力をつける学生インターンシップとは - 採用戦略 - 専門家プロファイル

井門 隆夫
株式会社井門観光研究所 代表取締役
東京都
マーケティングプランナー

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閲覧数順 2024年04月25日更新

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力をつける学生インターンシップとは

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大学で学んだことは社会で役立つのか

近年、大学の入試改革が進められています。選択式だけではなく、記述式の設問を設けて思考力を見ようという取組みですが、文部科学省ではこうしたテーマを「高大接続」と呼び、高校までに考える力を養成し、その力を大学受験でも評価しようとしています。同様に、重要なテーマとして「大学と社会の接続」があります。大学時代に培った力を社会で評価してもらおうという意味ですが、残念ながら、こちらは、まだ具体的な取組みや、問題解決の糸口が見いだせているとは言えません。大学で「社会で有為な人材を育てる」ことは、大切なことです。しかし、大学と社会の間にはまだ大きな溝があるような気がします。

特に問題となるのが、「ジェネリック・スキル」といわれる、社会で必要な汎用的な能力の養成です。大学での学修のメインとなるのは、こうした能力よりも、リベラルアーツに代表される教養や研究に必要な専門知識です。しかし、「大学1年の6月で卒業時の成績がほぼ決定する」(東京理科大調べ)という調査もあります。こうした教養や知識を習得した能力(リテラシー)が成績として表されるのだとしたら、1年の6月で決まってしまうような成績を得るための大学4年間の学びというのは一体何なのでしょうか。そうした成績を企業はあまり参考にしていないのだとすれば、大学での学びとは、あえて申せば研究者を養成するためのものであり、実業の世界に巣立つ者にとっては、単に大卒という肩書とブランドを得るための時間の消費と言われても仕方ない面もあるのかもしれません。

企業の採用ページを見ると、欲しい人材には概ねどの企業も「何事にも主体的にチャレンジできる人」、「柔軟性をもち周囲と協調できる人」、「地味な仕事でもコツコツと努力できる人」というようなフレーズが書かれています。ではこうした能力はどこで養成されるのでしょうか。

それは家庭という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、世界各国に先駆け生産年齢人口が減り始めた日本では、労働者の平均報酬が減り続けています。そのため、両親ともに働き、かといって祖父母は近くにいない環境のなかで子供が育ちました。これは今後も同じだと思います。こうした環境で、家庭だけにジェネリック・スキル養成の役割を担わせるのは酷のような気もします。

役割論はさておき、このままでは、今後これまで以上に、「社会で生きるための行動特性」を十分に得ないまま社会に巣立っていき、社会に厳しさに耐えかねて会社を辞めることを繰り返し、報酬が伸びないために、家庭を持つ自信も持てない若者が益々増えていく悪循環にはまるおそれを感じています。

これまでこうしたジェネリック・スキルを養う場として機能してきたのが「体育会」等の部活だと思います。企業は、体育会出身者を好んで採用しますが、それは、単に人脈があるからというだけではなく、上下関係の厳しい組織に所属し、時として理不尽な経験も積んだからこそ得られる社会での耐性やコミュニケーション能力を備えているからに他なりません。ただ、全員が全員、体育会出身者ではありませんし、むしろ体育会は少数派です。

このままではまずい。そう思った大学や企業が近年行い始めたのが「インターンシップ」です。インターンシップとは、ひと言で言えば「就業体験」で、学生のうちに企業等で就業を体験することにより、社会との接続をよりシームレスにしていこうというものです。しかし、具体的な話になると、このインターンシップの定義や目的が定まっていないために、大学と企業間に大きな溝を作り、相互不信を招く結果になっているような気がします。これから、このインターンシップに関する議論と実績を高めていくことが社会に求められているのです。

インターンシップの内容と目的

インターンシップにはいくつか内容と目的があります。

①業界体験型

これは、1~5日間程度、おもに大学生の夏休み期間中に職場を体験するもので、同様のプログラムは中学や高校でも行われています。プログラムでは、いろいろな業務を体験できるようになっているので、学生の満足度も高く、一時的には皆がハッピーになります。しかし、私からするとこれは「大学生向けのキッザニア」で、「与えられる」ことしか知らない子供に向けて、その職場の「良い面だけ」を伝える体験にすぎません。例えば、ホテル業だとすれば、「憧れ」のフロントやベル、ブライダルなども体験できるでしょう。しかし、それはあくまで「お客様」としての体験なのです。あくまで、良い学生をみつけたい企業側は学生を「お客様」として迎えるのです。費用をいただくわけでもない企業側としてはメリットが少なく、そのため、「事実上の採用の一環」として取組み、会社説明会と合わせて実施している場合も少なくありません(大学3年生向けに就活サイトで紹介されるもののほとんどがこのタイプです)。ただこうした体験だけで採用して、入社後に企業も学生もたいへんな思いをしないか、不安が残ります(特に学生にとって、これだけの体験で企業イメージを作って入社すると、入社後にミスマッチを起こす確率が高いような気がします)。

