田尻 健二
タジリ ケンジ生活苦を招いたと感じている内閣を支持するという不思議な心理の理由
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少し前にある新聞で、安倍政権になってから一部の富裕層を除けば「生活が苦しくなった」と感じている人が多いというアンケート結果を見ました。
しかしそれにも関わらず、当の内閣の支持率が60%を超えているという何とも不思議な現象が生じています。
あくまで私見ですが、これは次のような心理が働いているためと思われます。
1. 自分で物事を判断し選択・行動する能力の欠如
2. ある事に対するイメージが、その都度めまぐるしく変化する
多くの日本人の特徴と言われる「自分がない」「主体性がない」
1は、よく日本人に欠けている能力と言われますが、このような能力が乏しくなる最も大きな要因は「自分の考えに自信が持てない」ためと考えられます。
そして自分の考えに自信が持てないため、それを補うものとして自分以外の存在(他人・組織・理論など)に判断を委ねざるを得なくなります。
またこのような心理状態は「自分がない」「主体性がない」などとも言われています。
評価が目まぐるしく変化する「歴史なきポジション」
この1の「自分がない」状態は、ほとんど必然的に2の「ある事に対するイメージが、その都度めまぐるしく変化する」状態をも引き起こします。
なぜなら判断の拠り所を自分以外の存在に委ねてしまっているのですから、ある事に対してAさんから肯定的な話を聞いても、後日Bさんから違う話を聞くと、たちどころにその影響を受けてイメージが大きく変化してしまうためです。
AさんとBさんの話を比較して、どちらかを取り入れる、あるいは二つを総合して自分なりの新たな考えを編み出すといった行為は、ある程度は自分の考えに自信が持てて初めて可能となります。
なお、このような自分がないために他者からの影響をダイレクトに受けて評価がめまぐるしく変化する様を、精神分析家のトーマス・オグデンは「歴史なきポジション」と名付けました。
これは記憶がないという意味ではなく、出来事の記憶はしっかりあるにも関わらず、それに対する評価が過去の経験の積み重ねによってではなく、その都度その都度の情報によってのみ決定されることを表しています。
こうして生活を苦しくした安倍政権にネガティブなイメージを抱いていたにも関わらず、安倍政権を「景気回復・株高」などと称賛するマスコミなどの情報に触れることで、その同じ安倍政権を素晴らしい内閣として称賛・支持するという奇妙な心理が生じ得ることになります。
最後に今回の考察では省きましたが、自分がない方は、どのような人からでも強く影響を受けてしまう訳ではありません。
いずれ、このことについても書かせていただく予定です。
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