早わかり中国特許: 第6回 (1) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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早わかり中国特許: 第6回 (1)

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

第6回 実用新型特許の保護対象と外観設計特許の保護対象(第1回)

河野特許事務所 2012年2月20日 執筆者:弁理士 河野 英仁

(月刊ザ・ローヤーズ2011年10月号掲載)

 

 

 中国における特許は発明特許だけではなく、実用新型特許と外観設計特許をも含み、模造品対策として有効に機能している。ただし、実用新型特許は発明特許とは異なり、保護を受けることができる対象が制限されている。また外観設計特許についてもあらゆるデザインが保護されるわけではない。本稿では実用新型特許及び外観設計特許にて権利化を行う際の注意点について解説する。

 

1.実用新型特許の保護対象

(1)定義規定

 専利法第2条第2項は実用新型特許に関し以下のとおり定義している。

 

実用新型とは、製品の形状、構造又はそれらの組合せについて出された実用に適した新しい技術方案をいう。

 

 この点、日本の実用新案法と同様であり[1]、あくまで保護されるのは製品の形状、構造等に限られ、方法、化学物質、ソフトウェア等は保護されない。以下詳細を説明する。

 

(2)「製品」とは

 専利法でいう「製品」とは、産業上の方法で製造され、確定した形状、構造を有し、一定の空間を占める実体的なものでなければならない。逆に、あらゆる方法及び人的に製造されない自然界に既に存する物は、実用新型特許による保護を受けることができない。

 

 ここで「方法」とは、製品の製造方法、使用方法、通信方法、処理方法、コンピュータプログラム及び製品を特定用途に使う方法等が含まれる。 例えば、歯車の製造方法、作業室の集塵方法またはデータ処理方法、自然界に存する雨花石(うかせき)[2]等は、実用新型特許により保護されない。

 

(i)請求項においては既知の方法の名称を使用することにより、製品の形状・構造を限定しても良い。しかしながら、方法の手順、技術条件等を請求項に含めてはならない。例えば、溶接、リベット締め等の既知の方法の名称により各部品の連結関係を限定したとしても、それは方法そのものに対する改善に該当しない。

(ii)請求項に、形状・構造の特徴だけでなく、方法そのものに対する改善をも含む場合、例えば、請求項の一部に製品の製造方法、使用方法またはコンピュータプログラムを限定する技術的特徴を含む場合は、保護適格性を有さない。

 

 例えば、以下の請求項は保護適格性を有さない。

 

【請求項】

 主形状を円柱とし、端部が円錐である木製の爪楊枝において、

 前記木製爪楊枝を加工成型し、

 その後、医療用殺菌剤に5~20分浸し、

 取り出してから乾かす

 ことを特徴とする木製の爪楊枝。

 

 当該請求項には方法そのものに対する改善を含んでいるため、保護適格性を有さない。

 

(3)「形状」とは

 製品の「形状」とは、製品が備えており、外部から視認可能に確定できる空間上の形状をいう。製品の形状に対する改善は、カム形状、バイト形状への改善等、製品の3次元形態に対する改善が該当する。また、部材の断面形状の改善等、製品の2次元形態に対する改善であっても良い。また「形状」は視認可能に確定される必要があり、確定されない製品、例えば気体、液体、粉末状、顆粒状の物質または材料は、その形状について実用新型特許による保護を受けることができない。

 

 実用新型特許出願の際には、「形状」の観点から以下の点に注意する。

(i)生物的に、または自然に形成される形状を製品の形状的特徴としてはならない。例えば、植木鉢で育成した植物の形状を製品の形状的特徴としてはならない。その他、自然に形成した築山(つきやま)[3]の形状も製品の形状的特徴としてはならない。

(ii)据える、または、積み重ねる方法により得られる不確定的な形状を製品の形状的特徴としてはならない。

(iii)製品において当該製品の構造的特徴が限定されているのであれば、当該製品中のある技術的特徴が気体、液体、粉末状、顆粒状の物質等の不確定的な形状を有しても良い。例えば、技術方案として温度計の形状的構造に、確定的な形状を有しないアルコールを含めることができる。

(iv)製品形状は、特定の状態において確定できる空間上の形状であっても良い。例えば、新規な形状を有する氷のコップ、落下傘等である。

 また以下に述べる鋼鉄テープ包装ケースも保護適格性を有する。

 

【請求項】

 鋼鉄テープの運輸及び保存に用いられる包装ケースにおいて、

 内鋼輪と、外鋼輪と、バンドテープと、外ガイドボードと、放水複合紙と

 を備える包装ケース。

 