②採用直結型

このタイプは米国等の海外でも行われていて、具体的に就職を希望する業界の企業で、社員同様に3か月以上報酬をもらいながら働くものです。目的は、学生と企業がお互いに適正を試し、確かめ合うためです。3か月以上と期間が長いのも、1つの職務を覚えて完遂するためには最低このくらいの日数がかかるためです。しかし、ごく最近でこそ、日本人学生でも大学を休学をしてこうしたインターンシップに参加したり、大学でも長期インターンシップの科目を設け、国内外に派遣するケースも生まれるようになってきているようですが、まだまだこのタイプを採用している大学や企業を日本では聞いたことがありません。世界的に見れば、インターンシップとは、このタイプを指す場合がほとんどで、このタイプが増えることが理想です。

③アルバイト型

一方、日本の大学では科目履修の関係で、3か月以上もインターンシップで出かけることは事実上不可能です。そのため、近年増えているのが、おもに夏休みの2~4週間程度、就業体験をするタイプです。大学で単位を出す代わりに無償としているケースも少なくありませんが、企業側としては、それで不満を言われては困るため、有償としているケースも多いように思えます。特に、夏休みに人手が不足するホテル業等では願ってもない人材確保の手段になります。しかし、事前学習で「インターン生としての役割や態度」も教えているとは思うのですが、アルバイト以外の就労経験のない学生には充分に理解されず、「アルバイトとの違いがわからない」、「きちんと指導してもらえなかった」、「希望する仕事ができなかった」、「職場は想像以上に忙しく、ぎすぎすしている」というような学生の不満の声が挙がるのです。一方の企業としても、「モチベーションの低い学生が来て困る」、「途中でやめてしまう」、「働くという意味をはき違えている」、「職場は厳しい場所だという認識がない」という悩みが絶えません。そして、「志望する業界・企業へ行ってみたが、想像と違ったので、志望を変更したい」という最悪の結果を生んでいるのです。いったい何のためにインターンシップを実施しているのでしょう。このタイプが、大学と企業の間の溝や不信感を生んでしまっているような気がします。

④社会人基礎力養成型

このように、タイプ②に取り組めない日本の大学においては、①と③が主流になっています。これが現在の大学生インターンシップの現状なのですが、残念ながら、これでは、誰のためにもならないような気がしているのです。大学と企業も疲弊すると同時に、最も不幸なのは「育つことのできない学生」です。その根本的な要因としては、学生自身が「自分の未熟さ」を自覚てきていないことが挙げられます。そのために①や③で十分だと誤解しているのです。まずは、それでは「社会で通じない」ことを教える必要があるのですが、教室でいくら教えてもなかなかて理解してもらうのは難しいと思います。そこで、自分が成長し、ジェネリック・スキルを伸ばすためのインターンシップがあってよいと思うのです。それが、社会人基礎力を養成するため、インパクトのある体験のできる「ハイ・インパクト・プラクティス」としてのこのタイプです。ただし、ここで重要なのは、「就職志望」と「ジェネリック・スキルの養成」の目的はいったん分ける必要があることです。就職志望先はいったん置いておいて、興味のある場所・業界で「ジェネリック・スキルの養成」を目的として2~4週間のインターンシップを体験します。③と同様、ある程度の報酬があってもよいと思いますが、スキルを養成するためのプログラム構築や指導、滞在のための宿舎や食事の提供等に費用もかかることから報酬と相殺し、無償とするのが一般的かと思います。むしろ、学生側が支払ってまで参加するというケースもあります(参考:ベトナムでの人気プログラム)。島根県の隠岐では、「ワーキング・ツーリズム」というプログラムを毎夏に実施していますがこれも無償です。そして、こうしたプログラムと並行して自分自身のジェネリック・スキル(対自己基礎力、対課題基礎力、対人基礎力等)を測定し、卒業までに高めていく目標とするのです。中央大学ではジェネリック・スキルとしての「コンピテンシー」を4年間数値化し、達成目標とするプログラムが実施されています。簡単に言えば、このタイプは、学生全員に体育会と同じようなスキルを養ってもらおうというものです。

⑤日本版採用直結型

④で社会人基礎力を自覚して伸ばした学生が、いざ就職志望企業で3~6週間のインターンシップを体験できればベストです。これは、企業が具体的に見えてくる3年の冬・春休みに実施するべきです。3年の夏休みではまだ企業選定ができていませんし、4年夏休みでは遅すぎます。できれば、③で示されたジェネリック・スキルの数値(コンピテンシー)が企業で共通の指標として、リテラシーを測るSPI同様、用いられるようになるとよいですね。この時に、学生は③で培った自分の社会人基礎力向上をもって、堂々と志望企業での厳しい職場体験を乗り越えていくことができるのではないかと思います。そして、企業も、入社後もやめることなく活躍してくれる最適な人材を採用できるのではないかと思います。

しかし、④が採用と切り離したものだとしたら、誰が④の就労先として手を挙げるのでしょうか、という疑問が湧くと思います。まさにそこは戦略的に考える必要があります。例えば、前述したワーキングツーリズムを実施している隠岐・海士町は、新卒ではなく、いずれ家庭を持った時に、子育てのできる場として隠岐を選択肢に入れてもらうことを念頭に置いています。子供が生まれた時、都会での勤務に限界を感じた時、隠岐での体験と人脈を思い出してもらい、隠岐で住み、働いてもらうのです。この戦略が奏功し、海士町ではこれまで400人を超えるIターン者が移住してきました。④の職場になるということは、たとえその時に新卒の就職対象とはならなくとも、そのハイ・インパクトな体験で得た思いと愛着が、いずれ想い起こされる時が来るという戦略性を持つことで活きてくると思います。

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