伝統と現代の設備・法規/漆工房 - 商業建築デザイン・設備全般 - 専門家プロファイル

堀 紳一朗
忘蹄庵一級建築士事務所 代表
東京都
一級建築士

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対象:商業建築デザイン・設備

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閲覧数順 2024年04月25日更新

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伝統と現代の設備・法規/漆工房

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設計の方法

神田川と小石川後楽園に囲まれた商店街の一角に古くから店を構えていた大河原漆工房が、市街地再開発でビルの地下に移転することになり内装設計をさせていただきました。

大河原漆工房は床框、天井縁、建具など建築の漆塗りを中心に、家具や仏具、茶道具などの分野でも活躍されています。本物の漆塗りは他の塗料では出すことのできない深みのある仕上がりとなりますが時間と予算がかかることも確かです。漆を塗る材料は下地処理をしてから1年ほど枯らせ、木地がやせたところで漆を塗りと磨き工程を幾度となく繰り返します。工房には預かって何年も寝かせている下地状態の仏具や茶道具などもありますが、実際に建築で漆塗りを使うとなると漆の下地に使う材料の手配を可能な限り早めたとしても、漆塗りの工期は数か月程度に限られてしまいますので周到な準備が不可欠です。工房では工事完了後にご自身で木部を拭き漆に仕上げています。

さて、漆工房には室(むろ)という乾燥室が必要です。漆の中に含まれるラッカーゼという酵素の働きが漆を乾燥させるのですが、この酵素が働くには高温多湿の環境が必要となります。つまり、矛盾するようですが湿度のあるところで漆は乾燥していくため、乾燥時には湿らせた室の壁面が少しでも長く含んだ水を保ちやすいように杉の荒板を横目貼りにします。ビルの内装に杉板など燃える材料を使用する場合はスプリンクラーの他に排煙設備が必要になるなど設備面の配慮が必要になってきます。