今回のエキシビションで面白かったのは、その参加型の傾向がより一層強まっていたことです。よりダイレクトな参加とでも言うのでしょうか。霧で充満した部屋に入る体験とか、コンクリートの彫刻が迷路のように並んだスペースを歩き回ったりします。
最も面白かったのは、彼の作品のトレードマーク的な鋳造された人体の彫刻が、実はこのギャラリーから半径1.5mの範囲のあちこちの建物の屋上に設置され、それをギャラリーのバルコニースペースや窓から発見しながら見るという作品でした。実際、かなり遠くのビルの屋上に設置されているのが見られたりします。
ここで面白いのが、ひとつは人体のフィギュア(形象)がいかに他のオブジェとはっきりと識別されて見えるかということに気が付くこと。もうひとつは、都市のスカイラインを意識させるのにたいへん効果的であったことです。東京などで都市の広がりを感じることもたまにあります。高層ビルの屋上展望階に上ったときなど、はるか上空から下界を眺める視点の非日常性を楽しみながら、またその行為が非日常的であるがゆえ、都市の広がりやスカイラインを認識することになります。このエキシビションで見せてくれたことは、高い場所に上るという、特権的ニュアンスを持つ行為を経ずとも、建物の3階くらいの視点からでも、都市の広がりやスカイラインの認識を高められ、それを楽しむことができるということでした。実際大勢の人たちが、指を刺しながら人型のオブジェをさがして楽しんでいました。
(このコラムは、弊社ブログにも記載されました)