 各部分が、技術方案により確定された相互関係に基づいて、鋼鉄テープを包装した場合に、確定的な空間上の形状を形成しているのであれば、このような空間上の形状は任意性がないため、実用新型特許により保護される。

 

(4)「製品の構造」とは

 「製品の構造」とは、製品の各構成部分の配置、組合せ及び相互関係をいう。製品の構造は機械的な構造または回路的な構造のいずれであっても良い。

 機械的な構造とは、製品を構成する部品の相対的な位置関係、連結関係と必要な機械上の配合関係等をいう。一方、回路的な構造とは、製品を構成する部品間の確定的な連結関係をいう。

 製品の浸炭層、酸化層等の複合層は製品の構造である。ただし、物質の分子構造、成分、金属組成構造等は保護適格性を有さない。例えば、溶接棒のコーティング成分のみを変えた溶接棒は実用新型特許の保護客体に該当しない。

 

 製品の構造に関し以下の点に注意すべきである

(i)請求項には既知の材料名称を含めて良い。すなわち、先行技術における既知の材料を、形状・構造を備える製品に応用することができる。例えば、複合木製床板、プラスチックコップ、記憶合金を用いて製造した心臓導管カバー等は材料そのものに対する改善に属さないため、保護適格性を有する。

(ii)ただし、請求項に形状・構造的な特徴だけではなく、材料そのものに対する改善をも含む場合、保護適格性を有さない。

 例えば、「A成分20%と、B成分40%と、C成分40%とからなることを特徴とする菱形の錠剤」の場合、当該請求項には材料そのものに対する改善が含まれていることから、保護適格性を有さない。

 

(5)「技術方案」とは

 「方案」に直接対応する日本語が存在しないため、日本の実務者にとっては専利法上の「発明」が何であるか理解しにくい。国家知識産権局が公表している専利法英語訳によれば「技術方案」は「Technical Solution」である。審査指南には技術方案について以下の定義がなされている。

 

「技術方案とは、解決しようとする技術的問題に対して採用する自然法則を利用した技術的手段の集合である。技術的手段は通常技術的特徴によって表される。」

 

 従って、「技術的課題」を解決することによって、自然法則に基く「技術的効果」を獲得するために、「技術的手段」を用いていない方案は、専利法第2条第3項に規定された実用新型特許の保護客体に該当しない。

 

 製品の形状及びその表面の模様、色彩またはこれらを結合させた方案は、技術的課題を解決するものでない場合、実用新型特許による保護を受けることができない。また製品表面の文字、符号、図表またはこれらを結合させた方案も同様に保護を受けることができない。

 例えば、ボタンの表面文字、符号のみを変えたコンピュータまたは携帯電話のキーボード;

十二支の動物の形状で飾った缶切;

表面の模様デザインのみが改変されたことを特徴とする将棋類、麻雀牌類、古代の詩が記載されたトランプ等である。

 

(6)まとめ 出願時の注意点

 日本の特許出願をベースに中国へ出願または中国のみへ出願する場合、上述した基準を参考にしつつ発明特許出願をするか、或いは、実用新型特許出願をするかを判断する。

 

 中国においては実用新型特許に対する実体審査は行われないものの、方式審査が行われる。方式審査において、明らかに専利法第2条第3項(保護適格性)の規定に適合しないと判断された場合、補正命令がなされ、拒絶理由が解消しない場合出願が却下される[4]。

 

 保護客体に該当しないと判断された場合、補正により当該拒絶理由を覆すことは困難であろう。また日本国特許法及び実用新案法と異なり(日本国特許法第46条、日本国実用新案法第10条)、中国では実用新型特許出願から発明特許出願への出願変更が認められない。従って、保護客体に当たるか否かの判断が難しい場合、専門の弁理士に判断を仰ぐか、或いは、安全策として発明特許出願を選択することが賢明である。

 



[1] 日本国実用新案法第3条柱書 産業上利用することができる考案であつて物品の形状、構造又は組合せに係るものをした者は、次に掲げる考案を除き、その考案について実用新案登録を受けることができる。

[2] 雨花石:中国南京の雨花台一帯で産出されるつるつるした卵形の石。色や模様が美しく観賞用にもなる。中日辞典第2版 小学館2008年

[3] 中国では太湖石(たいこせき:江蘇省太湖に産するくぼみの多い奇岩で、造園に用いられる。)中日辞典第2版 小学館2008年

[4]専利法第40条 実用新型及び外観設計の特許出願が初歩的審査を経て拒絶理由を発見しなかった場合は、国務院特許行政部門は実用新型特許権又は外観設計特許権を付与する決定をし、特許証書を発行し、同時に登録と公告を行う。実用新型特許権及び外観設計特許権は公告の日より効力を生じる。

 

(第2回へ続く)

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