地震の被災者の話しを聞くと「下から突き上げるような衝撃を受けた」と言われます。阪神大震災における縦方向の揺れは、330galが計測されています。981galが1Gですので0.3G程の重力加速度となります。
高速エレベータの上下移動の重力加速度は85gal程度ですので、エレベータの加速度の4倍程度の大きさです。これでは突き上げる様な衝撃と感じても仕方のない衝撃です。
しかしこれで建物が壊れるかと言うとそうでもありません。建物は地震が発生しなくても、常に地球から1Gの力で引っ張られています。その為建築基準法上の基準として、上下方向には1.5倍程度の余裕を見込む事が法律で定められています。つまり、981galに330galが加わっても、1311galとなり、981galの1.5倍の1471galなでには届きません。つまり、阪神大震災では縦揺れで倒壊した建物は、計算上ではなかった事になります。
一方横揺れに対しては、建物は脆弱です。建物は自重も含めてですが、大体20t~30ton程度の重量を支えていますが、横方向の力に対しては2t/程度の力で損傷が始まります。つまり横方向には縦方向の1/10程度の耐力しか無いのです。
そのため、免震装置は建物の欠点である横揺れに対応した装置です。転がり免震の場合、横方向の揺れを1/10〜1/15程度まで抑える事ができます。
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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