人の体は、60兆個の細胞からできています。1つ1つの細胞のまんなかには核があり、その中にDNAがはいっています。がんは、このDNAが傷ついて起こる病気です。
60兆個の細胞の出発点は、たった1つの受精卵です。
この受精卵が、細胞分裂を繰り返して、臓器を形づくる。臓器が出来上がると、細胞はまわりの仲間の細胞と協調しながら、自分の役目を果たします。
必要なときだけ分裂し、必要な分だけ増えると分裂を止めて、寿命がくると死滅します。
この細胞の入れ替えは、カラダの老化をおさえるのに必要で、新しい細胞は、毎日8000億個も作られます。
●がんは暴走機関車
がん細胞は、コントロールを失った暴走機関車のようなもので、猛烈な速さで分裂、増殖を繰り返し、生まれた臓器から勝手に離れて、他の場所に転移します。
がんは正常な細胞の何倍も栄養が必要で、患者さんのカラダから、栄養を奪い取ってしまうのです。
最近の研究では、がん細胞は健康な人の体でも1日に5000個も発生しては消えていくことがわかっています。がん細胞ができるとその都度退治しているのが、免疫細胞(リンパ球)です。
免疫細胞は自分の細胞かどうか見極め、自分の細胞でないと判断すると、殺してしまいます。
しかし、年齢を重ねると、DNAのキズが積み重なって、がん細胞の発生が増える一方で、免疫細胞の機能が落ちてきます。
長生きするとがんが増えるのは、突然変異が蓄積されるのと、免疫細胞の働きが衰えるからなのです。
また、がんは、一部の例外を除き遺伝しません。
がんになる、ならないは、運の要素が大きい。
がん細胞は、ゆっくりと倍々ゲームで分裂を重ねていき、100万個まで増殖すると1ミリぐらいの大きさになります。検査によって発見されるまで育つには、通常10年から20年以上の時間が必要です。
これが、がんが高齢の方に多いもう1つの理由です。
社会や医療環境がよくなって、寿命が長くなれば、それだけがんが増える、これはやむをえない定めです。
がんになることを前提として、がんになってもあわてないように人生をとらえ、過ごす必要があるのです。
参考資料 中川恵一著
がんのひみつ
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