第三次改正中国商標法ガイド (第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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第三次改正中国商標法ガイド (第1回)

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第三次改正中国商標法ガイド (第1回)

主要改正内容と日本企業が取るべき対策

河野特許事務所 2013年9月13日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

 

 

 2013年8月30日第三次改正中国商標法は第12回全国人民代表大会常務委員会を通過し、来年5月1日より施行されることとなった。

 

 

 

 今回の法改正はより低コストで、スピーディーに商標権を付与し、また第三者の抜け駆け登録の防止、悪質な商標権侵害の抑制を主目的とするものである。

 

 

 

 以下に主な法改正内容と日本企業が取るべき対策を解説する。

 

 

 

1.音声商標の登録

 

 改正商標法では音声が登録を受けることができる商標の一つとして規定された(改正中国商標法第8条)。具体的な音声の特定方法を含む出願方式は、以降公布される商標法実施条例を待つほかないが、来年5月1日の施行に向けて準備を進めておくことが重要である。

 

 

 

 当然ではあるが、中国国歌、軍歌等は登録を受けることができない(改正中国商標法第11条第1項)。

 

 

 

 なお、改正案では、単一色の商標であっても使用による識別力が生じた場合、例外的に商標登録を受けることができると規定していたが、色彩に独占を認めるのは妥当でないことから当該規定の成立は見送られた。

 

 

 

2.代理機構による悪意による出願の禁止

 

 現在中国では転売目的で他人のブランドを先に登録する等の悪意による商標登録が多い。改正法では、商標代理機構の活動を規範し、また、悪意商標登録を抑制するために、以下の規定を設けることとした。これにより、悪意による登録を減少させようとするものである。

 

 

 

改正中国商標法第19条

 

 委託人が出願する商標が本法の規定により登録できない可能性がある場合、商標代理機構は明確に委託人に、その旨を伝えなければならない。

 

 商標代理機構は、委託人が申請する商標が商標法第15条(授権代理人による出願、または、提携者による先出願)及び第32条(他人の先権利の存在)の規定に該当することを知った、または、知るべきである場合、その委託を受けてはならない。

 

 商標代理機構は、その出願商標に係る代理サービスを除き、その他の商標を申請してはならない。

 

 

 

 すなわち、商標代理機構が、委託を受けた商標が第三者の商標を先取りするものであることに気付いた場合等は、代理してはならないと規定したものである。そして、商標代理機構が当該規定に反した場合、罰金等の処罰を受けることとなる(改正中国商標法第69条)。商標登録手続を専門に行う代理機構であれば、海外の著名ブランド、産地等について一定の知識を有しているはずである。明らかに悪意でこれらのブランド、産地を登録しようとする者からの依頼を受け付けないシステムとすることで、商標の先取りが抑制されることが期待される。

 

 

 

3. 馳名商標認定機関の明確化

 

 馳名商標(日本の著名商標に相当)は、個別具体的案件での認定、需要に基づく認定及び受動認定の原則に基づき認定されることが明確化された(改正商標法第14条)。この馳名商標の認定は以下の条件下で、特定の機関のみが行うことができる。

 

 

 

(1)商標局による認定

 

 商標登録の審査、工商行政管理部門が商標違法案件を調査処罰する過程において、当事者が第13条(馳名商標の保護)の規定に基づき主張した権利である場合、商標局は審査、処理案件の必要性に基づき、商標の馳名状況について認定を行うことができる(改正中国商標法第14条第2項)。

 

 

 

(2)評審委員会による認定

 

 商標争議処理過程において、当事者は本法第13条の規定に基づき主張した権利である場合、商標評審委員会は処理案件の必要性に基づき、商標の馳名状況について認定を行うことができる(改正中国商標法第14条第3項)。

 

 

 

(3)人民法院による認定

 

 商標の民事、行政案件の審理過程において、当事者は本法第13条の規定に基づき主張した権利である場合、最高人民法院が指定した人民法院は審理案件の必要性に基づき、商標の馳名状況について認定を行うことができる(改正中国商標法第14条第4項)。

