インド特許法の基礎(第8回)(2)~特許出願(4)~ - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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インド特許法の基礎(第8回)(2)~特許出願(4)~

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インド特許法の基礎(第8回)(2)

~特許出願(4)~ 

2014年3月18日

執筆者 河野特許事務所

弁理士 安田 恵


6.考察

(1)審決について

 審判部は特許法第16条の規定から、「親出願が複数の発明(単一性の要件を満たさない複数の発明概念)を含む」ことを分割出願の必須要件として導いているが、第16条の条文から明らかとは言えず、この要件の導出手法に関しては疑問が残る。

 しかし、親出願に係る発明と同一の発明について分割出願することを認めると、アクセプタンス期間が実質的に延長される結果となり、第21条(1)の法定期間を設けた趣旨が没却する点を考慮すると、分割出願の要件として「親出願が複数の発明(単一性の要件を満たさない複数の発明概念)を含む」が求められる理由が理解できる。審判部の結論は妥当なものと考える。

 

(2)実務上の留意点

(a)日本等で実務上行われる分割出願の活用事例がインドにおいて認められるか否かを検討する。

(ⅰ)審査のやり直しを求めて行う分割出願

 従前の我が国のように、親出願と同一発明を分割出願することによって、実質的に審査のやり直しを求めることが考えられる。

 しかし、インドにおいては、上述の審決例から明らかなように、親出願と同一発明を分割出願として出願することはできない。

 

(ⅱ)補正の制限を解除することを目的とした分割出願

 インドでは、権利の部分放棄、訂正若しくは釈明、クレームの減縮補正を目的とした補正しか認められていない(第59条(1))。非減縮補正を行いたい場合、つまり発明特定事項の一部を削除又は変更する補正を行いたい場合、かかる発明について分割出願を行うことが考えられる。

 

 例えば、親出願の出願当初のメインクレームが発明特定事項A及びBを含んでいた場合、審査の過程で発明特定事項A,B及びCを含む発明に減縮補正することはできる。しかし、原則として、メインクレームの発明特定事項をA及びDに補正することはできない。そこで発明特定事項A及びDを含む発明を分割出願することが考えられる。

 

 分割出願が認められるかどうかは、出願当初の元の発明(発明特定事項A及びB)と、分割出願候補の発明(発明特定事項A及びD)が単一の発明概念を構成しているか否かに因る。両発明が単一の発明概念を構成しておらず、アクセプタンス期間の実質的な延長にも当たらない場合、かかる発明(発明特定事項A及びD)の分割出願を行うことができると考える。

 一方、両発明が単一の発明概念を構成している場合、分割出願は認められない。なお、このように発明の内容によっては、補正も分割出願も認められない事態に陥る可能性がある。インド出願に当たっては、新規性及び進歩性違反の拒絶通知に対して、減縮補正で対応できるようにクレームドラフティングしておくことが望ましい。

 

(ⅲ)親出願に係る発明を減縮させた発明の分割出願

 我が国においては、親出願について拒絶の決定がなされる可能性がある場合、親出願に係る発明を減縮させた発明(以下、減縮発明と呼ぶ。)について分割出願を行い、審査を係属させることも考えられる。このような分割出願が可能であれば、例えば、分割出願において確実な権利化を狙うと共に、親出願において広い権利範囲を争うといったことができる。

 しかし、インドにおいては、かかる減縮発明の分割出願は認められない可能性が高い。親出願及び分割出願の発明が単一の発明概念を構成しており、親出願の完全明細書に複数の発明(単一性の要件を満たしていない複数の発明概念)が含まれていない場合、第16条の要件を満たさない。また、単一の発明概念を構成する一群の発明に対して、アクセプタンス期間が付与されていると考えると、かかる分割出願を認めることは、アクセプタンス期間(第21条(1))の実質的な延長を認めることになる。

 

(ⅳ)上位概念発明の権利化を目的とした分割出願

 我が国においては、親出願に係る発明の特許性が認められたものの、出願人がより広い権利範囲を所望するような場合、親出願に係る発明の上位概念発明を分割出願することが考えられる。

 しかし、インドにおいては、かかる上位概念発明の分割出願は認められない可能性が高い。親出願及び分割出願の発明が単一の発明概念を構成しており、親出願の完全明細書に複数の発明(単一性の要件を満たしていない複数の発明概念)が含まれていない場合、第16条の要件を満たさない。また、単一の発明概念を構成する一群の発明に対して、アクセプタンス期間が付与されていると考えると、かかる分割出願を認める場合も、アクセプタンス期間(第21条(1))の実質的な延長を認めることになる。

 

(b)以上の通り、親出願及び分割出願に係る両発明が同一で無い場合、分割出願として認められるか否かについては、審査官の裁量によるところもあり、一般的な解は無い。分割出願が認められるべきか否かは、画一的に判断せず、①分割の趣旨に添った出願であるかどうか、②親出願が複数の発明(単一性の要件を満たさない複数の発明概念)を含んでいるかどうか、③アクセプタンス期間の実質的な延長に当たらないかどうかを総合的に考慮することによって、判断すべきである。また、分割出願の適格性が否定された場合も、上述の観点から反論を行うことが有効と考える。

 

7.備考

 発明の単一性及び分割出願に関連する条文(1970年特許法[1])は次の通りである。

第10 条 明細書の内容

・・・

(5) 完全明細書の1 又は2 以上のクレームは,単一の発明,又は単一の発明概念を構成するように連結した一群の発明に係るものとし,明確かつ簡潔であり,また,明細書に開示された事項を適正に基礎としなければならない。

第16 条 出願の分割に関する命令を発する長官権限

(1) 本法に基づいて特許出願を行った者は,特許付与前にいつでも,その者が望む限り,又は完全明細書のクレームが2 以上の発明に係るものであるとの理由により長官が提起した異論を除くために,最初に述べた出願について既に提出済みの仮明細書又は完全明細書に開示された発明について,新たな出願をすることができる。

(2) (1)に基づいて新たにされる出願には,完全明細書を添付しなければならない。ただし,当該完全明細書には,最初に述べた出願について提出された完全明細書に実質的に開示されていない如何なる事項も,一切包含してはならない。

(3) 長官は,原出願又は新たにされた出願の何れかについて提出された完全明細書に関して,これら完全明細書の何れも他の完全明細書にクレームされている何れかの事項のクレームを包含しないことを確実にするために必要な補正を要求することができる。

説明-本法の適用上,新たにされた出願及びそれに添付された完全明細書については,最初に述べた出願がされた日に提出されたものとみなし,また新たにされた出願については,独立の出願としてこれを取り扱い,所定の期間内に審査請求が提出されたときに審査する。

 

以上



[1] 特許庁 外国産業財産権情報

インド特許法:http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/india/tokkyo.pdf

 

 

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