中国商標判例紹介:中国における商標の識別性判断(第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国商標判例紹介:中国における商標の識別性判断(第2回)

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中国商標判例紹介:中国における商標の識別性判断

~使用による識別力の立証~

 

河野特許事務所 2013年9月3日 執筆者:弁理士 河野 英仁

 

ベストバイサービス公司

                           再審請求人(一審原告、二審上訴人)

v.

中華人民共和国国家工商行政管理総局商標評審委員会

                           再審被請求人(一審被告、二審被上訴人)

 

 

4.最高人民法院の判断

結論:一審過程で提出した証拠を考慮すれば、出願商標は顕著な識別力を有する

(1)新たな証拠について

 一審過程において、原告は裁判所に、原告が中国大陸で出願商標を実際に使用していること、当該商標を用いて商業活動に従事していることを示す雑誌報道等の75の証拠を提出した。証拠によれば、原告は世界500強企業として、北米家電小売りランキング第1となっている。また原告は2007年1月中国第1号店を上海に設け、経営を開始し、メディアの幅広い報道及び業界の注目を浴びた。その際原告は経営活動及び広告宣伝中に出願商標を使用した。

 

 最高人民法院は、商標拒絶に係る復審案件においては、出願商標の登録手続はまだ完成しておらず、復審は、訴訟過程中の事実状態をも含み、これらの証拠は商標登録を拒絶するか否か考慮すべきものであると述べた。そして本案において、一審過程中に提出した大量の証拠は、出願商標の顕著性判断に大きな影響を与えるものであり、これらを考慮しないとすれば、原告は救済の機会を失うことになると述べた。

 

 以上のことから、最高人民法院は、一審法院が正当な理由無く新たな証拠であると認定し、当該証拠を採用しなかった判断は妥当ではなく、出願商標が顕著特徴を具備するか否かを判断するには、これらの証拠を考慮すべきであると判示した。

 

(2)識別性の有無

 商標の主要機能は商品またはサービスの出所の識別にあり、当該機能を実現すべく、出願商標は顕著な特徴を有していなければならない。人民法院が、商標の権利付与を確認する行政案件を審理する場合、係争商標の指定商品の関連する公衆の通常認識に基づき、全体的に商標が顕著特徴を有するか否かに対し審理判断を行わなければならない。そして最高人民法院は、標章中含まれる叙述性要素が、商標全体としての顕著特徴に影響を与えず、かつ、関連公衆が全体的として商品の出所を識別できるのであれば、それは顕著特徴を有すると認定しなければならないと述べた。

 

 本案において、出願商標は英語の単語「BEST」、「BUY」及び黄色のラベルの四角枠構成であり、その中の「BEST」及び「BUY」は指定役務に対し、一定の叙述性を有するが、ラベル図形及び鮮やかな色を併せて考慮すれば、全体的に顕著な特徴を有する

 

 また、同時に新たに明らかになった事実に基づけば、出願商標は国際的に比較的高い知名度を有し、かつ出願商標は中国で実際に使用されており、使用を通じて一定の知名度を有している。最高人民法院は、上述した要素を総合的に勘案し、出願商標は、サービスの出所を識別するに至る機能を有しており、関連公衆はそれをもってサービスの出所を識別することができると結論づけた。

 

 最高人民法院は、出願商標の識別性について全体的な判断を行っておらず、かつ、原告が新たに提出した証拠を考慮せず識別性なしとした評審委員会の決定、第1審及び第2審判決を取り消す判決を下した。

 

 

5.結論

 最高人民法院は、原告の主張を認め、評審委員会の決定、北京市第一中級人民法院及び北京市高級人民法院の判決を取り消した。

 

 

6.コメント

 良いネーミングであり、また需用者に受け入れられながら、商標法上「識別力なし」として拒絶されるケースが多い。使用による顕著性を主張することができる余地があれば反論を行い、権利化を図ることが望まれる。本事件ではどのような証拠が必要か、また人民法院がどのようなロジックで標章の識別力の有無を判断しているのか参考となる判例である。

 

 ベストバイの商標は、「BEST BUY」のみだけでは権利化は困難であるが、黄色のラベル上に「BEST BUY」と表記されている商標全体としてみれば識別力有りと判断された。また、判決では触れられていないが、本商標は右下方向にわずかに傾斜していることがわかる。米国の現実の店舗での商標も同様に右下方向にラベルが傾いている。この点も識別力の一つとして主張しても良かったのではないかと考える。

 

 次に証拠の提出期間であるが、評審委員会への復審請求時には十分な証拠を収集できない恐れがある。すなわち、商標局から拒絶の通知を受けた場合、15日以内に評審委員会に復審請求を行う必要がある(中国商標法第32条第1項[1])。復審請求後3ヵ月以内であれば、証拠補充は可能であるが(中国商標法実施条例第32条[2])、依然として証拠収集の時間は限られている。

 

 原則として証拠提出の期間は上記期間に限られるが、本事件では例外的に一審の途中段階で提出した証拠が採用された。識別力の立証に際しては、証拠が決め手となるため、当然復審請求時に徹底した証拠収集を行うと共に、後の訴訟段階で有力な証拠が発見された場合は、積極的に人民法院に当該証拠を提出すべきである。

以上



[1] 中国商標法第32条第1項

第三十二条 出願を拒絶し公告しない商標については、商標局は商標登録出願人に書面で通知しなければならない。商標登録出願人はこの決定に不服があるときは、通知を受領した日から15 日以内に、商標評審委員会に復審を請求することができる。商標評審委員会は決定を下し、出願人に書面で通知する。

[2] 中国商標法実施条例第32条

第三十二条 当事者は復審の請求を提出してから又は答弁してから関係証拠を補充する必がある場合、請求書類又は答弁書にその旨を声明し、請求書類又は答弁書を提出してから三ヶ月以内に提出しなければならない。期間内に提出しなかった場合、関係証拠を補充しないものと見なす。

 

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