- 栗原 守
- 有限会社光設計
- 東京都
- 建築家
対象:住宅設計・構造
珪藻土
何といっても、初めはこの珪藻土のお話からになります。1993年の夏、商品名BLパウダーという珪藻土を知りました。府中市白糸台の小さな社長一人、社員0の会社に行き、この材料の説明と実物の施工例を見て、この素材のもつさまざまな可能性に魅力を感じました。たまたまそのとき、井の頭公園の近くで、内装に漆喰を予定していた住宅が工事中で、建築主の協力のもとに漆喰を取り止め、内装の壁と天井をこのBLパウダー仕上げに変更したのですが、この工事が珪藻土との最初の出会いとなりました。以後、ほとんどの住まいで、この素材を使うようになりました。住まいを自然の状態で呼吸させるということに関心を持っていましたので、私にとってはとても魅力ある素材だった訳です。当時はまだ、シックハウスの問題は表面化していなくて、珪藻土という名前もほとんど知られていなくて、「けいもど」なんて呼ぶ建築主さんもいたりしました。いまでこそ、いろいろな住宅誌の紙面を賑わしていて、家づくりを計画いる人は知らない人がいないような素材も15年前は、ごく一部の人たちしか知らなかったのです。光設計では、BLパウダーにモミ殻の粉と切りワラを加えて左官屋さんに練ってもらい、こて塗りするというのがお決まりの仕様になっています。なぜ、モミ殻の粉と切りワラを加えるのかというと、BLパウダーは、こてむらが出来やすいということと、水の引き加減の違いで、表面がざらついた感じになったりすることが多いような気が個人的にはしていて、それを少しでも気にならないようにするために...というのが主な理由です。また仕上がりの感じもモミ殻の粉と切りワラを加えると、灰汁で自然に着色されてわら半紙のような素朴なテクスチュアーになりますので、それも気に入っている大きな理由でもあります。施工の下地はプラスターボードをビス止めするようにします。現在はいろいろな会社からたくさんの珪藻土の壁材が発売されています。ここ数年はBLパウダーだけでなく、例えば珪藻土の最老舗ヤブ原のケイソウウテイカやケイソウライトといった製品、日本珪藻土(株)のエコクイーンなどの製品も適材適所を考えながら使っています。珪藻土は建材として、とても優れた素材ですが、塗り壁ですので、傷がつきやすいという短所もあります。その辺のところは設計でうまくカバーしてあげればよい訳で、もっと住まいの中で使っていきたい素材の一つです。