退職金に係る税金(平成25年から取り扱いが変更されます)
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退職金は、長年にわたる勤労に対する対価であり、
また、退職後の生活資金としての性格も強いことから、
所得税・住民税においては、税金がなるべく少なくなるように計算される仕組みになっています。
例えば、退職所得控除額(退職金の額から控除することで課税ベースを減らすもの)は、
勤続年数に比例して大きい金額になるようになっています。
勤続年数1年あたり40万円(勤続年数が20年を超える場合には、
超える年については1年あたり70万円)で計算され、
例えば勤続年数が30年であれば、退職所得控除額は1500万円です。
さらに、退職金は、上記の控除額を控除した金額の2分の1しか課税対象になりません。
仮に、退職金の額が2,000万円、勤続年数が30年であれば、
「(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円」が課税対象になります。
このケースでは、2,000万円の収入に対して、課税対象額が250万円ですから、
非常に優遇されていることがわかると思います。
税率は、所得税は超過累進税率(所得が多くなるほど高くなる税率)を用います。
最低税率が5%、最高税率が40%ですが、上記のケースであれば、
税率は10%(控除額97,500円)ですので、所得税額は152,500円です。
そして、住民税は税率が10%で、
特例として、その10%を減額する仕組みになっていますので、
税率は実質9%となり、上記のケースであれば、225,000円で、
所得税と合計すると377,500円です。.
実に、収入に対して2%弱の税負担で済んでしまいました。
しかし、この退職金に対する課税には、問題点がありました。
長期間勤務して退職金を受ける場合を考慮して設けられているこれらの取扱いですが、
公務員の天下り先などから短期間で支払いを受ける退職金や、
地方公共団体の首長などが任期満了により支払いを受ける退職金についても、
同様の課税方法がとられており、課税の公平性に欠けるとの批判がありました。
そこで、平成24年税制改正により、
(1)役員、(2)国会議員、地方公共団体の議会議員、
(3)国家公務員、地方公務員が支払いを受ける退職金で、
その計算の基礎となった勤続年数が5年以下であるものついては、
上記の取扱いのうち、「2分の1だけを課税対象とする」という取扱いが適用できないこととされました。
平成25年1月1日以降に支払われる退職金について適用されます。
また、住民税で10%を減額する取扱いですが、
これは平成23年の税制改正により、
平成25年1月1日以後支払われる退職金について、廃止されることになっています。
この取り扱いの変更は、上記の役員等の退職金に限らず、
すべての人が受ける退職金について適用されます。
退職金に係る税金は、所得税、住民税ともに、
会社からの天引きにより納付する仕組みになっているため、
納税者が自ら計算をすることがありませんが、
反対に、退職金を支払う会社側にとっては、
平成25年から所得税の源泉徴収と住民税の特別徴収の方法が大きく変更されるため、
税額の計算に注意しなければなりません。
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