早わかり中国特許:第27回 中国特許民事訴訟の基礎 - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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早わかり中国特許:第27回 中国特許民事訴訟の基礎

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

第27回 中国特許民事訴訟の基礎

河野特許事務所 2013年8月27日 執筆者:弁理士 河野 英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2013年7月号掲載)

 

1.概要

 中国において特許権侵害を発見した場合、司法アプローチと、行政アプローチのいずれかを取ることができる。専利法第60条は以下のとおり規定している。

 

専利法第60条

 特許権者の許諾を得ずにその特許を実施し、すなわち特許権を侵害し、紛争を引き起こした場合は、・・(略)・・特許権者又は利害関係者は人民法院に提訴することができ、また特許業務管理部門に処理を申請することができる。特許業務管理部門が処理する場合、侵害行為が成立すると認定したときは、侵害者に直ちに侵害行為を停止するよう命じることができる。

 

 このように、専利法第60条では特許権者の自由な二者択一の選択により、人民法院へ提訴するか、あるいは専利業務管理部門に処理を申請することができる。これはDual Track Systemとよばれ、民事訴訟を提起し人民法院にて解決する以外に、中国各地に設けられた特許業務管理部門に侵害行為の停止処理を求めることができる。

 

 明らかな外観設計特許の模倣の場合を除き、発明特許訴訟、実用新型特許訴訟では法的、技術的に高度な判断が要求され、また外観設計特許訴訟においても高度な類否判断が要求されるため、行政ルートではなく、民事訴訟により事件が処理されることが多い。以下では中国民事訴訟の基礎的事項について解説する。

 

2.関連法規

 既に解説した専利法、実施細則及び司法解釈に加えて中国民事訴訟では中国民法通則及び中国民事訴訟法が適用される。概要は以下のとおりである。

 

(1)中国民法通則

 中国民法通則は、公民及び法人の合法的民事権益を保障すべく民事関係を調整した法律である(中国民法通則第1条)。中国民法通則第118条には知的財産権に関し、以下のとおり規定している。

 

中国民法通則第118条

「公民及び法人の著作権(版権)、特許権、商標権、発見権、発明権、及びその他の技術成果権が、剽窃、改竄、盗用等の侵害を受けたときには、公民及び法人は、侵害の差止め、影響の除去及び損害の賠償を請求する権利を有する。」

 

 すなわち、日本国特許法が日本国民法の特別法としての位置付けであるのと同様に、中国専利法も、中国民法通則の特別法という位置づけになる。

 

(2)中国民事訴訟法

 中国民事訴訟法は憲法に基づき、民事裁判の経験及び実際の状況を踏まえて制定された法律であり、人民法院における審理手続の詳細を規定している。中国民事訴訟法は2012831日に大規模な改正が行われており、本稿も改正内容に基づき解説を行う。

 

3.人民法院の構成

 中国の人民法院は基層人民法院、中級人民法院、高級人民法院及び最高人民法院の4層構造をとる(人民法院組織法第2条並びに第18条乃至第33条)。北京にある最高人民法院を頂点に、各省・直轄市等を含め31の高級人民法院、300以上の中級人民法院、3000以上の基層人民法院から構成される。

 

 知的財産権に関する民事訴訟は原則として中級人民法院が第1審となる。管轄については後述するが、中国では知的財産権に関する民事訴訟が多い事から、知的財産権に関する事件については172の中級人民法院が受理可能であり、また全ての高級人民法院が知的財産権に関わる事件を処理する事ができる[1]。最高人民法院にも1996年2つの知的財産部門が設立され、毎年多くの事件を処理している。また、近年の知的財産権民事訴訟の急増を受けて一定の事件については基層人民法院が知的財産権訴訟を取り扱うようになった。

 

 特許事件についてはより高度の専門性が要求されるため、全ての高級人民法院が特許部門を設けて対応に当たっており、また中級人民法院においても71の法院が対応可能である。また特許紛争案件の管轄について規定する「最高人民法院による特許紛争案件審理の法律適用問題に関する若干規定」(法釈[2001]第21号)の第2条が改正され、基層人民法院も特許事件の第1審として管轄権を有するようになった。本司法解釈が制定された当時は特許紛争案件も少なかったが、近年の特許紛争案件の増加に伴い、一定の審理能力を有する基層人民法院も第1審の処理を行うことができるようにしたものである。本司法解釈は2013年4月15日から施行されている。

 

4.裁判官

(1)第1審

 裁判官(中国では審判員または法官という)の構成については民事訴訟法第39条に規定がある。

 

民事訴訟法第39条

第1項 人民法院が民事第一審を審理する場合、裁判官及び陪審員が共同して、または、裁判官が合議体を構成する。合議体の数は奇数でなければならない。

第3項 陪審員が陪審職務を執行する場合、裁判官と同等の権利及び義務を有する。

 

 原則として3名の裁判官による合議体審理が行われる。また事件の複雑性により5名または7名の合議体が構成される。合議廷の裁判長は、院長または廷長が1名の裁判官を指名して担当させる。院長または廷長が裁判に参加する場合には、院長または廷長が裁判長となる(中国民事訴訟法第41条)。合議廷が事件を評議する場合には、少数が多数に従う原則を実行する(中国民事訴訟法第42条)。

 

 また、特許訴訟事件は技術的なサポートが必要とされることから、2名の裁判官のほかに、1名の陪審員が加わって合議体を構成することが多い。中国においては、当事者の請求の有無にかかわらず、陪審員が、裁判官と同等の権限を有する立場で審理に参加することが多い(民事訴訟法第39条第3項)。技術的範囲の属否、被疑侵害製品の範囲確定、均等の問題等、特許事件においては技術的に高度な判断が要求されるケースが多い。このような場合、技術専門家、学者等を招聘し陪審員として審理に参加させ、適切な判断を行っている。

 

(2)第2審

 控訴審である第二審における合議体については、民事訴訟法第40条第1項に規定されている。

 

 

→続きは、月刊ザ・ローヤーズ7月号をご覧ください。

 


 [1] 2006年のデータであり、知的財産権を取り扱う中級人民法院の数は増加傾向にある。

 

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