インド特許法の基礎(第7回)(1):特許出願 - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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インド特許法の基礎(第7回)(1):特許出願

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インド特許法の基礎(第7回)(1)

~特許出願(3)~

 

2014年2月7日

執筆者 河野特許事務所

弁理士 安田 恵

 

1.はじめに

 特許出願の分割はパリ条約において認められており(パリ条約4条G)、日本特許法と同様、インド特許法においても分割出願の規定(第16条)が設けられている。特許出願人は、一の特許出願に二以上の発明が含まれていた場合、特許付与前であれば、この特許出願を二以上の特許出願に分割することができる。特許出願の分割は、発明の単一性違反(第10条(5))を指摘する審査報告(拒絶理由通知)に対する応答時はもちろん、出願人が自発的に行うこともできる。分割された特許出願は、元の特許出願の出願日又は優先日の利益を有する(パリ条約4条G(2))。

 一見するとインド特許法における分割出願制度は、日本の分割出願制度に類似しているが、インド特許法における分割出願の要件は、日本特許法のものと異なる点が多い。パリ条約4条G(2)によれば、「各同盟国は,その分割を認める場合の条件を定めることができる」と規定されており、各同盟国は、パリ条約の規定を遵守することを条件に、分割の要件を独自に規定することが許されている。インド特許法においては、日本特許法に存在しないアクセプタンス期間の規定(第21条)が置かれている等、法律の構造が日本特許法と異なっていることも相まって、上記「二以上の発明」の捉え方が大きく異なる。以下、分割出願の要件を説明する。

 

2.関連条文

 発明の単一性及び分割出願に関連する条文及び規則は次表の通りである。

The Patent Act, 1970[1]

1970年特許法[2]

10. Contents of specifications.

・・・

(5) The claim or claims of a complete specification shall relate to a

single invention, or to a group of inventions linked so as to form a single

inventive concept, shall be clear and succinct and shall be fairly based

on the matter disclosed in the specification.

第10 条 明細書の内容

・・・

(5) 完全明細書の1 又は2 以上のクレームは,単一の発明,又は単一の発明概念を構成するように連結した一群の発明に係るものとし,明確かつ簡潔であり,また,明細書に開示された事項を適正に基礎としなければならない。

11. Priority dates of claims of a complete specification.

・・・

(4) Where the complete specification has been filed in pursuance of a further application made by virtue of sub-section (1) of section 16 and the claim is fairly based on the matter disclosed in any of the earlier specifications, provisional or complete, as the case may be, the priority date of that claim shall be the date of the filing of that specification

in which the matter was first disclosed.

第11 条 完全明細書のクレームの優先日

・・・

 

(4) 完全明細書が第16 条(1)によって新たにされた出願について提出され,かつ,そのクレームが,仮明細書か又は場合により完全明細書かを問わず,先に提出された明細書の何れかに開示された事項を適正に基礎とするときは,当該クレームの優先日は当該事項が最初に開示された明細書の提出日とする。

16. Power of Controller to make orders respecting division of application.

(1) A person who has made an application for a patent under this Act may, at any time before the grant of the patent, if he so desires, or with a view to remedy the objection raised by the Controller on the ground that the claims of the complete specification relate to more than one invention, file a further application in respect of an invention disclosed in the provisional or complete specification already filed in respect of the first mentioned application.

(2) The further application under sub-section (1) shall be accompanied

by a complete specification, but such complete specification shall not include any matter not in substance disclosed in the complete specification filed in pursuance of the first mentioned application.

(3) The Controller may require such amendment of the complete specification filed in pursuance of either the original or the further application as may be necessary to ensure that neither of the said complete specifications includes a claim for any matter claimed in the other.

Explanation. - For the purposes of this Act, the further application and the complete specification accompanying it shall be deemed to have been filed on the date on which the first mentioned application had been filed, and the further application shall be proceeded with as a substantive application and be examined when the request for examination is filed within the prescribed period.

第16 条 出願の分割に関する命令を発する長官権限

(1) 本法に基づいて特許出願を行った者は,特許付与前にいつでも,その者が望む限り,又は完全明細書のクレームが2 以上の発明に係るものであるとの理由により長官が提起した異論を除くために,最初に述べた出願について既に提出済みの仮明細書又は完全明細書に開示された発明について,新たな出願をすることができる。

 

 

 

 

(2) (1)に基づいて新たにされる出願には,完全明細書を添付しなければならない。ただし,当該完全明細書には,最初に述べた出願について提出された完全明細書に実質的に開示されていない如何なる事項も,一切包含してはならない。

 

 

(3) 長官は,原出願又は新たにされた出願の何れかについて提出された完全明細書に関して,これら完全明細書の何れも他の完全明細書にクレームされている何れかの事項のクレームを包含しないことを確実にするために必要な補正を要求することができる。

 

説明-本法の適用上,新たにされた出願及びそれに添付された完全明細書については,最初に述べた出願がされた日に提出されたものとみなし,また新たにされた出願については,独立の出願としてこれを取り扱い,所定の期間内に審査請求が提出されたときに審査する。

 

3.分割出願の趣旨

 一の特許出願の完全明細書に記載されたクレームは、単一の発明、又は単一の発明概念を構成するように連結した一群の発明に係るものでなければならない(第10条(5))。発明の単一性の要件を満たさない特許出願は拒絶される(第15条)。

 インド特許法における分割出願の規定は、かかる単一性要件違反の瑕疵を治癒し、一の特許出願に含まれる複数の発明(複数の発明概念)を保護するために設けられたものである。即ち、分割出願の規定が意図するところは、

(a)単一性要件違反の瑕疵を治癒すること

(b)一の特許出願に開示された複数の発明(複数の発明概念)を保護するために特許出願の分割を可能にすること

(c)分割された出願に、親出願の優先日の利益を認めること

 にある[3]

 分割出願が、特許性の再審査、アクセプタンス期間の実質的延長等に使用されることは意図されていない。

 



[1] 特許庁 外国産業財産権情報

India Patent Act:http://www.jpo.go.jp/shiryou_e/s_sonota_e/fips_e/pdf/india/patents_act.pdf

[2] 特許庁 外国産業財産権情報

インド特許法:http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/india/tokkyo.pdf

 

[3] OA/6/2010/PT/KOL




⇒第2回に続く

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