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河野 英仁
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インド特許法の基礎(第14回)(2)~特許発明の実施報告制度~

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インド特許法の基礎(第14回)(2)

~特許発明の実施報告制度~

 

2014年7月22日

執筆者 河野特許事務所 

弁理士 安田 恵

 

 

6.実施報告書の記載例

 実施報告書には特許発明の実施の有無,不実施の理由,製造販売数量,価格等を記載する必要があるが,その具体的な記載方法についての手引き等は無い。どの程度詳細に記載すれば良いのかどうか迷う所であるが,多くの場合,数行程度の簡単な記載で実施報告が行われている。

 

(1)実施している場合の記載例

 比較的内容が具体的なケースであれば,特許製品の実施数量:XXXユニット,価格:XXルピー,特許製品がインドのXX会社において製造されている旨などが記載されている(例えば特許第211994号)。

 簡単なものでは,実施数量,価格等を記載せず,特許発明が単に国内製造で使用されている旨を記載しただけのものもある(例えば特許第240547号,”Used for manufacturing internally”)。また,ライセンスの存在を簡単に記載したものもある(例えば特許第191592号,”There have been licenses or sub-licenses granted during the year for these said patents”)。

 

 また,実施「有」にチェックされているが,具体的な数量,価格等を記載せず,情報がまだ用意できておらず,求めに応じて情報を提供する旨を記載したものもある(例えば,特許第249271号,“Information not readily available. Information will be provided if asked for”)。仮に情報提供が不十分でも,長官からの求めに応じて,特許発明の実施の程度に関する情報を提供する意思があることを記載することによって(第146条(1)),情報提供の記載不足に対するセーフティーネットを張っているものと思われる。

 

(2)実施していない場合の記載例

 特許発明を実施していない場合,その理由を記載する必要があるが,正直に特に理由が無い旨を記載して実施報告を行う例も多く見られる(例えば特許第216883号,”Nothing in particular”)。また,研究開発中と記載しただけのもの(例えば特許第239596号,”Under research and development”),特許発明を開発しているとだけ記載したもの(例えば特許第249371号,”Developing the patented invention”),顧客との契約交渉中である旨を記載したもの(例えば,第249718号,”Commercial agreement with a customer not reached. Discussions continue.”)など,いずれも1~2行程度の簡単な説明である。

 

 また,実施報告対象の特許の数が多い場合であって,実施状況が共通するものについては,共通の実施報告書に報告対象の特許番号一覧を添付して提出することも行われている(例えば,特許第183712号等)。

 

7.実施報告書の提出状況

 図2は2010年以降の実施報告書の提出状況を示す棒グラフ[1]である。横軸は各暦年を示し,縦軸は各暦年における有効特許に対する実施報告書の提出率を示している。有効に存在する特許の約6割~8割について実施報告書が提出されている。具体的には2009-2010年度の実施報告書の提出率は約64%,2010-2011年度は約86%,2011-2012年度は約70%,2012-2013年度は約64%である。

 また,提出された実施報告書の内,特許発明の実施が報告された割合は約2割前後である。具体的には2009-2010年度の実施率は約17%,2010-2011年度は約20%,2011-2012年度は約27%,2012-2013年度は約22%である。特許発明の実施の有無に拘わらず,実施報告書が提出されている状況が分かる。

 

 

図2:実施報告書の提出状況

 

8.特許発明の実施報告制度に関する条文及び規則

 特許発明の実施報告制度に関する主な条文[2]及び規則[3]は次の通りである。

インド特許法

インド特許規則

第146 条 特許権者からの情報を要求する長官権限

(1) 長官は,特許の存続期間中はいつでも,書面による告知をもって特許権者又は排他的か若しくは非排他的かを問わず実施権者に対して,当該告知の日から2 月以内又は長官の許可する付加期間内に,インドにおける特許発明の商業的実施の程度について当該告知書に明示された情報又は定期的陳述書を長官に提供すべき旨を要求することができる。

 

(2) (1)の規定を害することなく,各特許権者及び(排他的か若しくは非排他的かを問わず)各実施権者は,所定の方法,様式,及び間隔(6 月以上)をもって,インドにおける当該特許発明の商業規模での実施の程度に関する陳述書を提出しなければならない。

 

 

 

(3) 長官は,(1)又は(2)に基づいて受領した情報を所定の方法により公開することができる。

 

第122 条 情報提供の拒絶又は懈怠

(1) 何人も次に掲げるものの提供を拒絶し又は怠ったときは,その者は,1,000,000 ルピー以下の罰金に処する。

(a) 中央政府に対して,その者が第100 条(5)に基づいて提供を要する何らかの情報

(b) 長官に対して,その者が第146 条により若しくは基づいて提供を要する何らかの情報又は陳述書

(2) (1)にいう情報の提供を要する何人も,虚偽である情報若しくは陳述書,及びその者が虚偽であることを知り若しくはそのように信じる理由を有し又は真正と信じない情報若しくは陳述書を提出したときは,その者は,6 月以下の禁固若しくは罰金に処し,又はこれらを併科する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

規則131 第146条(2)に基づき提出を求められる陳述書の様式及び提出方法

(1) 第146条(2)に基づく各特許権者及び各実施権者は,様式27により陳述書を提出しなければならず,当該陳述書は特許権者若しくは実施権者,又はその者により委任された代理人が適法に認証しなければならない。

(2) (1)にいう陳述書は,各暦年について各年末から3月以内に提出しなければならない。

 

(3) 長官は,第146条(1)又は(2)に基づいて長官が受領した情報を公開することができる。

 

以上

 



特許に関するお問い合わせは河野特許事務所まで

 

 


[1] “Annual Report 2012-2013”(http://ipindia.gov.in/cgpdtm/AnnualReport_English_2012_2013.pdf),24頁に記載の数値データを用いて作成した。

[2] 特許庁 外国産業財産権情報

インド特許法:http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/india/tokkyo.pdf

[3] 特許庁 外国産業財産権情報

インド特許規則http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/india/tokkyo_kisoku.pdf

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