
- 増井 真也
- 建築部門代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
東京都北区にて進行中のNさんの家では、足場の解体工事が完了した。このプロジェクトでは、もともと建っていた住宅の和室の部分を保存し構造補強と仕上げの補修を施して再利用すると共に、それ以外の部分に関しては解体し2世帯+お姉さんという大家族が住むことが出来るスペースを作ることとしている。奥に見える茶色のボリュームが新築棟で、手前の平屋の屋根が保存部分である。庭にある薪の木も残されている。
土地には様々な記憶が宿っている。歴史や地勢によるもの、そして家族の暮らしによるものなど思い出せばきりがないだろう。しかし、多くの場合その記憶は解体工事と共に消し去られてしまう。場合によっては庭の樹木から、何まで跡形もなくなってしまうこともある。でもね、記憶や歴史を消し去って、一体あなたは誰なの、の感覚が私にはある。残せるものは出来るだけ残せばよいのだ。積み重ねながら生きていく、人の暮らしとはそんなものだろう。