国税通則法65条4項の「正当な理由」 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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国税通則法65条4項の「正当な理由」

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国税通則法65条4項の「正当な理由」

  第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかったことについて「正当な理由」があると認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額((注)過少申告税・無申告加算税・延滞税など)からその「正当な理由」があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。

 

最高裁平成16・7・20

法人税法(平成15年改正前のもの)2条10号に規定する同族会社に当たる有限会社の代表者で出資持分の大半を有する社員が,同会社に対して3455億円を超える金員を無利息,無期限,無担保で貸し付けたことに所得税法(平成13年改正前のもの)157条の規定を適用され,利息相当分の雑所得があるとして所得税の増額更正を受けた場合において,上記貸付けは,不合理,不自然な経済活動であって,上記社員が経営責任を果たすために実行したとは認め難いものであること,税務当局に寄せられた相談事例及び職務執行の際に生じた疑義についての回答及び解説を国税局職員が編集又は監修をした解説書には,会社へ無利息貸付けをした代表者個人に所得税が課されることはない旨の記述があり,上記社員の顧問税理士等の税務担当者において税務当局が個人から法人への無利息貸付けに所得税を課さない旨の見解を採るものと解したため,前記利息相当分の雑所得はないとする申告がされたが,上記記述は,代表者の経営責任の観点から無利息貸付けに社会的,経済的に相当な理由があることを前提とするものであることなど判示の事情の下においては,前記利息相当分が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて国税通則法65条4項にいう正当な理由があるとは認められない。

 

最高裁平成18・4・20

1 納税申告手続を委任された税理士が隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合,納税者において当該税理士が上記行為を行うこと若しくは行ったことを認識し,又は容易に認識することができ,法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず,納税者においてこれを防止せずに上記行為が行われ,それに基づいて過少申告がされたときには,上記行為を納税者本人の行為と同視することができ,重加算税を賦課することができるが,当該税理士の選任又は監督につき納税者に何らかの落ち度があるというだけでは足りない。
2 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付したにもかかわらず,同税理士が上記行為をして納税資金を着服したものであり,納税者において同税理士が隠ぺい,仮装行為を行うことを容易に予測し得たということはできず,上記申告後も同税理士による上記行為を認識した事実もなく,容易に認識し得たともいえないという事情の下では,納税者に,税務署職員等から示された税額よりも相当低い税額で済むとの同税理士の言葉を信じ,確定申告書の内容を確認しなかったなどの落ち度があるとしても,同税理士の上記行為を納税者本人の行為と同視することはできず,国税通則法68条1項所定の重加算税賦課の要件を満たすものということはできない。
3 国税通則法65条4項にいう「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいう。
4 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で虚偽の記載をした確定申告書を提出するなどして過少申告をした場合において,税務署職員等から示された税額よりも相当低い税額で済むとの同税理士の言葉を信じてそれ以上の調査確認をせず,確定申告書の内容を確認しなかったなど,納税者本人に落ち度があり,他方,上記確定申告書を受理した税務署職員が同税理士による脱税行為に加担した事実は認められないなど判示の事情の下では,納税者本人に対する過少申告加算税の賦課に関し,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできない。

 

最高裁平成18・4・25

1 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付したにもかかわらず,同税理士が上記行為をして納税資金を着服したものであり,納税者において同税理士が隠ぺい,仮装行為を行うことを容易に予測し得たということはできず,上記申告後も同税理士による上記行為を認識した事実もなく,容易に認識し得たともいえないという事情の下では,納税者に,税務相談で教示された税額よりも相当低い税額で済むとの同税理士の言葉を安易に信じ,確定申告書の確認をしなかったなどの落ち度があるとしても,同税理士の上記行為を納税者本人の行為と同視することはできず,国税通則法68条1項所定の重加算税賦課の要件を満たすものということはできない。
2 偽りその他不正の行為により税額を免れた国税に関し,当該行為により免れた税額に相当する部分について修正申告がされたとしても,当該国税になお更正すべき税額があるときは,国税通則法70条5項所定の期間内において更正をすることができる。
3 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で虚偽の記載をした確定申告書を提出するなどして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付していたこと,確定申告書を受理した税務署職員が収賄の上で同税理士の上記不正行為に共謀加担し,それがなければ上記不正行為は不可能であったともいえることなど判示の事情の下では,納税者本人に対する過少申告加算税の賦課に関し,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認められる。

 

最高裁平成18・10・24(外国親会社ストック・オプション事件)

納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を「一時所得」として申告したところ,同権利行使益が「給与所得」に当たるとして増額更正がされた場合において,

(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係る課税上の取扱いに関しては,法令上特別の定めが置かれていないところ,課税庁においては,かつて,上記ストックオプションの権利行使益を一時所得として取り扱い,課税庁の職員が監修等をした公刊物でもその旨の見解が述べられていたこと,

(2)課税庁においては,平成10年分の所得税の確定申告の時期以降,上記の課税上の取扱いを変更し,給与所得として統一的に取り扱うようになったが,その変更をした時点では通達によりこれを明示することなく,平成14年6月の所得税基本通達の改正によって初めて変更後の取扱いを通達に明記したこと,

(3)上記ストックオプションの権利行使益の所得区分に関する所得税法の解釈問題については,一時所得とする見解にも相応の論拠があったこと

など判示の事情の下では,納税者が前記権利行使益を一時所得として申告し,同権利行使益が給与所得に当たるものとしては税額の計算の基礎とされていなかったことについて,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」がある。

(同旨、最高裁平成18・11・16、最高裁平成19・7・6)

 

最高裁平成24・1・16

1 一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に該当するためには,それが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえることを要する。
2 死亡保険金の受取人を法人とし,満期保険金の受取人を当該法人の代表者とする養老保険契約の保険料を当該法人が支払い,満期保険金を当該代表者が受け取った場合において,上記保険料のうち当該代表者に対する役員報酬として損金経理がされその給与として課税された部分がその2分の1である一方,その余の部分が当該法人における保険料として損金経理がされたものであるなど判示の事情の下では,上記満期保険金に係る当該代表者の一時所得の金額の計算上,後者の部分は所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に当たらない。
3 一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に該当するためにはそれが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえることを要するにもかかわらず,これと異なる法令解釈に基づいて行われた過少申告について,課税実務上の運用や税務当局等の示した見解の有無などの点につき十分に審理することなく,関係する通達の文言の一部や上記の法令解釈と同旨の見解を採る市販の解説書の記載のみをもって,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとした原審の判断には,違法がある。

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