 

 

 

 また、生産、経営者は、「馳名商標」の字句を商品、商品包装または容器上、或いは、公告宣伝、展覧及びその他商業活動中に用いてはならないと規定された(改正中国商標法第14条第4項)。

 

 

 

 このように改正により、通常の商標よりも手厚く保護される馳名商標(改正中国商標法第13条)の認定は、法律により定められた機関であり、かつ、特定の要件下でのみ認められることが明確化された。従って、現在では地方政府が独自に馳名商標の認定処理を行っているが、今後はこのような独自の認定は、商標法による「馳名商標」とは無関係となる。しかも馳名商標の名称を商品等に付した場合は、違法となり罰金の対象となる(改正中国商標法第53条)ので注意が必要である。

 

 

 

4.業務提携にある第三者の先取り防止

 

 業務提携にある第三者が無断で先に登録してしまう事態を防止すべく新たに15条第2項が新設された。

 

 

 

改正中国商標法第15条第2項

 

 授権されていない代理人又は代表者が自らの名義により被代理人又は被代表者の商標について登録出願を行い、また被代理人又は被代表者が異議を申し立てた場合には、その出願を拒絶しかつその使用を禁止する。

 

 同一商品または類似商品についての出願商標と、他人の在先使用の未登録商標とが同一または類似し,商標出願人が、当該他人と前項に規定する以外の契約、業務取引関係、または、その他の関係があり、明らかに当該他人の商標の存在を知っており、該他人が異議を申し立てた場合,登録しない。

 

 

 

 例えば、中国企業と契約をして取引しており、当該中国企業が日本企業に無断で商標登録した場合、当該登録を取り消すことができる。実際に紛争が生じた場合は、取引関係があったことを示す証拠、相手方が当該商標を知っていたことの証拠を収集できるか否かがポイントとなる。

 

 

 

5.一商標多区分制の導入

 

 中国は長らく一商標一区分制を採用していたが、国際的調和の観点から、今回の改正により一商標多区分制が導入された(改正中国商標法第22条)。これにより、出願コストを低減することができる。ただし、中国では商品・役務の区分が他国と比較し細分化されているので、従来と同じく慎重に選定することが重要となる。

 

 

 

6. 審査期間についての期限に関する規定の増加

 

 現在の商標実務では登録までに相当の期間を要する。特に評審委員会での復審及び争議期間は非常に長期にわたる。そこで、各種処理期間について期限を設けることとしたものである。具体的な期限は以下のとおりである。

 

 

 

(1)商標局の出願審査

 

 商標局の審査期限を9ヵ月とする(改正中国商標法第28条)。また従来審査官はいきなり拒絶査定を行っていたが、今回の改正により出願人には意見書及び補正所の提出機会が与えられるようになった(改正中国商標法第29条)。具体的な反論期間は商標法に明記されていないが、今後公表される実施条例で明確化されるものと思われる。

 

 

 

(2)評審委員会の拒絶決定に対する審理期間

 

 商標評審委員会の、商標局による拒絶査定決定に対する復審の期限を9ヵ月とする(改正中国商標法第34条)。ただし、特殊状況により延長する場合、国務院工商行政管理部門の許可を経て3ヵ月延長することができる。

 

 

 

 これにより、評審委員会による合議体結果を早期に知ることができる。なお、拒絶査定後、評審委員会へ復審請求するまでの期間は、法改正後も15のままである。従って、拒絶査定を受けた日本企業は速やかに復審を請求するか否かの判断を行う必要がある。

 

 

 

(3)商標局の異議申立に対する審理期間

 

 商標局は、公告日満了日から12ヶ月以内に登録を許可するか否かの決定を下さなければならず、かつ書面にて異議申立人及び被異議申立人に通知しなければならない。特殊状況により延長する場合、国務院工商行政管理部門の許可を経て6ヵ月延長することができる(改正中国商標法第35条)。

 

 

