- 堀 紳一朗
- 忘蹄庵一級建築士事務所 代表
- 東京都
- 一級建築士
対象:造園・ガーデニング
庭園の外側の景色を庭園の内側の要素に取り入れることを借景と言いますが、京都の庭師が「生け捕り」と称するように、単に庭の外の景色が見えるだけでは借景とは言えず、生きたままの風景を取り込むデザイン的技量が必要です。
築地塀や刈込垣などを見切りに用いて必要な遠景のみを選び出し、中景の樹木の柱や枝葉によって遠景を生け捕ることとなります。その中景が前景と遠景を繋ぐことにより、狭い庭も奥行の広い庭へと変貌します。
写真は借景の庭として有名な円通寺庭園を撮影したものですが、ここではさらに、建物の柱と長押、広縁が借景した庭を切り取り、建築の内部に庭を取り込むと言ったいわば入れ子状態を見ることが出来ます。円通寺庭園は宅地開発により「借景」の対象自体が崩壊しつつあります。写真は2006年に撮影したものですが、近年訪れた際には生垣奥の様相がだいぶ変わっていて残念に思いました。