- 増井 真也
- 建築部門代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
九州では豪雨による被害が続いている。気候変動による被害が顕在化しているが、これは住宅の作り方にも影響を与える、というより変化せざるを得ない状況にある。日本の住宅は基礎の上に木造住宅を作ることがスタンダードであることはすべての人の共通認識であろう。しかしながらここまで亜熱帯気候的な状況になってくると、そもそも木造住宅を地面に直接作ること自体も、見直さなければいけないような気もするのである。
近代に入る以前の日本の住宅地は比較的高台と呼ばれるようなところに展開していた。今私の会社があるような平地は、いわゆる田畑の用地であり、大水などの被害は住宅とは関係がなかった。しかし今は違う。所狭しと住宅が建ち、平地も高台もないのである。確かに昔とは比べ物にならないような大掛かりな堤防も敷設されている。でも今回の九州ではそれも壊れてしまっている。またもや想定外、気象庁はこれまで経験したことの無いようなという別の表現を使っていたが、要するに同じことが起きてしまったのだ。
今回の事例を見ても、せめて1階だけでもRC(鉄筋コンクリート)であったら、助かる住宅は多いだろう。延べ床面積が30坪程度の木造のコストと比較すると、軟弱地盤の杭工事の増額を考慮しなければ、同じ規模であればおそらく500万円増というところであろう。30坪の住宅を1800万円で作ることを考えていれば、それが2300万円程度で水害にも強くなるわけである。(軟弱地盤の場合はコンクリートの重さに耐えられるようにするための杭工事に多くの費用を要するので注意が必要。)
写真は2008年にますいいで建てた埼玉県川口市本町の住宅である。この住宅はきっと荒川が氾濫しても無事なのであろう。