- 市村 光之
- キャリアリーブス 代表
- 東京都
- キャリアカウンセラー
対象:キャリアプラン
- 宇江野 加子
- (キャリアカウンセラー)
- 冨永 のむ子
- (パーソナルコーチ)
キャリア研究者のハンセンは、1997年に発表した「統合的人生設計」において、人生には《仕事》、《愛》、《学習》、《余暇》の4つの要素があると言います。「愛」は家庭であり子育てです。「余暇」は趣味やボランティア活動など、仕事以外に従事する活動です。
この4要素を統合して、どのような生き方をしたいのか、が最も重要な課題であり、「生きかた」の視点をキャリア概念の根底に据えるべきという考え方です。仕事とプライベートの調和(ワーク・ライフ・バランス)、さらにはトレード・オフによるバランスを越えて、それらを統合することが大切なのです。
●価値観の変容
実際、仕事だけをして成功して、豊かで幸せな人生が送れるのでしょうか。日本の昭和時代を振り返ると、1970年代までの高度経済成長の時代、これら4要素のうち、「仕事」は最も大きな要素でした。日本の企業社会では、終身雇用・年功序列のシステムが産業発展の原動力でした。その環境下、20代は平社員でも、30代前半で係長、30代後半で課長、40代で部長・・・と昇格し、給料も毎年少しずつ上がりました。キャリアパスは、終身雇用を前提として企業が引いた昇進というレールでした。
日々の糧を得ることが精一杯だった戦後復興期以来、テレビ・洗濯機・冷蔵庫、マイカーにマイホームと物質的豊かさが生活の豊かさであり、人々の価値であり、多くの方々が昇進と賃金アップでそれらを手に入れられた時代です。若いときは低賃金の高残業で補助的な仕事ばかりでも、約束された昇進のステップと仕事の機会が見えていて大きな不満にはなりませんでした。数年おきに地方を転々としても、辞令一つで家族と離れ単身赴任を強いられても、会社のためであり、家族のためと頑張れました。
しかし、平成の今はどうでしょう。1980年代以降、産業・企業の成長のカーブが鈍化すると、大量採用した社員に割り振るポストが不足し、年功序列や終身雇用制度は崩壊しつつあります。つまり、昭和の世代のように身を粉にして働いても、必ずしも賃金は上がらないし、場合によってはリストラされるかもしれないのです。家庭のためと毎日夜遅くまで働いて、その結果、妻や子どもとコミュニケーションが取れなくなって、離婚になる悲しいケースもたくさんあります。物質的に満たされた今の若者にとって、物質的な欲求を追い求めるだけが価値でもありません。
実際、日本を代表するあるIT大企業で新卒リクルーティングを指揮する方から伺った話では、2000年代半ばから、管理職にはなりたくない、給料も生活できる分貰えればいい、その分自分のプライベートな時間を大事にしたい、という新卒が増えたそうです。そういえば、家事や育児に熱心な男性も増えましたね。
(次回に続く)
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