- 山本 俊樹
- インテグリティ株式会社
- ファイナンシャルプランナー
対象:家計・ライフプラン
- 吉野 充巨
- (ファイナンシャルプランナー)
- 吉野 充巨
- (ファイナンシャルプランナー)
オバマ新大統領への期待から、オバマ大統領の実行力へ
米国においては、可決されたばかりの総額7870億ドル(72兆円)緊急景気対策がどの程度即効性をもたらすものかが注目される。しかし、これだけで危機脱出というわけには行かない。これから議論される金融安定化法の成立とビック3への対応が大きく米国経済の行方を左右するであろう。
さて、足元はどのような状況であろうか。最も注目されている雇用と住宅市場を中心に見ていく。
【雇用統計】
まず、益々深刻化する雇用であるが、戦後最悪の状況が続いている。1月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比▲59.8万人となり、記録的な減少が続いている。今回のリセッション局面(07年12月〜)の累計では357.2万人と過去の景気後退局面を大幅に上回る雇用減少となっている。昨年のリーマンショック以降の5ヶ月でその7割の約250万人の減少となり、米国経済が急激に悪化している状況がわかる。1月の▲59.8万人というのは1974年12月以来、約34年ぶりの減少、08年通年では▲297万人と過去最高、などまさに記録尽くしである。
部門別では製造業部門が▲20.7万人(前月▲16.2万人)と大幅に増加、建設部門も▲11.1万人。業種別では小売業▲4.5万人、金融部門▲4.2万人、ビジネス・サービス部門▲12.1万人などとなっている。注目の自動車関連では▲4.5万人(前月▲4.7万人)と減少幅は相変わらず高水準である。今後、ビック3のリストラが本格化することを考えるとさらに減少幅が拡大するものと思われる。
今回の景気対策では、将来的に350万人の雇用を創出するとしているが、このまま減少傾向が続けば09年だけでも500万人が職を失うと想定される。
【住宅市場】
長期金利が低下し住宅ローンの金利も過去最低(30年固定金利で5%台)水準となり、賃貸住宅の賃料より住宅ローンの金利負担の方が低くなるという現象が現れ始め、中古住宅市場が底打ちするのではないかという見方が出てきている。
しかし、実際の統計数値は相変わらず過去最低値を更新し続けている。
11月のケース・シスラー20都市住宅価格指数は前年比▲18.2%まで下落、10都市指数で▲19.1%と統計以来(20都市は2000年、10都市は1987年以来)最大の下落率となっている。2006年のピーク時からは、20都市で▲25.1%、10都市で▲26.6%。最大の下落はフェニックス(アリゾナ州、グランドキャニオンで有名、半導体、通信、IT、航空宇宙など屈指の産業地帯でもある)で前年比▲32.9%、ラスベガス▲31.6%、サンフランシスコ▲30.8%と軒並み3割以上の下落を記録している。
その他、住宅価格を示す各指数は全て下落を続けている。これら住宅価格下落の大きな要因となっているのが、中古物件を中心とする過剰在庫である。住宅ローンの返済ができなくなり、自ら売却する人が増加、また金融機関の差し押さえ物件も急増しており、在庫が益々増加する傾向にある。一方で、金融機関の信用収縮が進み、住宅ローンの提供が滞っていることや、雇用情勢の悪化でそもそも住宅などの購入意欲が激減していることなどが要因となっている。
こうした状況に対してやはり政策での対応が急務となっている。対応策としては、差し押さえ抑制策と住宅ローン収縮対策が中心となっている。