 

(4)商標局がなした異議決定に対する評審委員会の審理期間

 

 商標局がなした登録をしない決定について被異議申立人は不服の場合、通知を受領した日から15日以内に、商標評審委員会に復審を請求することができる。評審委員会は、申請の日から12ヶ月以内に復審の決定を下さなければならず、かつ書面にて異議申立人及び被異議申立人に通知しなければならない。特殊状況により延長する場合、国務院工商行政管理部門の許可を経て6ヵ月延長することができる(改正中国商標法第35条)。

 

 

 

 なお、無効宣告及び取り消し審判が請求なされた場合の審理期間も定められているが、これらの点については後述する。また異議申立人は異議の決定に不服がある場合は、評審委員会に対する不服申立ではなく、別途無効宣告請求を行う必要がある。

 

 

 

7.異議申立の制限と、異議申立による権利発生の遅延防止

 

(1)異議申立の制限

 

 改正前は何人も異議申立が可能であったが一定の制限が課されるようになった(改正中国商標法第33条)。

 

 

 

 初歩審定された商標について、その公告の日から3 ヵ月以内に、先権利者、利害関係人は、商標法第13条第2項及び第3項(馳名商標)、第15条(授権代理人による出願、または、提携者による先出願)、第16条第1項(地理的表示)、第30条(他人の登録商標と同一類似)、第31条(先願主義)、第32条(他人の先権利)の規定に違反すると判断する場合、異議申立を行うことができる。このように、先権利者または利害関係人のみが異議申立を行うことができるようになった。

 

 

 

 ただし、第10条(国旗など)、第11条(識別力なし)、第12条(機能的立体商標)の規定に反する場合は、何人も商標局に異議を申し立てることができる。なお、期間を満了しても異議申立がなかった場合、登録を許可し商標登録証が交付され公告される。

 

 

 

(2)異議申立による権利発生の遅延防止

 

 改正前は、公告後異議申し立てされ、さらに評審委員会、行政訴訟を経た場合、勝訴したとしても商標権の発生時期が大幅にずれ込むという問題点があった。そこで法改正により、審理を経て異議が成立せず商標登録を行う場合、商標登録出願人が商標独占権を取得する期間は、初歩審査公告の3ヵ月の期間満了日から起算することとした(改正中国商標法第36条)。

 

 

 

 すなわち、公告後3ヵ月経過の時まで遡って商標権が成立することとなる。ただし、公告後から異議決定までの間に善意で同一または類似範囲にある商標を使用していた第三者に対しては、遡及効力は生じない。もっとも悪意のある場合は、その間の使用行為に伴う損害賠償責任を負うこととなる(改正中国商標法第36条第2項)。

 

 

 

8.商標の更新手続

 

 従来の更新出願制度は廃止され日本と同じく更新制度が導入された。登録商標の存続期間が満了し、継続して使用する必要があるときは、商標権者は、期間満了前12ヵ月以内に規定に従い、更新手続をしなければならない。従来は6月前から更新出願が可能であったが、12ヵ月前から更新手続ができるようになった(改正中国商標法第40条)。

 

 なおこの期間に手続できなかった場合、6 ヵ月の延長期間が与えられる。

 

 

 

9.商標の譲渡制限

 

 商標を譲渡する場合、契約を商標局に届け出る必要があるが、さらに以下の条件が課されることとなった。

 

 登録商標を譲渡する場合、商標権者は、同一商品上に登録されている類似商標、または、類似商品上に登録されている同一または類似商標に対し、一括譲渡しなければならない(改正中国商標法第42条第2項)。すなわち、類似関係にある商標については、譲渡人と譲受人との間で出所の混同が生じる恐れがある事から、一括して譲渡させることとしたものである。

 

 また容易に混乱またはその他好ましくない影響を与える譲渡に対し、商標局は許可してはならず、書面にて申請人に通知し、理由を説明しなければならない(改正中国商標法第42条第3項)。

 

(第2回へ続く)

 

 

 

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