が、磨き上げられて絞り込まれていない「清潔感の無い肉感的なイメージ」ですと、バレエの持つ「究極の美」からは遠のいてしまうのです。
バレエの場合のセクシャリティとしての表現の理想は、直接的にリアルな肉体からでは無く、表現として「演技」と「オーラ」から感じさせなくてはならない「高尚」な芸術なのです。
例えば以前、私は知り合いのヨーロッパのバレエダンサーから、
「将来はプリマになるだろうと思える、とても才能に恵まれた生徒がバレエ学校にいたのだが、大人になって来た時に、彼女のバストが物凄く大きくなってしまった為に、退学してしまった女性がいる」と聞いた事がありましたが、
この例の様に、バレエの「理想的なプロポーション」とは、そういうものなのですね。 ( ; _ ; )
あともう一つ、プリマバレリーナが太ってはならないという中に、「相手役の男性の為」という事があります。(^^ゞ
それは「パ・ド・ドゥ」と言って、男女が二人で踊るシーンがメインになる事が殆どのクラシックバレエでは、女性は男性に支えられて踊る中に「リフト」という「男性に持ち上げてもらう」という振り付けが多いからです。(^^;
ですから、女性はできるだけ体重が軽い方が、男性ダンサーに取っては望ましいのですね~。(^^♪
それではこの流れから、次回では、その「リフト」の多い、極めつけの「バレエ作品」を、写真と共にご紹介させて頂こうと思います。(^^♪
ライモンダ・・・・・大園エリカ
「ライモンダ」は、このバレエの主役である、ハンガリーの伯爵家の娘の名前です。
婚約者が遠征している時に、彼女の美しさに惹かれたアブデラフマンという異国人が、彼女を拐おうとするのですが、その時戦争から帰還した婚約者に救われます。
この写真は、その二人の結婚式で踊られる、ライモンダのソロのシーンです。
このコラムの執筆専門家
- 大園 エリカ
- (東京都 / クラシックバレエ教師・振付家)
- 舞踊家(クラシックバレエ) 元プロバレリーナ
natural & elegance
長年プリマとして国内外で活躍。現役引退後は後進の指導とバレエ作品の振付けに専念。バレエ衣裳や頭飾りを作り続けて得たセンスを生かし、自由な発想でのオリジナルデザインの洋服や小物等を作る事と読書が趣味。著書に「人生の奥行き」(文芸社) 2003年