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村田 英幸
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閲覧数順 2024年04月18日更新

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会社分割において,債務の履行の見込みが必要か

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【コラム】会社分割において,債務の履行の見込みが必要か

 会社が債務超過である場合や会社分割が効力を生ずる日において債務超過となる場合,会社分割を利用することはできないのでしょうか。

 この点,会社法制定前は,債務の履行の見込みがあることが実体的な会社分割の要件であり,会社分割の時点で債務超過に陥っており,債務の履行の見込みがない場合には,会社分割の無効事由になると解するのが通説であり,そのような立場に立つ裁判例(名古屋地裁平成16・10・29判時1881号122頁)も存在していました。

 しかし,会社法の下では,平成17年改正前商法374条の第1項3号・374条の18第1項3号の文言であった「債務ノ履行ノ見込アルコト」から「履行の見込みに関する事項」に文言が変更され,事前開示事項とされました(会社法施行規則183条6号,192条7号,205条7号)。また,最低資本金が廃止されたこと等から,新設分割設立会社の設立時資本金がゼロであることも認められています。これらのことから,会社法の下では,債務超過会社も会社分割を利用することができますし,会社分割によって分割会社の債務の履行の見込みがなくなるとしても会社分割の無効事由にはならないと解釈されています(相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔『論点解説 新・会社法』674頁)。

 ただし,会社法の下でも,いずれかの会社に債務の履行の見込みがないことが会社分割の無効事由であることに変わりはないとする反対説もあります(江頭憲治郎『株式会社法第3版』829頁)。

 また,債務の履行の見込みがないことが会社分割の無効事由にならないとする立場に立つとしても,吸収分割契約等に関する書面等の不備置・不実記載は会社分割の無効事由になる(江頭憲治郎『株式会社法第3版』845頁)ことに注意が必要です。

 

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